- まえがき
- 1 総合的学習を支える学び方の基礎基本
- 一 18の「学習技能」を体得させる
- 1 総合的学習に必須の学習技能
- 2 必須の学習技能
- 1 「はてな?」発見の技能
- 2 「調べ方」技能
- 3 おたずね技能
- 4 実験・観察・見学技能
- 5 情報収集技能
- 6 考える技能
- 二 総合的学習の基礎基本は「学習技能」
- 1 学習指導要領に見る「ねらい」
- 2 教科は基礎、総合はその応用発展
- 3 身につけたい学習技能
- 三 総合的学習の授業は「ネタ」と「学習技能」で決まる
- 1 総合的学習はネタで決まる
- 2 現代社会の課題からネタを考える
- 3 地域の特色からネタを開発する
- 2 「学習技能」の鍛え方
- 一 地図帳の使い方技能を鍛える
- 1 地図のどこに目をつけたらよいか
- 1 「学習技能」が身についていない
- 2 どこに目をつけて調べるか
- 2 「文字の色」や「地図記号」に目をつける
- 1 地図の「文字の色」に目をつける
- 2 「地図記号」に目をつける
- 3 県名と県庁所在地に目をつける
- 1 県名と県庁所在地
- 2 県庁所在地はどうして決めたか
- 3 地図帳で生活が見える
- 二 「調べる技能」を鍛える
- 1 資料活用技能を鍛える
- 1 資料をすばやくさがす技能
- 2 どんなことが書いてあるか読み取る
- 3 一つの資料だけで満足しないように
- 2 調べることは考えることだ
- 1 調べていると面白くなる
- 2 子どもの「はてな?」を大切に
- 3 子どもの疑問に耳を傾ける
- 三 学習技能を鍛えることが教育である
- 1 指示待ち人間を育てる授業?
- 2 「教育」とは何か考えよう!
- 3 国語辞典をもっと使おう
- 四 「考える技能」を鍛える 1
- 1 「思い出す」技能――書く
- 2 考えるとは「関係づけること」
- 3 『授業研究21』の平成十年七月号がすごい
- 4 究極の「考える力」は?
- 五 「考える技能」を鍛える 2
- 1 子どもは「考える」ことが好き
- 2 「君はどう思うのか」と問う
- 六 ものの見方を段階的に鍛える
- 1 「見る」ということ
- 2 見方の段階的指導をする
- 1 「ながめている」段階
- 2 「見る」段階
- 3 「よく見る」段階
- 4 「見つづける」段階
- 5 「見ぬく」段階
- 七 「指導する」とは、「見えないものを、見えるようにすること」
- 1 総合的学習と学習技能
- 2 見えないものを見えるようにする
- 3 「指導する」ということ
- 八 「問い方技能」を鍛える
- 1 「問い方」を学ぶこと
- 2 「問い方」の練習をしよう
- 九 学習の基礎基本は「学ぶ喜び」を体得すること
- 1 歯(学習技能)のない子ども
- 2 基礎的なことは身につきにくい
- 3 ある教師の開眼
- 4 調べる面白さの体得を
- 十 21世紀の学力は「学習技能」である
- 1 新しい学習指導要領と「調べる」
- 2 「調べて、考える」ことも必要
- 3 21世紀の学力・学習技能
- 3 「学習技能」は学習の道具
- 一 「はてな?発見技能」と「道具活用技能」
- 1 学習の「道具」としての学習技能
- 2 「はてな?発見技能」の重要性
- 二 「調べること」は「考えを創り出すこと」
- 1 「調べる」とはどんなことか
- 2 参考書のある場所の指導
- 3 「調べること」は「考えること」だ
- 三 発言技能の伸ばし方
- 1 自然に形をつくっていく
- 2 指導すべきところは指導する
- 四 本の読み方、選び方
- 1 マンガも本である
- 2 三種類の本を読む
- 3 本の選び方
- 五 考える力のつけ方
- 1 「考え」させて「思う」ようにする
- 2 考える力をつける手順
- 4 追究の鬼を育てる学習技能
- 一 「聞く・話す」の基礎技能を鍛える
- 二 「聞く・話す」技能もきちんと指導すれば伸びる
- 1 話す技能を鍛える
- 1 自己主張はするが他人の話を聞かない子ども
- 2 岐阜市立長良西小で学んだこと
- 3 発言技能を鍛える
- 4 反応をさせる―体験的聞き方
- 5 要点をまとめて話す技能
- 2 聞く技能を鍛える
- 1 納得したときしないときの反応のしかた
- 2 教師が態度で示す
- 3 「よく聞く」技能を鍛える
- 三 「書く技能」を鍛える指導技術
- 四 たくさん書かせて、正しく評価する
- 1 書く内容をつかませる
- 2 面白い文をたくさん書かせる
- 3 「評価のしかた」で伸びる
- 4 「書く技能」の鍛え方
- 1 わかりやすい文章を目指す
- 2 素人に読んでもらう
- 3 たくさん「読む」
- 4 他人にたずねる
- 5 総合的学習の教材開発と授業
- 一 総合的学習の教材開発のしかたは?
- 1 総合的学習は「教材開発」が必要
- 2 教材開発の具体例
- 二 「守口大根」でこんな面白い授業ができる
- 1 「授業って面白い!」と思わせる工夫
- 1 「授業入門」ということ
- 2 まず子ども理解・把握
- 3 「授業は面白い」と思わせること
- 2 どうしてながーい大根ができるか
- 1 「はてな?」を引き出す
- 2 予想をたてる
- 3 棒は何のためにあるの?
- 3 どんな土地に作っているか
- 4 取り入れのしかた
- 5 守口大根の栽培のしかた
- 6 つけものの効用?
まえがき
総合的学習を進めるには、「必須の学習技能」があることを忘れてはならない。これなくして総合的学習は成立しないのである。
スキー学校に入って初めてスキーを教わるとき、スキーの着脱から歩き方、ボーゲンでゆっくり緩斜面を曲がりながら滑ることを教えてくれる。これを体が覚えるまで繰り返す。しばらくすると緩斜面では滑れるようになる。すると少し急な斜面へ行ってみたくなるから不思議である。少し急な斜面で滑れるようになると、より急な斜面やコブのあるようなところへ行って滑ってみたくなる。
スキー学校で基礎基本を教わる。これが「教科の学習」である。この基礎をもとに、より急な斜面やコブのある斜面などを自ら工夫しながら滑ってみる――これが「総合的学習」にあたる。このとき、何が身についたのか。スキーを滑るという技能である。初歩の技能を使って次の新しい技能を自ら創り出し、急斜面を滑れるようになる。シュテムターンとか、パラレルといったことばも知り、技能と共に知識も身につく。
この「技能」を次のように定義している。「時代の変化に対応して、新しい知識や学習技能を創造し続けていく力」と。基礎基本をしっかり身につければ、あとは本人の力で応用発展させていくことが多い。
わたしどもの新聞を読む力にしても、学校で教わったのは漢字や文章の読み方の基礎的なもので、実際の新聞の読み方は基礎基本をもとにして自分なりに創り出した力である。
各教科で の学習技能をしっかり体得させれば、総合的学習へ自然に発展していく。総合で応用発展させて確かな技能にしていく。基礎基本をおろそかにしては、総合おろか、学校教育そのものがダメになる。学力崩壊がまちがいなくおこる。学力崩壊がおこらないようにするには、どんな学習技能を、どのようにしてつけていけばよいのか。本書はこのことについて述べたものである。
第一に、毎日の授業のあり方を、「学習技能を鍛える力だ」と考えることである。 の基礎基本となる学習技能を鍛えるのが教育なのだと考えることである。辞典や事典・地図帳・資料集などを積極的に使うようにし、子どもが自ら調べ、考えて結論を出すように支援することが授業なのだと考えることである。
第二に、「考える技能」を鍛えることである。「覚える」こと中心から「考える」ことを中心にすることだ。授業は「考え方を鍛える時間」なのだと考えて、指導にあたることである。
第三に、「問い方技能」を鍛えることである。学問というのは、「問い方」を学ぶことである。この意味では、この技能が一番大切である。しかし、最もむずかしい技能でもある。「はてな?」なくして授業は成立しないのだが、なかなか「はてな?」をもてない。これをどうやってもたせるかが問題である。頭を悩ますところである。
第四に、「学ぶ喜びを体得させる」ことである。今、子どもたちは「学ぶ喜び」を失いつつある。「学ぶことは、人生一番最高の贅沢な遊びである」と思うようにすることである。楽しい授業をしなければ、この目的を達成することはできない。
本書は、明治図書編集部の江部満編集長の力強いおすすめによってまとめることができた。厚くお礼を申し上げたい。ありがとうございました。
平成12年1月末日 /有田 和正
-
- 明治図書