- 刊行のことば
- まえがき
- T 現代社会の特質
- @ 日本社会の国際化
- 1 モノ・カネの国際化
- 2 科学技術・文化・情報の国際化
- 3 日本人の海外進出
- 4 日本社会の多民族化
- A 世界のグローバル化
- 5 ボーダレス社会
- 6 宇宙船地球号
- 7 相互依存の深化
- 8 地球的課題
- U 国際理解教育
- 1 ユネスコと国際理解教育
- 2 ユネスコ国際教育会議
- 3 「学習:秘められた宝」(ユネスコ報告書)
- 4 ユネスコ協同学校
- 5 未来志向の国際理解教育
- 6 カルコン日米共同研究事業
- 7 ユネスコ国際教育勧告
- 8 国際理解教育の手引き
- 9 臨時教育審議会答申
- 10 中央教育審議会答申
- 11 国際社会に生きる日本人
- 12 地球市民的資質
- 13 国際理解教育と総合的な学習
- 14 国際理解教育カリキュラム
- 15 アジアに目を向けた国際理解学習
- 16 地域に目を向けた国際理解学習
- V 異文化コミュニケーション教育
- 1 異文化コミュニケーション教育
- 2 コミュニケーションのしくみ
- 3 ノンハーバル・コミュニケーション
- 4 コミュニケーション・ギャップ
- 5 異文化体験
- 6 異文化適応
- 7 文化摩擦
- 8 カルチャー・ショック
- 9 異文化に通じる自己表現の教育
- 10 異文化に通じる自己表現と「ドラマ教育」
- 11 外国語・英語教育
- 12 バイリンガル教育
- 13 国際語としての英語
- 14 ALT(外国語指導助手)
- 15 JETプログラム
- W 異文化理解教育
- 1 文化
- 2 文化の普遍性と個別性
- 3 エスノセントリズム
- 4 文化相対主義
- 5 ステレオタイプ
- 6 文化的アイデンティティ
- 7 日本語と日本文化
- 8 日本の伝統文化
- 9 自国文化の理解
- 10 愛国心
- 11 異文化リテラシー
- X 多文化教育
- 1 日本の多文化教育
- 2 アメリカの多文化教育
- 3 バンクスの多文化教育論
- 4 多民族・多文化社会
- 5 エスニシティ
- 6 マイノリティ
- 7 多文化共生
- 8 アイヌ
- 9 アイヌに関する教育
- 10 在日外国人教育基本方針
- 11 戦後の在日朝鮮人教育
- 12 同化教育
- 13 日韓条約以後の在日韓国・朝鮮人教育
- 14 在日韓国・朝鮮人の人口動態
- 15 「在日」芸能人・スポーツ選手のカミングアウト
- 16 外国人労働者
- 17 外国にルーツをもつ子どもたちの増加
- 18 外国籍児童と教育施策
- 19 外国人の子どもの就学
- 20 留学生の教育環境
- 21 留学生の日本語教育
- 22 留学生受け入れ10万人計画
- 23 新国際学校
- 24 海外の日本語教師
- 25 日本語教師の養成
- Y 海外・帰国子女教育
- 1 海外子女教育
- 2 日本人学校
- 3 補習授業校
- 4 現地理解教育
- 5 海外の学習塾
- 6 海外での通信教育
- 7 海外の学力観
- 8 帰国子女教育
- 9 帰国生との相互交流教育
- 10 外国語保持教室
- 11 帰国子女の教育体験
- 12 特別枠入学試験
- [ 開発教育
- 1 日本のグローバル教育
- 2 アメリカのグローバル教育
- 3 グローバル公民
- 4 グローバル政治システム
- 5 グローバル経済システム
- 6 情報通信システム
- 7 国際公共財
- 8 グローバル論争・問題
- 9 グローバル科
- 10 グローバル・ヒストリー
- 11 エコロジカル・リテラシー
- 12 地球時代の歴史教育
- Z グローバル教育
- 1 開発教育の定義
- 2 開発教育の領域・内容
- 3 日本の開発教育
- 4 欧米の開発教育
- 5 南側諸国の開発教育
- 6 ユニセフの「開発のための教育」
- 7 学校での開発教育
- 8 地域・家庭・職場での開発教育
- 9 ワークショップ
- 10 ゲーム
- 11 ロールプレイ
- 12 シミュレーション
- 13 ランキング
- 14 フォト・ランゲージ
- 15 ワールド・スタディーズ
- 16 フェアトレード
- 17 開発教育協議会
- 18 UNDP(国連開発計画)
- 19 「人間開発報告書」と人間開発指数
- 20 南北問題(開発問題)
- 21 貧困問題
- 22 貧困緩和対策
- 23 FAO(国際食料機関)の開発援助
- 24 国連開発の10年
- 25 持続可能な開発
- 26 開発と女性(WID)
- 27 開発とジェンダー(GAD)
- 28 社会開発
- 29 参加型開発
- 30 開発と文化
- 31 世界開発報告書(世界銀行)
- 32 世界銀行の開発援助
- 33 IMF(国際通貨基金)の開発援助
- 34 累積債務
- 35 構造調整
- 36 世界子供白書
- 37 児童労働
- 38 ストリート・チルドレン
- 39 識字教室
- 40 WHO(世界保健機関)の開発援助
- 41 発展途上国におけるエイズ
- 42 エイズが開発に及ぼす影響
- 43 教育開発と国際社会
- 44 教育開発の優先課題
- 45 教育の収益率分析
- 46 基礎教育と開発
- 47 女子教育と開発
- 48 高等教育と開発
- \ 環境教育
- 1 環境教育指導資料(文部省)
- 2 自然認識と環境教育
- 3 社会認識と環境教育
- 4 総合学習と環境教育
- 5 自然学習
- 6 公害学習
- 7 「戦争による環境破壊」学習
- 8 リサイクル学習
- 9 学校教育におけるフィールドワークの位置
- 10 フィールドワークと環境教育
- 11 ネイチャーゲーム
- 12 地球環境問題の授業化の困難点
- 13 アメリカの環境教育
- 14 オーストラリアの環境教育
- 15 生態系
- 16 熱帯林の減少
- 17 野生生物の種の減少
- 18 酸性雨
- 19 オゾン層の破壊
- 20 地球の温暖化
- 21 戦争と地球環境
- 22 放射能汚染
- 23 環境難民
- 24 人間環境宣言
- 25 国連環境計画(UNEP)
- 26 国際環境プログラム(IEEP)
- 27 地球サミット
- 28 アジェンタ21
- 29 温暖化防止京都会議
- 30 地球白書
- 31 環境白書
- 32 環境基本法
- 33 環境保全
- 34 環境権
- 35 環境リスク
- 36 環境アセスメント
- 37 社会的費用
- 38 環境税
- 39 エコビジネス
- 40 ナショナルトラスト運動
- 41 ライフスタイル
- ] 平和教育
- 1 戦後の平和教育
- 2 憲法学習
- 3 戦争学習
- 4 戦争呼称と「戦争と平和学習」
- 5 ヒロシマ学習
- 6 沖縄学習
- 7 主体形成のための平和教育
- 8 社会認識教育としての平和教育
- 9 平和・人権・民主主義のための教育
- 10 双方向の平和教育
- 11 平和教育学
- 12 ユネスコ「平和の文化」
- 13 積極的平和
- 14 構造的暴力
- 15 安全保障
- 16 軍拡競争
- 17 軍縮
- 18 核抑止
- 19 核不拡散条約
- 20 民族紛争
- 21 難民
- 22 UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)
- ]T 人権教育
- 1 戦後の人権教育
- 2 解放教育運動
- 3 同和教育
- 4 国際人権教育
- 5 人権教育と隠れたカリキュラム
- 6 アサーティブネス
- 7 参加型人権教育
- 8 世界人権教育宣言
- 9 人権教育のための国連10年
- 10 人権文化
- 11 国連人権小委員会
- 12 児童の権利に関する条約(子どもの権利条約)
- 13 難民条約
- 14 拷問等禁止条約
- 15 世界の人権状況
- 16 人権の国際基準
- 17 国際刑事裁判所
- 18 死刑と人権
- 19 子ども兵士
- 20 アパルトヘイト
- 21 反差別国際運動(IMADR)
- 22 アムネスティ・インターナショナル
- 23 出入国管理(入管)体制
- 24 外国人労働者の人権
- 25 外国人登録
- 26 公務就任権
- 27 国際先住民年
- 28 先住民族の人権
- 29 アイヌ新法
- 30 国際障害者年
- 31 優生思想
- 32 障害者関係諸法
- 33 リハビリテーション
- 34 自立生活運動
- 35 ノーマライゼーション
- 36 特殊教育
- 37 統合教育
- 38 リプロダクティブ・ヘルス/ライツ
- 39 北京女性会議
- 40 女性差別撤廃条約
- 41 国際婦人年
- 42 女性のエンパワーメント
- 43 ジェンダー
- 44 ジェンダー・バイアス
- 45 ジェンダーと学校
- 46 性別役割分業意識
- 47 性の商品化
- 48 ウーマン・リブ
- 49 フェミニズム
- 50 女性学
- 51 アファーマティブ・アクションの役割
- 52 アファーマティブ・アクションの方向
- ]U 国際交流・国際協力
- 1 国際文化交流
- 2 国際交流基金
- 3 海外の日本教育に対する支援
- 4 国際学術交流
- 5 自治体の国際交流
- 6 学校における国際交流
- 7 教員海外研修
- 8 留学
- 9 ホームステイ
- 10 交換留学
- 11 海外旅行
- 12 開発援助・開発協力
- 13 政府開発援助(ODA)
- 14 国際協力事業団(JICA)
- 15 無償資金協力
- 16 技術協力
- 17 青年海外協力隊
- 18 研修員受け入れ事業
- 19 国民参加型協力
- 20 シニア海外ボランティア
- 21 JICAとサーモンキャンペーン
- 22 国際協力銀行
- 23 円借(5)
- 24 国際協力専門家
- 25 国際公務員
- 26 国際ボランティア
- 27 国連(国際連合)大学
- 28 教育開発
- 29 教育協力
- 30 NGO(民間援助/協力団体)
- 31 アフリカの緑化に取り組むNGO
- 32 公平な貿易でつながるNGO
- 33 村おこしに取り組むNGO
- 34 熱帯林保護に取り組むNGO
- 35 難民を助けるNGO
- 36 障害者の自立を助けるNGO
- 37 医療活動を支えるNGO
- 38 母親達の救援活動NGO
- 39 被爆した子どもたちを預かるNGO
- 執筆者一覧
まえがき
国際理解教育という概念は,世界情勢の変化にともなって変遷してきた。1970年代以降に限ってみると,地球規模の環境破壊,核の危機などを通じて,自国や地域だけではなく,地球全体の存続/発展を視野に入れる必要性が認識されるようになり,「宇宙船地球号」や「地球村(global village)」といった用語が,欧米の教育で頻繁に用いられるようになった。
こうした背景のもとで,ユネスコは1974年にいわゆる「国際教育勧告」を総会で採択した。この「国際教育勧告」は,国際理解教育の内容として倫理・公民的側面と文化的側面の両面があるとし,環境,開発,平和,人権などに関する人類の主要問題の学習の重要性を明記した。1994年の国際教育会議では,「国際教育勧告」は20年後もなお有効であり,さらに平和と人権および民主主義のための教育が今日求められているとされた。
日本では,1996年中央教育審議会答申が「国際化と教育」に関して,「今日国際的な相互依存関係がますます深まるとともに,地球環境問題,エネルギー問題,人口問題,難民問題など地球規模の問題が深刻化しつつあり,これらの問題の解決に当たっては,国際的な協調が不可欠となっている」と,グローバルな視点を明記した。が,具体的方策としては「異文化理解の推進」「日本人としての自己の確立」「コミュニケーション能力の育成」に重点を置き,「国際交流活動」「教員の海外派遣」「外国語教育の改善」などの推進を提言した。いわば総論ではグローバルな視点をも提示しながら,具体策においては文化理解にかかわる領域に偏り,自文化・自国認識にかなりの比重を置いたものになっている。
しかし,近年学校現場では文化理解にかかわるテーマだけではなく,地球的規模の諸問題をとりあげた授業実践や教材が蓄積されつつあり,国際理解=異文化理解という従来の狭い見方は改められつつある。それは,いわゆる国際理解教育とは生まれも育ちも異なる開発教育がその領域をしだいに拡大し,また,戦後一貫して実践されてきた人権教育,平和教育,環境教育などが,地球的な視野を取り入れながら発展しつつあることと密接に関連しているであろう。さらに,グローバル教育も国際理解教育に近接し,多文化教育,異文化コミュニケーション教育,海外・帰国子女(帰国生)教育,国際交流・国際協力なども含めて,国際理解教育は今や非常に広い領域をもつ傘概念としてとらえられるようになっている。
いうまでもなく,これらの諸教育はいずれも現代の日本社会の要請に応じて発展してきたものであり,それらは相互に関連しあい,部分的に重なりあうようにもなってきた。このことは,各々の教育の概念規定をより困難にしている。が,それゆえにこそ,新学習指導要領によって新設された「総合的な学習の時間」の学習課題としてふさわしいともいえよう。
本書では項目を便宜上12の章に分け,以下のような方針で編集した。
(1) 国際理解教育を広義にとらえ,できるかぎり広い分野から項目を選ぶ。
(2) 教育の概念や歴史,内容,方法だけではなく,教育の扱う諸問題についても重要なものを選び,関連の深い項目をできるかぎり前後に配列する。
(3) 読みやすくするため1項目1頁とし,簡潔で平易な表現に努める。
本書の執筆には,多くの新進気鋭の研究者および実践者の協力を得ることができ,出版にあたっては明治図書編集部樋口雅子,阿波理恵子両氏のご助力をいただきました。ここに厚くお礼申し上げます。
2000年10月 編者 /大津 和子 /溝上 泰
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- 明治図書