- はじめに
- 第1章 「総合的な学習」の単元開発
- 1 「総合的な学習」をどう考えるか
- 2 「総合的な学習」で目指すもの
- (1) 自己学習力・生涯学習能力の育成
- (2) 自分らしさ(アイデンティティ)の確立
- 3 単元開発の視点
- (1) かかわる対象
- (2) 活動類型
- (3) 活動精選の視点
- (4) 教師の発想の転換
- 第2章 「総合的な学習」のカリキュラムづくりと単元開発
- 1 スケルトン型のカリキュラム
- 2 「総合的な学習」のカリキュラム編成におけるスケルトン…
- 3 学習経験の総体としてのカリキュラム
- 第3章 「総合的な学習」の単元開発の具体
- 1 福祉に目を開く単元づくり
- 「人にやさしい町」
- 1 単元の開発
- 2 単元の展開
- (1) 活動の契機
- (2) 漠然とした探検から焦点を定めた探検へ
- (3) 発表会へ向けて
- (4) 発表会を開く
- 3 活動の成果
- ○コラム「福祉に目を開く」
- 2 国際理解学習をメインにした単元づくり
- 「南北問題って何だろう」
- 1 単元の開発
- 2 単元の展開
- (1) 「南北問題」入門ワークショップへ参加する
- (2) インドネシア大使館を訪ねる
- (3) ヒダヤット氏との交流
- (4) インドネシア料理を食べる
- 3 活動の成果
- ○コラム「外国の人と触れ合う」
- 3 伝統文化に触れる単元づくり
- 「からくり人形を作る」
- 1 単元の開発
- 2 単元の展開
- (1) からくり人形との出会い
- (2) からくり人形ができた
- (3) からくり人形をみんなに見てもらおう
- 3 活動の成果
- ○コラム「伝統文化に触れる」
- 4 ものづくりをメインにした単元づくり
- 「弥生の土笛を作る」
- 1 単元の開発
- 2 単元の展開
- (1) 粘土を卵形にする
- (2) 卵の笛を作る
- (3) 卵形の粘土の中をくり抜く
- (4) 穴を開けて試奏する
- (5) 土笛を焼く
- 3 活動の成果
- ○コラム「ものづくり」
- 5 情報学習をメインにした単元づくり
- 「アニメーション作りに挑戦」
- 1 単元の開発
- 2 単元の展開
- (1) アニメーション作りへの関心を高める
- (2) ストーリーと登場人物を決める
- (3) カメラで撮影し,音を入れる
- (4) アニメーションを作って
- 3 活動の成果
- ○コラム「情報とかかわる」
- 6 集会活動とリンクする単元づくり
- 「ジャンボ遊びに参加しよう」
- 1 単元の開発
- 2 単元の展開
- (1) 1年生と「ジャンボ遊び」
- (2) 「THE えんにち」を開こう(6年生)
- 3 活動の成果
- ○コラム「総合的な学習」と特別活動
- 7 行事とリンクする単元づくり
- 「ジャンボ遠足にでかけよう」
- 1 単元の開発
- 2 単元の展開
- (1) 「ジャンボ遠足」でどこへ行くか
- (2) 下見にでかける
- (3) 計画を立てて顔合わせをする
- (4) ジャンボ遠足を終えて
- 3 活動の成果
- ○コラム「遠足のもち方」
- 8 環境学習をメインにした単元づくり
- 「小笠原空港をつくる」
- 1 単元の開発
- (1) 小笠原空港建設問題
- (2) ロールプレイ
- 2 単元の展開
- (1) 単元の流れ
- (2) ロールプレイを行う
- 3 活動の成果
- ○コラム「環境とかかわる」
- 第4章 「総合的な学習」で育つ力
- 1 卒業した子どもたちへの調査
- 2 記憶に残っている活動
- 3 子どもにとっての総合活動
- 4 総合活動で育つ力
- (1) 主体的・能動的な学習態度や能力の育成
- (2) 対象を実感・納得・本音でとらえる
- (3) 自己評価・相互評価を促す
はじめに
筑波大学附属小学校に16年前に赴任した。
赴任したとき出会ったのが総合活動だった。
筑波大学附属小学校では,昭和46年から総合活動の実践を積み重ねていた。昭和46年といえば,現代化版の学習指導要領が完全実施される年であった。その時代に総合活動が生まれたのは,知育偏重主義ともいえるような学校教育の流れに対する危機感からであった。総合活動は,人間性の回復と人間尊重の確立を目指す教育の中核をなすものとして誕生したのである。
総合活動はまさに,「総合的な学習」の先駆的な取り組みであったといえる。
さて,赴任して担任したのは3年生だった。その当時の総合活動の週当たりの授業時数は,1〜3年が3時間,4〜5年が4時間であった。
総合活動には教科書はない。固定された活動計画もない。
拠り所にするのは,総合活動の目標「児童の自然な生活を基盤として,自主的・主体的な体験的学習を組織することにより,調和のとれた人間的資質の向上を図る」と,「かかわる対象」「活動類型」「活動精選の視点」のみであった。それさえ押さえれば,あとは何をやってもいいのだということなのであった。
総合活動の時間は,始めは私にとっては苦痛な時間だった。これまでの私は,与えられた枠の中で工夫しているのにすぎなかったということを痛感させられたのだった。学習指導要領があり,教科書があり,地域や学校の指導計画があり……。そうした枠を取り払って,子どもたちとともに活動をつくり出していくという経験がなかったのである。
先行研究に学びつつ,試行錯誤を繰り返しながら総合活動に取り組んでいった。手応えを感じたのは,筑波大学附属小学校に赴任して1年が終わろうとする頃に行った「火おこしに挑戦」であった。
総合活動は,子どもの興味・関心に寄り添っていくことが第1であるということを学んだ実践でもあった。
次第に,総合活動が楽しい時間になっていった。子どもとともに価値ある活動をつくり出していくことの喜びと楽しさを感じ始めたのである。
そして,私にとって総合活動は貴重な時間となっていった。
本書に収録してあるのは,私が16年間にわたって子どもたちとつくり出してきた総合活動の実践の一部である。
赴任して最初に出会った子どもたちを4年間担任した。悪戦苦闘の4年間であった。それだけにまた,印象深いものがある。最後の章は,その子どもたちが総合活動をどう思っていたのか,何を得ていたのかを調査から探ったものである。
クラス会があると,話題は決まって総合活動のことになる。
総合活動で学んだことは子どもの内面世界に深く根を下ろし,時と場に応じてそれは表れ,子どもを励まし続けるものとなっていることを感じる。
「総合的な学習」が誕生することになった。
「総合的な学習」は,各学校の創意工夫に委ねられた自由に内容を構想できる貴重な時間である。
子どもにとっても教師にとっても,新たな学びの世界を切り開く時間となってほしいと願う。
本書をまとめる機会をつくっていただき,筆の遅い私を励ましてくださった明治図書の樋口雅子氏には心よりお礼と感謝を申し上げたい。
平成11年9月 /田中 力
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- 明治図書