- 刊行に寄せて 教育における不易とは
- /水戸部 修治
- 序文 考える力を育てることばの教育
- /内田 伸子
- はじめに
- 1 理論編 考える力を育てることばの教育
- ―共に感じ考えながら,自分の知をつくり出す子どもをめざして―
- 1 考える力とことば
- 2 感性的思考力と論理的思考力
- 3 2つの思考力を育てる言語活動の工夫 ―交流と振り返り―
- 4 2つの思考力のはたらきとそれを支える言語活動
- 5 思考を活用し,反応を深める指導の工夫
- 2 実践編 思考力を活性化させる言語活動プラン
- 国語科 内容や表現のよさを感じたり筆者の説得の工夫にはたらきかけたりする授業
- 1 国語科における「感性と論理」の思考の活性化
- 2 「交流」と「振り返り」による言語活動の充実のポイント
- 3 @指導案 3年 「ウイルソンの考え方ってすばらしいな!」/ A指導案 5年 「生き物は本当に円柱形なの?」
- 4 国語科における「語彙指導の充実」
- 社会科 事実同士の関係を考え,支える人を感じる授業
- 1 社会科における「感性と論理」の思考の活性化
- 2 「交流」と「振り返り」による言語活動の充実のポイント
- 3 @指導案 3年 「地域密着!町の魚屋さん」/ A指導案 4年 「水のためにできること」/ B指導案 6年 「頼朝がつくった武士の世」
- 4 社会科における「語彙指導の充実」
- 算数科 直観を深めたり推理をはたらかせたりしながら,新しい数理を見いだす授業
- 1 算数科における「感性と論理」の思考の活性化
- 2 「交流」と「振り返り」による言語活動の充実のポイント
- 3 @指導案 1年 「たしざん(1)」〜ブロックで,おはなしをしよう〜/ A指導案 2年 「かけ算(2)」〜7×4の計算の仕方を考え,説明しよう〜/ B指導案 5年 「図形の角」〜四角形の角の大きさを考え,説明しよう〜
- 4 算数科における「語彙指導の充実」
- 理科 体感的に触れながら科学的に解き明かす授業
- 1 理科における「感性と論理」の思考の活性化
- 2 「交流」と「振り返り」による言語活動の充実のポイント
- 3 @指導案 4年 「水のすがたのふしぎ」/ A指導案 5年 「ふりこのきまり」/ B指導案 6年 「電気と私たちのくらし」
- 4 理科における「語彙指導の充実」
- 生活科 体全体で感じはたらきかけながら,気付きの質を高めていく子どもを育てる授業
- 1 生活科における「感性と論理」の思考の活性化
- 2 「交流」と「振り返り」による言語活動の充実のポイント
- 3 @指導案 1年 「それいけ!附小探検隊1」〜学校探検をしよう!〜/ A指導案 2年 「探検しよう!附属校通り」
- 4 生活科における「語彙指導の充実」
- 音楽科 感じたり思いと要素を結び付けたりして,表し方・聴き方を身に付けていく授業
- 1 音楽科における「感性と論理」の思考の活性化
- 2 「交流」と「振り返り」による言語活動の充実のポイント
- 3 @指導案 4年 「思いをつないで」〜オーラリー変奏組曲〜/ A指導案 5年 「GReeeeNにまねぶ」/ B指導案 6年 「感じよう『木星』」
- 4 音楽科における「語彙指導の充実」
- 図画工作科 発想と構想を繰り返し,造形要素に対する自分なりの見方を育てる授業
- 1 図画工作科における「感性と論理」の思考の活性化
- 2 「交流」と「振り返り」による言語活動の充実のポイント
- 3 @指導案 2年 「さわって さわって」/ A指導案 3年 「空色に包まれて」
- 4 図画工作科における「語彙指導の充実」
- 家庭科 直接体験で感じながら,目的に合わせて工夫する授業
- 1 家庭科における「感性と論理」の思考の活性化
- 2 「交流」と「振り返り」による言語活動の充実のポイント
- 3 指導案 5年 「エコスタイル洗濯」
- 4 家庭科における「語彙指導の充実」
- 体育科 運動にひたり,はたらきかけていく子どもを育てる授業
- 1 体育科における「感性と論理」の思考の活性化
- 2 「交流」と「振り返り」による言語活動の充実のポイント
- 3 @指導案 2年 「わくわくランド」(体つくり運動)/ A指導案 4年 「海賊たちの大冒険」(表現運動 表現)/ B指導案 5年 「ジャストミート幅跳び」(走り幅跳び)/ C指導案 6年 「3on3」(ハーフ・バスケットボール)
- 4 体育科における「語彙指導の充実」
- 道徳 自他の行為を感じたり探ったりして,よりよい自己実現に向かう授業づくり
- 1 道徳における「感性と論理」の思考の活性化
- 2 「交流」と「振り返り」による言語活動の充実のポイント
- 3 指導案 1年 「生きているって うれしいな」
- 4 道徳における「語彙指導の充実」
- 外国語活動 外国語や文化の特徴を体験的に感じ取り,意図的に使いながら異文化に慣れ親しむ授業
- 1 外国語活動における「感性と論理」の思考の活性化
- 2 「交流」と「振り返り」による言語活動の充実のポイント
- 3 指導案 5年 「行ってみたい国を紹介しよう」
- 4 外国語活動における「語彙指導の充実」
- なでしこ学習(総合的な学習の時間) 新たな事象から感じ考え方を活かしながら自己のあり方を探る授業
- 1 なでしこ学習における「感性と論理」の思考の活性化
- 2 「交流」と「振り返り」による言語活動の充実のポイント
- 3 指導案 6年 「夢を語ろう」
- 4 単元構想表 6年 「夢を語ろう」
- 5 なでしこ学習 思考に関するカリキュラム系統表
- おわりに
- 研究同人
刊行に寄せて 教育における不易とは
教育の場において,しばしば「不易と流行」ということが言われる。授業づくりにおける「不易」とは何だろうか。それは,従前から行ってきた指導方法を無反省に踏襲することではない。むしろ,目の前の子どもたちに付けたい力は何か,そのためにはどのような指導方法をとるべきかを絶えず問い直し,今日よりも明日,半歩でも一歩でもよりよい授業づくりを目指す,そうしたことこそ不易の教育行為だと言えよう。
平成23年3月11日に起きた東日本大震災は,我が国の社会に,そして子どもたちの心と体,日常生活に抜き差しならない影響を及ぼしている。この大震災以降,私たちは,「何をさせられるのか」ではなく,「自分には何ができるのだろうか」ということを問うようになってきているのではないだろうか。それは,私たち大人にとって重要なことであるばかりではなく,目の前の子どもたちが今,そして10年後,20年後,社会を担う存在になったときにどうしても必要な力でもある。
このような状況を踏まえたとき,改めて問われるのは,教育に携わる私たちの学力観である。子どもたちがこれから生きていく社会では,今までに経験してこなかった状況や,既成の価値観では対応しきれない事態に直面することがこれまで以上に多くなるであろう。そうしたときに発揮できる力をこそ育む必要がある。それは例えば,誰も正解を持ち合わせていない課題に対して,関連付けられるこれまでの経験を振り返り,想像力をはたらかせながら対策を練る力や,他との交流を通して,異なる観点からの発想をつきあわせて新たな考えを生み出したり,合意を形成しながら実行したりしていく力などである。
とりわけそうした力の基盤となる言葉の力は,たとえ困難な状況下にあっても,その克服に向けて思考し,判断するために必要であり,ときに自分自身を支え,ときに他者との交流によって一層豊かな学びを可能にする,まさに生きる力そのものでもある。
岡山大学教育学部附属小学校が取り組んできた実践研究は,こうした力の育成に真正面から挑むものである。そしてその道のりは,子どもたちに必要な力と同様,マニュアルなどない中で,教師自身が思考・判断し,協働しながら子どもの姿を見つめて授業改善を積み重ねてきた過程でもある。そうした手作りの実践研究こそ,不易の教育行為として価値の高いものと言えるだろう。
新教育課程が実施される今,本書を多くの学校・実践者に手に取っていただくとともに,岡山大学教育学部附属小学校の研究の成果が広く共有・具体化され,全国の子どもたちに確かな学力を育むものとなることを期待したい。
2012年1月 文部科学省教科調査官 /水戸部 修治
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- 明治図書