平成20年版中学校新教育課程 教科・領域の改訂解説

平成20年版中学校新教育課程 教科・領域の改訂解説

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学習指導要領改訂の論理と道筋を明かす

中学校の教育課程が大きく変わろうとしています。その方向を教科・領域ごとに専門部会の委員の先生方が、@何が改定重点か、Aなぜ重点になったか、B今後の指導の在り方はどうあればよいか、から明快に解説したリーダー教師が今一番必要な基本図書。


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ISBN:
978-4-18-022619-1
ジャンル:
学習指導要領・教育課程
刊行:
5刷
対象:
中学校
仕様:
A5判 176頁
状態:
絶版
出荷:
復刊次第

目次

もくじの詳細表示

はじめに
T章 今次教育課程改訂の特色は何か
―教育課程改訂の変遷から見る― /安彦 忠彦
1 第1回(昭和26年)の教育課程改訂:経験主義教育をめざすもの
2 第2回(昭和33年)の教育課程改訂:系統主義・本質主義への転換
3 第3回(昭和43年)の教育課程改訂:教育内容の現代化に即応
4 第4回(昭和52年)の教育課程改訂:初めて教育水準をダウン
5 第5回(平成元年)の教育課程改訂:隔週五日制と生活科の導入
6 第6回(平成10年)の教育課程改訂:完全五日制の実施と総合的学習の導入
7 今回の改訂の特色
(1) まず,今回の改訂は,歴史上「第三の教育改革」と呼ばれる,公教育制度全体に関わる改革の一環として行われた,ということである
(2) 次に「活用型」の学習により,「実社会・実生活に生きる力」の育成を期して,基本的知識・技能の習得型の学習を,教科を超える総合的学習における探究型の学習に,効果的につなげることをめざしていることである
(3) 第三に,学習意欲や学習習慣を重視して,学習時間や授業時間の確保や増加を図ることをめざしていることである
(4) 最後に,カリキュラム・マネジメントの重視と現場主義の採用が挙げられる
U章 教育課程改訂の論理を解説する
―改訂の哲学・背景から見る― /安彦 忠彦
§1 今次改訂の社会的背景
1 「第三の教育改革」を唱える政治的動向
2 経済界を中心に,経済のグローバル化に対応した個性的人材養成
3 社会問題としてのいじめ,不登校,学級崩壊,問題行動等への対応
4 「学力低下」問題への対応
5 今日的・現代的諸課題としての環境・エネルギー・食料問題等への対応
§2 今次改訂の教育哲学的特徴
1 教育の中立性をめぐる政治的圧力との関係:「教育の 中立性」原則
2 個性教育と共通教育のバランス:「個と集団との関係」 の理解
3 基礎的・基本的な知識・技能とその活用能力の 育成=「活用型」学習の導入
4 系統主義と経験主義とのバランス
5 「現場主義」としての教育課程編成:現場主義の思想
§3 今次の改訂で残された課題
V章 教育課程改訂の内容と方向の解説
§1 総則改訂の内容と方向を解説する /大杉 昭英
1 改訂の重点は何か
2 なぜ重点になったか
3 重点項目の具体的な内容
(1) 「生きる力」という理念の共有
(2) 基礎的・基本的な知識・技能の習得
(3) 思考力・判断力・表現力等の育成
(4) 確かな学力を確立するために必要な授業時数の確保
(5) 学習意欲の向上や学習習慣の確立
(6) 豊かな心や健やかな体の育成のための指導の充
4 今後求められる指導のあり方
§2 国語科改訂の内容と方向を解説する /田沼 良宣
1 改訂の重点は何か
2 なぜ重点になったか
(1) 実生活・実社会において活用できる基礎的な言語活動を行う能力
(2) 言語芸術や言語文化の亨受,創造を通して,言語生活を構築しながら豊かに生きる能力
3 今後求められる指導のあり方
(1) 国語科が中核となって,確かな言語能力を育成する指導のあり方
(2) 学習を実生活に関連付け,目的のある学習活動を展開する指導のあり方
§3 社会科改訂の内容と方向を解説する /岩田 一彦
1 改訂の重点
A 基礎的・基本的な知識や概念の習得・探究
B 知識・概念・技能の活用
C 社会に積極的に参加し課題解決していく能力
D 我が国の伝統,文化,歴史に関する教育
E 世界の地理や歴史に関する内容の充実
2 改訂の重点となった背景と理由
A 基礎的・基本的な知識や概念の習得・探究
B 知識・概念・技能の活
C 社会に積極的に参加し課題解決していく能
D 我が国の伝統,文化,歴史に関する教
E 世界の地理や歴史に関する内容の充実
3 新しい指導のあり方
A 基礎的・基本的な知識や概念の習得・探究
B 知識・概念・技能の活用
C 社会に積極的に参加し課題解決していく能力
D 我が国の伝統,文化,歴史に関する教育
E 世界の地理や歴史に関する内容の充実
§4 数学科改訂の内容と方向を解説する /中原 忠男
1 改訂の重点は何か
(1) 算数・数学科の重視
(2) 数学科の改訂の重点
2 なぜ,重点になったのか
(1) 目的・目標面に関わる重点
(2) 領域・内容面に関わること
(3) 方法面に関わること
3 今後求められる指導のあり方
(1) 基礎・基本の確実な定着
(2) 表現方法の活用
(3) 数学的活動の充実
§5 理科改訂の内容と方向を解説する /高畠 勇二
1 改訂の重点は何か
2 なぜ重点になったか
(1) 重点1:理科に対する学習意欲の向上,科学技術の発達への対応
(2) 重点2:観察,実験や自然体験,科学的な体験の充実
(3) 重点3:科学的な概念の理解など,基礎的・基本的な知識・技能の確実な定着
(4) 重点4:科学的な思考力・表現力の育成
(5) 重点5:中学校理科の指導内容の順序
3 今後求められる指導のあり方
(1) 実社会・実生活に立脚した指導
(2) 体験を重視した指導
(3) 知識・技能を確実に定着させる指導
(4) 思考力・表現力を育成する指導
§6 音楽科改訂の内容と方向を解説する /吉田 孝
1 改訂の重点は何か
2 なぜ重点になったか
(1) 思いや意図をもって表現したり味わって聴いたりする力
(2) 音楽と生活のかかわり
(3) 音楽文化に親しむ態度
(4) 共通事項について
(5) 「創作」活動の改善
(6) 鑑賞指導の改善
(7) 我が国の音楽文化などの指導のあり方について
3 今後求められる指導のあり方
(1) 音楽的自立
(2) 学力の定着
(3) 創作について
(4) 伝統音楽・郷土の音楽
§7 美術科改訂の内容と方向を解説する /遠藤 友麗
1 美術科の現状と改善の課題
(1) 美術科の現状と課題
(2) 美術科の改善の方向
2 中央教育審議会において示された改善の具体例
〔小学校の改善例〕/〔中学校の改善例〕
3 実生活に生きて働くこれからの美術教育の改善
(1) 美術教育の根拠を確認する
4 実生活に生きる美術の確かな能力形成
(1) 心豊かな美的生活の創造に生きて働く美術・造形の能力
§8 保健体育科改訂の内容と方向を解説する /伊藤 久仁
1 改訂の重点は何か
2 なぜ重点になったのか
(1) 体育
(2) 保健
3 今後求められる指導のあり方
(1) 体育
(2) 保健
§9 技術・家庭科改訂の内容と方向を解説する /松原 伸一
1 改訂の重点は何か〜改訂の検討課題
2 なぜ重点になったのか〜審議経過の報告より
3 今後求められる指導のあり方
(1) 現状と課題
(2) 改善の方向性
§10 英語科改訂の内容と方向を解説する /太郎良 博
1 改善の基本方針
2 改訂の背景(なぜ重点になったのか)
(1) 発信力を高めることの必要性
(2) 基礎知識の定着を図ることの必要性
(3) 一貫した教育内容の構築を図ることの必要性
(4) 小学校段階から外国語活動を取り入れることの必要性
3 今後求められる指導のあり方
(1) 基礎知識の定着を図るためには
(2) 発信力を高めるためには
(3) 小学校・中学校・高等学校の相互連携を目指すためには
§11 道徳改訂の内容と方向を解説する /藤永 芳純
1 道徳の時間の教科化
2 改正教育基本法への即応
3 社会状況の変化への対応
4 学校における道徳教育の現状の改善
(1) 道徳の時間の指導のあり方の課
(2) 学習指導要領の記載の仕方の課
(3) 高等学校における道徳教育の課
(4) 家庭や地域社会との連携の課
§12 特別活動改訂の内容と方向を解説する /渡部 邦雄
1 改訂の重点
(1) 「目標」を見直す
(2) 「内容」を見直
(3) 社会的自立の促
(4) 体験活動の推
2 なぜ重点として取り上げられたのか
(1) 人間力育成を確かなものにするために
(2) 主体性や社会性を育むために
(3) 指導の改善充実のために
3 今後求められる指導のあり方
(1) 目標,内容について
(2) 社会的自立の促進について
(3) 体験活動の推進について
(4) 教育課程の枠組みとの関係
§13 総合的な学習の時間改訂の内容と方向を解説する /村川 雅弘
1 中学校教育全体の改善の方向性との関連
(1) 全教育活動を通じてのスキルの確実な習得
(2) 人間としての生き方の指導の充実
(3) 小中の教育課程の連携と教師間の相互交流
2 総合的な学習の時間の改善の方向性と具体的展開の展望
(1) 限られた時数を有効に活用した実践の充実
(2) 地域の教育力との連携・協力
(3) 生徒に育てたい力の明確化と適切な評価
(4) 中学校における学習活動の例示
(5) 義務教育における総合的な学習の集大成
(6) 総合的な学習の時間のコーディネイターの役割

まえがき

 本書は,教育課程の国家基準である学習指導要領の今回の改訂が,どのような考えに基づいてなされたか,この改訂に直接に関係した方々に解説していただいたものである。この意味で,各学校での教育課程編成の取り組みに,直接役に立つものとなるよう留意している。

 今回の学習指導要領改訂は,従来になく難航した。それは,一つは「第三の教育改革」と呼ばれるような,日本の教育制度全体の改革と並行しての作業だったからである。教育関係の最高法規である教育基本法の改正を始め,関連する学校教育法,教員免許法,教育公務員特例法及び教育委員会法(いずれも略称)といった重要な教育関連の法律が改正された。まだ,その結果がどう出るのか明確ではないが,これによって,公教育を「国民個々人」から「国家・社会」へ向けること,日本の「伝統と文化」を重んじること,「実社会・実生活に生きる力」を育成すること,国民としての「共通基礎教養」を確実に育てること,などが目指されている。しかし,時代は大きく地球的規模ないしは世界的規模で進展しており,狭い民族意識で済むような時代ではない。自分の国の事情だけを強調していては,世界各国と一緒に共倒れになるような深刻な事態にある。自国の誇りを独善的に主張するのでなく,世界から尊敬を得るような内容のものにしなければならない。学校現場での補正が必要となるゆえんである。

 また第二に,社会全体の教育力が落ちてしまい,単に学校だけの改善では済まなくなってきた,という事情がある。中教審では,学習指導要領の改訂作業を行いつつ,社会と学校との関係,家庭と学校との関係など,多くの点で大がかりに吟味・検討しなければならない状況であった。そもそも,内閣が「教育改革国民会議」や「教育再生会議」を諮問機関として設けたのも,そのような大きな構えでの改革をめざしてのことであった。ただし,これらの会議は,たとえ内閣の諮問機関であっても,非公式の私的なものであり,中央教育審議会(中教審)のように,「教育の中立性」を確保するために,法令によって公式に設けられたものではない。したがって,それらの会議がどんな報告書を出そうと,公式にその座長である内閣総理大臣から文部科学大臣に向かって,その報告書の内容に沿って具体化するように指示がなければ,何ら問題にしなくて良いのである。しかもそのような指示があった場合,文部科学大臣は必ず中教審にその内容を諮問しなければならないことになっている。このように,最も重要なのは中教審なのである。中教審が常に妥当な判断をしているとは思わないが,その役割は大きい。その中教審に,それらの会議からの問題を含めて,これまで以上に多くの審議すべき内容が課されたわけである。その内容は,知・徳・体の教育の全分野にわたって実に広く,また深刻なものばかりであった。そのために,審議は多方面にわたり,かつ長期にわたる検討が必要であった。

 本書は,そのような背景のもとに出された,新しい学習指導要領の基本的性格を明らかにし,それによって各学校での教育課程編成に,少しでも役立つよう刊行された。一人でも多くの学校関係者に活用されるよう望んでいる。


  2008年1月   編 者

著者紹介

安彦 忠彦(あびこ ただひこ)著書を検索»

1942 年生まれ

早稲田大学教授

中央教育審議会委員

※この情報は、本書が刊行された当時の奥付の記載内容に基づいて作成されています。
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