子どもウォッチング術4心を育てる教師の言葉かけ 低学年

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心の教育は何が必要か、日常の生活指導の中での言葉かけ・学級作りの中での言葉かけ・心を育てる授業中の言葉かけ、心を育てる言葉かけ満載。


復刊時予価: 2,387円(税込)

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電子書籍版: なし

ISBN:
4-18-029610-1
ジャンル:
授業全般
刊行:
対象:
小学校
仕様:
A5判 136頁
状態:
絶版
出荷:
復刊次第

もくじ

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まえがき
T 言葉をかけることで子どもの心を育てよう
1 心の教育の必要性
2 掃除の班長を立派にやれるようになったA君
3 教師の意識的な言葉かけで心は育つ
U 心の教育には何が必要か
1 どんな心を育てるのか
2 約束を守ること・あとしまつをすること
3 今一番緊急を要すること
4 どんな言葉をかけるとよいか
V 日常の生活指導の中での言葉かけ
1 給食指導の中での言葉かけ
・ 自分のおなかに合わせて食べようね
・ 一口でも食べようね(偏食指導)
・ やってしまったことはしかたない。そのあとどうすればいいの?
・ 一つ拾えば一つきれいになる
2 掃除で心を育てる言葉かけ
・ 二人の心と力がピッタンコ
・ あとしまつまでをしっかりと
・ 一つきれいにできたらもう一つ
・ 時には毅然とした態度で
3 トラブルを起こす子どもへの言葉かけ
・ 子どもの行動を叱るだけの言葉かけの失敗
・ 我慢したんだな。偉いぞ
・ 先生は悲しいな、先生はうれしいな(気持ちを伝える言葉かけ)
4 あとしまつの指導の中での言葉かけ
・ 教科書が喜んでいるよ
・ 出す前よりきれいになったね
・ 靴がちゃんと気をつけをしていたよ
・ 次の人がとても使いやすいよ
・ 先生はうれしい!
・ とっておきの方法 〜ぼくはF君のえんぴつです…〜
W 学級作りの中での言葉かけ
1 係活動での言葉かけ
・ 教師の姿勢 〜五つのM〜
・ 「まかせる」ときの言葉かけ
・ 「まつ」「みまもる」「みつめる」ときの言葉かけ
・ 「みつける」ときの言葉かけ
・ 子どもどうしの言葉かけ「一言メッセージ」
2 学級活動の中での言葉かけ
〜互いのよさ・持ち味を見つめる心を育てる〜
・ 「笑顔のもと」
・ 「いいところみつけ」
・ 集約して教室掲示
・ 封筒に入れて渡す
・ 学期に一回は行う
・ 「笑顔のもと」の言葉=教師の言葉かけ
3 子どもとのふれあいを通しての言葉かけ
・ 右手にチョーク、左手に…
・ 友だちづきあい・その一 「誰と誰が上手かな?」
・ 友だちづきあい・その二 「できるようになるって、すごい」
・ 近ごろ新聞記者 エヌ氏 〜学級通信で言葉かけ〜
・ 親と教師の交換ノート 「ツユムシってどうやって鳴くの?」
・ 「また、来てね」
X 心を育てる授業中の言葉かけ
1 国語科授業の中での言葉かけ
・ 迷子にならないようについてこれるかな?
・ この前より大きな声で読めたね 〜前の自分との比較で〜
・ できることより変わること 〜読み取りの授業の中で〜
2 生活科授業の中での言葉かけ
・ サインをもらったら、五点あげる!
・ あなたならどうしたらいいと思う?
・ 君は「生き物を大切にするプロ」だね!
・ 手をかけないで言葉をかける
3 算数科授業の中での言葉かけ
・ 0を閉じると勉強ができるようになるよ
・ たくさんまちがう人は頭がよくなるよ
・ まちがっているものは、まちがっているとハッキリ言おう
4 体育科授業の中での言葉かけ
・ 体育科授業の中で育てる心とは何か
・ 「がんばれ」ではだめだ
・ 疲れたのかい? 少し、休みなさい
・ どのくらい上手になったか、見せてもらおうか
・ すごいね。どうやったらそんなことできるんだい
・ うそも方便
5 道徳授業の中での言葉かけ
・ 相手の立場に立った発言を見逃さない
・ 対立、同調の発言を見逃さない
・ 思いを長く長く書かせる
・ まとめ
6 体験的な道徳授業の中での言葉かけ
・ 目の不自由なかたへのお手伝いの方法
・ たくさん声をかけてくれたんですね
・ ようすけ君に教えてもらいましょう
・ 子どもたちの感想
Y この言葉の躾で心を育てよう
・ 「はい」(返事)
・ 「どうぞ」「ありがとう」
・ 「ごめんなさい」
Z 教師の言葉かけ
――子どもに言葉が届くとき――(まとめに代えて)
・ 授業中よい点を見つけ、そこをほめる
・ けがなどをしたとき、優しい言葉をかける
・ 病気で長く休んだときの手紙
・ 凡事徹底
あとがき

まえがき

 昨年度、初めて一年生を受け持った。一年生はかわいらしいが、実に教師泣かせのおもしろい存在でもある。大人に話すような調子で話そうものなら、ものの三分も話を聞いてくれないし、第一、優しく分かりやすく出したつもりの指示が通じない。

 「一年生は宇宙人みたいなものだよ」(つまり日本語が通じない)ということは、一年担任を経験した教師から耳にたこができるくらい聞いていたつもりでも、実際やってみると予想以上であった。

 しかし、一年生を受け持って最も身にしみたことは、教師の話を聞かない、指示したことをやらないからと言って怒ったり、叱ってばかりでは、子どもの心はつかめない。かえって離れていってしまう。そういう傾向が他学年に比べて顕著であるということである。

 一時期、あまりに話を聞かないので大声で怒る日が続いてしまったことがある。一度我慢できなくて怒ってしまうと、歯止めが効かなくなって、次からは、普段なら我慢できることでもつい怒ってしまうことになりやすい。

 すると、クラスの雰囲気がおかしくなった。子どもたちは教卓の周りに寄って来なくなったし、職員室にも迎えに来なくなった。

 なぜそんなことまで話したがるのだろうと思うくらい、大人から見たら些細なことを毎日飽きもせずに話しに来ていたのに、あまりそういう他愛もない話をしなくなった。

 子どもから明るさ、かわいらしさが消えていった。親からも学校に行くのがあまり楽しそうでないということを聞かされて、多少ショックを受けた。

 ある先輩教師から、一年生を受け持つこつを聞いたとき、


 いつも明るくにこにこ、優しい顔でいること


と言われたが、その意味がしみじみ分かった。(ような気がした。しかし、すぐ忘れる)

 子どもは誰でもそうだが特に低学年の子は、明るくて、いつもにこにこしていて優しい先生が大好きなのである。そうでないと子どもが寄ってこない。寄ってきて話をしないことには子どもと信頼関係を結べない。

 低学年は子どもの方から、どんどん教師に話しかけてくる時期であり、それを上手に生かして信頼関係を作っていくことが何よりも大事なのである。

 それ以降、話を聞かない、指示したことができないのは、私の力量が足りないからだと思って、極力怒らないで別な方法で事態を収拾するよう努力した。それでもだめだったらそうなったのは自分のせいで仕方ない、事態を甘んじて受け入れることにした。うるさくなったり、指示したことをやっていない子を見るのは情けなかったが、怒らないでも何とかなることも多いことを発見した。

 一年生や低学年の子どもと信頼関係を結んでいく上で、子どもの話を受け止める、子どもに言葉をかけることがいかに大事かはいくら強調してもしすぎることはない。

 特に低学年は、授業中でも、休み時間でも、給食や掃除の時でも自分に関わることならいくら話しても話し足りないような特性がある。そういう特性をうまく生かすことである。

 ただし、一年生は自分の思っていることをまだ十分伝えられないので、何を言いたいのかは教師が補足して、理解した上での話である。

 子どもが変化してきている。私たちが子どもだったころには知らず知らずのうちに身につけていたことが今の子どもには身についていない。知識だけはあるが、現実から遊離したバーチャルな知識で、血の通ったものとなっていない。

 その上、生活力が貧しい。他人や社会のルールに対して、基本的な態度が出来ていない。心の教育の必要性が叫ばれるゆえんである。


 本書ではそういう今の子どもの心を育てていくにはどんな言葉を、どんな時にかけたらいいのかを具体的場面を元に記述した。(本文中の子どもの名前は全て仮名である)

 全てサークルメンバーの実践が下敷きになっていることばかりであり、かけた言葉もほぼ実際に話した通りに書いてある。これらの言葉を一度や二度子どもにかけたからといって劇的に子どもが変わるということはない。繰り返し繰り返しかけていくことが前提である。読者の教室に少しでもお役に立てれば幸いである。


   道南フリートーク代表 /松本 明

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