- まえがき
- 一 三年から六年までの授業カリキュラム 一〇〇時間
- 一 困っている人はだれですか 三年
- 二 バリアフリー商品が教えてくれること 三年
- 三 歳をとるってどう困るの 三年
- 四 冬季パラリンピックのビデオ 三年
- 五 ボランティア登録をしよう 三年
- 六 エネルギーとボランティア 三年
- 七 盲導犬のことを知ろう 三年
- 八 介護のしかたを学ぼう 三年
- 九 クイズで知ろう点字の秘密 四年
- 一〇 キャップハンディ体験教室 四年
- 一一 バリアフリーはだれのため 四年
- 一二 病院を核としたボランティア 四年
- 一三 手話で自己紹介 四年
- 一四 ボランティアリーダーになろう 四年
- 一五 盲導犬のことを知ろう 四年
- 一六 介護のしかたを学ぼう 四年
- 一七 アイマスクをかけて調理 五年
- 一八 朗読テープでボランティア 五年
- 一九 体験バリアフリー商品 五年
- 二〇 ボランティア積み立て 五年
- 二一 老人ホームへ行くための準備 五年
- 二二 町づくりとボランティア 五年
- 二三 介護のしかたを学ぼう 五年
- 二四 町づくりとボランティア 六年
- 二五 インターネットで探してみよう他の国のボランティア 六年
- 二六 子どもが考えるこれからのボランティア 六年
- 二七 学区の福祉マップを作ろう 六年
- 二八 学習点字ペンで点字を学ぼう 六年
- 二九 介護のしかたを学ぼう 六年
- 一 「総合的な学習(福祉)」全二五時間一覧
- 二 授業展開プラン 福祉ボランティア教育情報
- あとがき
まえがき
「ここでは、車椅子が使えないね」
特別養護老人ホームの人が学校に招かれた。その時、一人の子どもの口から出た言葉である。
学校で、その年の収穫を祝う「秋祭り」が行われた。招待された特別養護老人ホームの人がバスから次々に降りてきた。その中に、車椅子を使用しなければならないお年寄りがいた。
両脇を抱えられ、バスから降りて、車椅子の乗った。しかし、その車椅子はすぐに階段の前で止まってしまった。階段を昇らなければ体育館に入ることができない。たった三段の階段だが、車椅子では階段を昇ることはできないのである。子ども達が車椅子の周りに集まってきた。そして、みんなで車椅子を持ち上げた。この時、一人の子どもが
「ここでは、車椅子が使えないね」
と言ったのである。
車椅子は体育館に入った。子ども達が交替で、押してあげた。
やがて、「秋祭り」が終わり、ホームの人がバスに乗ることになった。バスに乗るには、さっき昇った階段を降りなければならない。また、子ども達が手伝った。素晴らしい体験だった。
それからしばらくして、女の子が足首付近を骨折した。
女の子は松葉杖を使って登校することになった。ところが、女の子の教室のある二階には、洋式のトイレがない。足首付近を骨折した女の子には和式のトイレは使えない。
女の子が松葉杖を使って登校するという前日、校長先生は、和式のトイレに設置できる洋式の便座を準備した。さらに、トイレのドアを外し、カーテンをつけた。内側に開くドアのために、洋式便座があるとドアが開かないのである。これで、トイレの心配がなくなった。その日のうちに、担任から、トイレについて、家庭に連絡した。
次の日、女の子は、その改造洋式トイレを使うことができた。
女の子にとって、貴重な体験である。女の子だけではない。他の子ども達もこのような様子を見ることで貴重な体験をしているのである。車椅子とトイレによって、子ども達は素晴らしい体験をした。身体に不自由があるとき、様々なバリアがあることを感じ取ったのである。
総合的な学習の時間の具体的な課題が示されてある。次の三つである。
例えば国際理解、情報、環境、福祉・健康などの横断的・総合的な課題
児童の興味・関心に基づく課題
地域や学校の特色に応じた課題
これらの三つの課題をとらえて、総合的な学習の時間では、どれを取り上げてもいいという人がいる。何をやっても構わないという人がいる。中には、 だけやればいいという人もいる。また、 は「例えば」であるから、やる必要がないという人もいるのである。
果たして、そうだろうか。それは、「教育課程審議会審議のまとめ」を読めば明らかである。どれも取り上げなければならない課題なのである。 はやらなくてもいいという人は、審議のまとめの原文を読んでいるのだろうか。何を根拠に、やらなくてもいいなどといっているのだろうか。
審議のまとめの「各学校段階・各教科等を通じる主な課題に関する基本的考え方」に次のようにある。
「道徳教育、国際化、情報化、環境問題、少子高齢社会への対応など、各学校段階・各教科等を通じた横断的・総合的な課題についてどのように対応していくべきと考えたかについてここに示しておく」
として、それぞれの対応について具体的に示されている。例えば、(少子高齢社会への対応等)では、
「今後は、各教科、道徳、特別活動及び「総合的な学習の時間」において、(中略・筆者)介護・福祉など少子高齢社会の課題に関する理解を深めるとともに、実際に幼児、高齢者や障害のある人と交流し、触れ合う活動や、介護・福祉に関するボランティア活動を体験することを重視する必要がある」
というようにである。さらに、最後の部分には、次のように示されている。
「「総合的な学習の時間」を創設し、各学校が創意工夫を生かした特色ある教育活動を一層展開できるようにするとともに、国際理解・外国語会話、情報、環境、福祉・健康などの課題について横断的・総合的な学習を推進できるような仕組みを整えることとする」
「例えば国際理解、情報、環境、福祉・健康などの横断的・総合的な課題」は単なる例示ではないことが明らかである。取り上げるべき課題なのである。
本書は、この課題に対応できるように構成されている。まず、三年から六年までの「福祉・ボランティア教育」の一〇〇時間のカリキュラム例を示した。次に、具体的な授業プランと六年の全体のプラン、そして、福祉・ボランティア教育情報も入れた。どこから読み始めても大丈夫である。
本書がこれからの「福祉・ボランティア教育」の授業実践及び子ども達の体験を通した試行錯誤に大いに役立ってくれることを願っている。
一九九九年一月八日 /竹川 訓由
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- 明治図書