- はじめに
- 序文 愛がなくっちゃ届かない! 〜未来は,ここから花開く〜
- 第1章 インターネットなんて学校教育に使えない?
- 第1節 全国発芽マップの誕生
- 第2節 教科学習こそが中心
- 第3節 総合的学習での利用を中心に
- 第4節 インターネットはコミュニケーションの道具
- 第2章 インターネットが学びを変える
- 第1節 かぼちゃマップは大失敗
- 1 100校プロジェクトと発芽マップ/ 2 かぼちゃマップ
- 第2節 綿が日本をつないだ全国綿マップ
- 1 メーリングリストの活用/ 2 ホームページによる展開/ 3 生育差からの交流/ 4 教科学習への発展/ 5 その他
- 第3節 教科学習と総合学習を結ぶインターネット
- 1 はじまりは,紙づくり体験から/ 2 今なぜケナフなのか?
- 第3章 インターネットで生まれた,ケナフの感動と喜び
- 〜環境学習への飛躍〜
- 第1節 情報ネットワークの威力
- 第2節 環境学習への飛躍
- 1 成長の喜び/ 2 送りたい,助けたい,湯島からケナフ輸送作戦/ 3 ケナフを守れ! 台風襲来/ 4 わあ! 花が咲いたよ/ 5 ケナフ理科学習登場/ 6 収穫の喜び/ 7 世界にたった1枚の葉書/ 8 夢は全国発芽マップ '98へ
- 第4章 ケナフがひろげる人のつながり
- 〜学校の外へ広がるFace to face〜
- 第1節 インターネットとは別のところでの人のかかわり
- 第2節 宮崎ケナフの会発足
- 1 誕生!「宮崎ケナフの会」/ 2 全国発芽マップ '98(5月20日)に向けて/ 3 植草祭イン宮崎/ 4 人から人へ伝わるケナフの輪
- 第5章 コミュニケーションの道具としてのインターネット
- 第1節 子どもの冒険が成立していなければ,道具も成立しない
- 第2節 行為から道具を知り,道具が行為を変える
- 第3節 行為を通したコミュニケーション
- 第4節 メディアコミュニケーションの危惧
- 第6章 子どもたちは何を学んだのか
- 第1節 ケナフの輪を広げよう
- 第2節 大好きなケナフ
- 第3節 ケナフで作ったカレンダー
- 第4節 育て!! ケナフ
- 第5節 ケナフが私たちにくれたもの
- 第6節 1997『地球クラブ』ケナフ栽培カレンダー
- 第7節 ケナフのすごさ
- 第8節 心と一緒に育っています 種もヒトも
- 第9節 ケナフとすごした夏休み
- 第10節 鹿水高で「ケナフ」を?
- 第7章 座談会…全国発芽マップの成果と課題
- 第8章 全国発芽マップへのラブレター
- 第1節 ケナフの花がパッと咲いたら,環境開花の音がする!
- 第2節 紙ができたよ,ホントだよ!
- 第3節 京都でも開いたケナフの花
- 第4節 発芽マップ年代記
- 第5節 私たちの心を届けよう ―湯島からケナフを送ろうプロジェクト―
- 第6節 地球クラブからこんにちは
- 第7節 私と発芽マップ
- 第8節 葛尾の気候に耐える気丈なケナフたち
- 第9節 育てて,もらった温かい心 ―東北仙台からの報告―
- 第10節 ほのぼのと「ケナフ」で
- 第11節 水産高校でも「ケナフ」を!
- 第12節 来年度も全国発芽マップにケナフを!
- 第13節 ケナフがつくる夢と交流の輪
- 第14節 総合的な学習の時間のねらいの確認を
- 第15節 インターネットでスコープの拡大を
- 第16節 広がる学びの場「インターネット」,想い描く窓「コンピュータ」
- 第17節 ケナフへの思い
- 第18節 小さな画面の奥に大きな「共有できる喜び」が
- 第9章 インターネットでひらくその他の学習
- 第1節 酸性雨調査プロジェクト
- 第2節 お天気共同観測プロジェクト
- 第3節 全国ライブ・カメラMAP
- 第10章 Q&A 全国協力型のインターネット学習
- Q1 電子メールとホームページはどう違うんですか?
- Q2 総合的学習とインターネットがどうむすびつくのですか?
- Q3 コンピュータを使うと子どもが機械的な人間になりませんか?
- Q4 実際に会ったことのない大人や子どもたちといい関係がつくれるのですか?
- Q5 植物を育てる情報のやり取りが何になるのですか? 実体験だけで十分ではないでしょうか?
- Q6 なぜ,ケナフがインターネットと結びついたんですか?
- Q7 なぜ全国発芽マッププロジェクトはこんなに盛り上がったのですか?
- Q8 全国発芽マップの未来への提案は何だったんですか?
- Q9 ケナフの広がりはこれからの地球環境にどんな影響を与えますか?
- 第11章 学校でのインターネット利用のために
- 第1節 インターネット教育利用の前提
- 第2節 インターネットの特質
- 第3節 サーバ管理の重要性
- 第4節 学校ドメイン化の意義
- 第12章 一粒から一枚まで
- 第1節 ケナフを育てる
- 第2節 パルプづくり
- 第3節 紙すき
- 引用文献
- 資料 全国発芽マップ参加校一覧
- おわりに
- 謝辞
- 著者の自己紹介
はじめに
「インターネット」と聞くと,「コンピュータはちょっと苦手で…」としりごみする人もいるでしょう。しかし,「電話」「ファックス」「テレビ」なら大丈夫でしょう。それと似たようなものだと考えていただいてかまわないと思います。インターネットに接続されたコンピュータの向こうには,生き生きとした「人」が見えているからです。
私たちが「全国発芽マップ」の活動を始めたとき,「コンピュータリテラシーの育成」とか「情報リテラシーの育成」だけを目標とするような教育にはしたくないという気持ちがありました。インターネットに接続されたコンピュータを,思考・表現・情報交換の「道具」として利用して,教科などの内容を学んでこそ,より高い価値を創造できると考えていたからです。
「全国発芽マップ」に参加した子どもと教師たちは,このことを見事に証明してくれたと思います。子どもは優れた学び手です。自分の感動を伝えたいと思えば,すぐに電子メールの使い方を習得します。先生が何週間もかかったキーボードの使い方は,ほんのわずかの時間でクリアします。「英語版のソフトは,使えない」というのは実は先生だけもしれません。子どもは,メニューが英語であっても,すぐさま位置で機能を覚えて何不自由なく使いこなします。大切なことは,子どもと教師が共にインターネットを利用したくなる内容と利用環境がそこにあるということでしょう。
それから,この本では,「ケナフ」という植物をご紹介します。「全国発芽マップ」が現在のような「熱い」活動になったのは,ケナフを通して環境保全に取り組んでいる「熱い」人たちに触れたからだと思います。自分も環境について考え,環境保全にかかわっているという自負が,参加する者の気持ちを高めていると思います。しかもその活動は,種子を蒔き,植物を育て,成長を楽しみ,開花に感動し,収穫を喜び,オリジナルデザインの「紙」を生み出して感動し合うという,ドラマチックな内容です。
また,本書でご紹介する実践は,「人」の大切さを示しています。「インターネットが学びを変える」とか,「ケナフは総合的学習の核になる」と言うのは簡単ですが,私たちがあえて言いたいことは,「学びを変えるのは,人である」ということです。
この実践にかかわった人たちは,真剣で,情熱的で,知的で,魅力的で,そのうえ愉快な人たちです。彼女/彼らは,間違いなく人を引きつける魅力にあふれています。そして,その周りの子どもたちも,そういった教師たちに感化されてどんどん引き込まれていくだけでなく,教師に元気の素を与え,時には知恵さえも与えています。
従来,学校での学びは「個人」のものとしてとらえるか,それとも「集団」のものとしてとらえるかのどちらかに偏りがちであったと思います。しかし,「全国発芽マップ」の実践は,そういった二分法的な学びのとらえ方とは別の見方を提供してくれています。つまり,ここで行われている学びは,「対話」を基調としたものです。自己との対話,綿やケナフとの対話,教室の友達との対話,ネットワークの向こうの友達との対話,ケナフの会などでボランティア活動を行う人たちとの対話,そういったあらゆる対話がこの実践を支えていると思います。
対話に満ちていて,知的で,芸術的で,感動的な「全国発芽マップ」の活動を通して,皆さんといっしょに総合的な学習の扉を開いていきたいと思います。
1999年1月 /中山 迅
-
- 明治図書