感性・心の教育5感性教育による学校変革

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Try again―お茶の水聖進学院の新たな教育への挑戦―/西海国立公園の島で、小中併設校の実践/全寮生活をとおしての全人教育、他。


復刊時予価: 2,442円(税込)

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電子書籍版: なし

ISBN:
4-18-028513-4
ジャンル:
学校経営
刊行:
対象:
小・中
仕様:
A5判 144頁
状態:
絶版
出荷:
復刊次第

もくじ

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まえがき
T Try again
――お茶の水聖進学院の新たな教育への挑戦―― /鈴木 茂
1.高校中退者の新たな挑戦
2.高校卒業資格取得をサポートする聖進学院のシステム
3.校則はただ一つ「他人に迷惑をかけない」〜落ち着いた授業風景〜
4.生徒が打ちこめるものを探す〜若者は挑戦するとき、自己の可能性が生まれる〜
5.学院の教育を支える教師集団〜学院の財産は教師〜
6.感性が磨かれていく生徒たち
7.今後の課題
U 西海国立公園の島で 小中併設校の実践
――発見・感動・挑戦 喜びと潤いのある学校をめざして―― /山川 洋一
1.はじめに〜小さな島の、小中併設校から〜
2.学校変革の視点〜体験からくる喜びの実感〜
3.学校を自己実現の場として
4.喜びと潤いのある学校をめざして
5.感性を育む授業づくりの構想〜インプット教育からアウトプット教育へ〜
6.心を育む感性教育の創造〜平島と本校の良き伝統を再評価する〜
7.おわりに〜インターネット時代の感性教育〜
V 幼・小・中一貫教育で「かかわりを深める」
――学年・学校・教科の枠を越えて学校教育に新しい風を―― /半 直哉
1.大切な何かが欠けた子どもたち
2.「感性」を構成する四つの要素
3.「かかわりを深める」教育の取り組み〜幼・小・中一貫教育の視点〜
4.人と人とのかかわりを深める〜社会性の獲得〜
5.社会性を育む三つの領域
6.具体的な取り組み〜人と人とのかかわりを深めていった実践例〜
7.「かかわりを深める」教育の取り組みで見えてきたもの
8.枠にとらわれない学習で、学校教育に新しい風を
心の教育と学校改革
T 子どもたちの心の成長をサポートしていこう
――通信制高校サポート校の果たす役割―― /稲田 和子
1.「どこに行ったら、クジラいるのかな」
2.教育現場の現状〜通信制高校サポート校の果たす役割〜
3.生徒の背景にある思いに目を向けて
4.「心」を磨き自己発見に努める〜私自身の「自分探し」の経験から〜
5.「教育する」のではなく「サポートしていく」
U 「心の教育」と道徳教育 /大森 弘
1.はじめに〜考察の視点〜
2.「心」とは何か〜「心」についての四つの定義〜
3.中教審答申から考察する「心の教育」の構造
4.「心の教育」としてのカウンセリング
5.「心の教育」としての道徳教育〜目標と内容について〜
6.「心の教育」としての道徳教育〜方法について〜
7.おわりに〜大人への要請〜
V 全寮生活をとおしての全人教育
――全人教育をめざす吉備高原学園高等学校の取り組み―― /三澤 和昭
1.はじめに―人間教育こそ真の教育―
2.吉備高原学園高等学校の概要
3.快適な生活ができる充実した施設・設備
4.学校のめざすもの―ばらも野菊も―
5.わかる授業と、体験を通して学ぶ楽しい授業
6.生徒と教師が暮らしを共にする全寮生活
7.卒業生の進路
8.実践から学んだ「教育の心」
9.おわりに―これからの時代に求められる「心の教育の基本」―
教師が変われば子どもは変わる

まえがき

 四月二十七日付の産経新聞の一面トップの三段記事で「学級崩壊」に悩む教師を支える会(代表は筆者)の結成準備をしていることが大々的に報じられ、五月十日のNHKの朝のニュース番組「おはようニッポン」でも、筆者のインタビューが大きく報道されたため、全国各地から問い合わせや悩み相談が殺到し、海外の十五カ国からもインターネットを通して問い合わせがきている。

 「学級崩壊」問題が内外からこれほど関心を集めているとは、予想をはるかに上回るものであった。とりわけ、教員歴何十年というベテラン教師から「今まで積み上げてきた教育技術が通用しなくなって茫然自失している。手の施しようがなく完全に自信を失ってしまった」という悩み相談を受け、教育現場においては「学級崩壊」が、いわば恐怖として存在するということを見せつけられる思いがした。「学級崩壊」に直面する教師の悩みは深刻である。しかし、弱音を吐く相手もなく、本音で相談できる場がないために、教師が一人で問題を抱え込んでしまうケースが多い。子どもが指導に従わず授業が成り立たないのは教師の力量不足に原因があると自分一人を責めて孤立してしまっている。

 臨床教育研究所が実施した保母のアンケート調査によって、この数年間で学齢前の幼児が急激に変化していることがわかった。小学校一年の児童が先生の指示に従わず「学級崩壊」が起きるのは当然だと思うと答えた保母は五四%にのぼった。幼児や小学生にルール感覚や秩序感覚、規範意識が欠落しているのは父性の崩壊が大きな原因である。特に二十代、三十代の親の世代が子どもよりも自分の仕事や生き甲斐優先の意識に変化したことが「学級崩壊」の根因といえよう。同調査でもここ三〜五年の親の変化として、「子どもに過保護になった」「受容とわがままの区別がつかない」「基本的生活習慣を身につけさせることへの配慮が弱い」「授乳や食生活に無頓着」「親のモラルが低下したと思う」「すぐに他の子と比べる」などが高い数値を示している。

 しかし、「原因探し」をしていても始まらないので、具体的対応策について考えたい。小学校の「学級崩壊」が低学年の児童が主体的に体験活動をする「生活科」では起きていない点に私たちは注目する必要がある。兵庫県が昨年十一月に中学二年生に一斉に実施した地域での五日間の体験活動を選択させる「トライやる・ウィーク」の試みに、不登校傾向にある生徒の約半数が全日参加し、その内の約七割が再登校の兆しを見せるなど、多大な成果が上がっている点に学ぶ必要があろう。しかし、時間の経過とともに登校率が低下してきており、学校運営や学級経営、授業のあり方そのものを変革しないかぎり、登校率の低下に歯止めをかけることはできないであろう。

 学校を変革するためには、校長がリーダーシップを発揮することと教師が一人で悩まないで結束して連携を深めること、校長・教頭と教職員が一致団結することが必要不可欠といえる。茨城大学の笠井喜世講師が川喜田二郎のKJ法(野外科学の分野でデータの分類、新しい仮説の設定に用いられる)を学校現場にあうように種々のアレンジを加えて作成したスクール・サブジェクト・サポート・システム(学校における諸問題を教師の連携と創造性で解決するシステム)を一年間実行した山形県鶴岡四中はみごとに「学級崩壊」から立ち直り、不登校も激減した。このことは学校、学級の荒れと不登校は相関関係にあることを示している。また、岩手大学の河村教授の「子どもたちとの再契約」理論やオーストラリアのフリンダース大学のフィリップ・T・スリー教授が考案したいじめ防止プログラム「ピース・パック」を国立教育研究所生徒指導研究室がわが国に合うように改良した「ピース・メソッド」が「学級崩壊」やいじめ防止に大きな成果を上げていることも特筆しておきたい。


   /高橋 史朗

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