中学校新社会科地理の実践課題に応える授業デザイン

中学校新社会科地理の実践課題に応える授業デザイン

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中学校新社会科の実践課題を達成する授業の具体策を紹介

習得・活用・探究、公共的な事柄への参画、伝統・文化・歴史の習得、世界の地理・歴史の充実、言語力の育成等の中学校新社会科の実践課題を実際の授業でどう実現するか。地理の授業での具体案と道筋を主要単元で明確に示す。


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ISBN:
978-4-18-017825-4
ジャンル:
社会
刊行:
対象:
中学校
仕様:
B5判 104頁
状態:
絶版
出荷:
復刊次第

目次

もくじの詳細表示

まえがき
T章 新社会科地理的分野の実践課題
§1 なぜ,知識・技能の活用を重視するのか
1 PISA型学力をどう受け止めるのか
2 我が国で示された新しい学力の考え方と授業改善
3 活用は地理授業をどのように変えるのか
§2 地理的分野で知識・技能を活用するとは
1 地理的分野での活用
2 地図の読み取り
3 地域的特色を自然・歴史的背景・産業・環境・人口・生活文化・他地域との結び付きなどから考え,判断,表現する
4 まとめ―活用力の育成
§3 地理的分野の実践課題は何か
1 世界の様々な地域の調査
2 日本の諸地域の学習
3 身近な地域の課題学習
U章 実践課題への対応方法―4つのポイント―
§1 世界の様々な地域の調査学習をどうするか
§2 日本の諸地域学習をどうするか
§3 身近な地域の課題学習をどうするか
§4 地理特有の知識・技能観を越えて―まとめに代えて―
V章 課題解決の授業提案―すぐに役立つ発問と資料で作った授業例―
◆§1 授業提案を読み解くポイント
1 なぜ,「発問」と「資料」に注目するのか
2 世界の様々な地域の調査学習の場合
3 日本の諸地域学習の場合
4 身近な地域の課題学習の場合
◆§2 授業づくりの提案―具体的な地理授業の姿から考える―
1 世界の様々な地域(国)の調査学習をどう展開するか―指導計画と教材開発―
事例1 アメリカの学習
事例2 中国の学習
事例3 スイスの学習
事例4 インドの学習
2 日本の諸地域学習をどう展開するか―指導計画と教材開発―
事例1 北海道地方の学習(人口・都市・村落)
事例2 東北地方の学習(生活・文化)
事例3 関東地方の学習(産業)
事例4 中部地方の学習(歴史的背景)
事例5 近畿地方の学習(他地域との結び付き)
事例6 中国・四国地方の学習(環境)
事例7 九州地方の学習(自然)
3 身近な地域の課題学習をどう展開するか―指導計画と教材開発―
事例1 埼玉県久喜市の地域課題を追究する学習(関東の1地域)
事例2 太宰府市の地域課題を追究する学習(九州の1地域)
事例3 いわき市小名浜の地域課題を追究する学習(東北の1地域)
事例4 山口県周防大島町の地域課題を追究する学習(西日本の1地域)

まえがき

 いよいよ来年度から中学校で新学習指導要領が本格実施となる。社会科についても年間指導計画の作成や,新しい教科書を使った授業を具体的にどのように展開するか,その際,各教科で充実が求められている言語活動をどのように工夫するかなど,様々な検討が行われているのではないだろうか。

 こうした検討の際に留意しなければならないことがある。それは,学習指導要領が社会のグローバル化に伴って,学力のグローバル化が進んできた中で改訂されたことである。OECDでは知識基盤型社会に生きる子どもたちに必要なものとしてキー・コンピテンシーという新しい能力概念をうちだした。これは「異質な集団で交流する」「自律的に活動する」「相互作用的に道具を用いる」の3つのカテゴリーで構成されたものだ。ちなみに,「異質な集団で交流する」は異なる考え方の人たちと共同して仕事をする能力,「自律的に活動する」は歴史的な展望の中で目的を達成するための計画を立てそれを遂行する能力,「相互作用的に道具を用いる」は言語あるいは知識や技術という道具を用いて問題に対応する能力を示している。そして,これを国際標準の学力として各国の教育政策や教育実践の国際比較が行われている。例えば,日本の子どもたちの順位が下がって問題視されたPISAの読解力(リーディング・リテラシー)テストは先のカテゴリーの一つ「相互作用的に道具を用いる」能力の調査である。我が国では,平成10年版学習指導要領の理念となった「生きる力」を,このキー・コンピテンシーの考え方で再解釈し,平成20年版学習指導要領の基盤を構築しているのである。

 こうした教育の動向を見るにつけ,もう数十年前になるが,私が高校生だったころ将棋好きの級友から教わった「着眼大局着手小局」という言葉を思い出す。孔子の弟子の荀子の言葉だそうだが,大きな視点あるいは戦略から物事を見た上で,小さな一歩(一手)を踏み出すことだと言って将棋の手ほどきを受けた。あまり上達はしなかったのだが……。

 さて,この言葉に従って社会科授業について考えてみるとどうなるだろうか。それは,次のようになるだろう。着眼大局は「キー・コンピテンシーで再解釈された生きる力」と「知識・技能を活用する思考力・判断力・表現力の育成」となる。そして,着眼小局は「言語活動」である。我々はとかく目先の問題を解決することに一所懸命になってしまい,それはもっと大きな目的のためにやっているということを忘れがちになる。社会科で想定される言語活動は「資料の読み取り」「解釈」「説明」「論述」だが,そうした学習活動を行うことの意味,つまり,それは手段であって,目的である「キー・コンピテンシーで再構成された生きる力」と「知識・技能を活用する思考力・判断力・表現力の育成」を実現できるものになっているかを常に意識しておかなければならないということである。換言すると,教科書の見開き2ページを教える中で,「資料の読み取り」「解釈」「説明」「論述」などの活動を形式的に取り入れるだけの授業づくりであってはならないのである。

 以上のような課題意識のもと,中学校新社会科の実践課題に応える授業をどのように構成するか,そのデザインを設計するために役立つことを目指して本書を作成している。前半部(第T章及び第U章)では国際標準学力から説き起こし,社会科で育てる学力を明確にした上で,分野ごとに実践課題を考察している。その上で課題に対する対応方法を検討している。これが理論編に当たる。そして,後半部(第V章)では指導計画と教材を提示することで具体的な授業の姿をイメージしてもらえるようにしている。これが実践編に当たる。その際,後半部の冒頭において,その後に提示される指導計画を読み解くポイントを解説しているところが本書の新機軸となっている。多くの先生方に役立つことができれば幸いである。


  平成23年9月   編者 /大杉 昭英

著者紹介

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岐阜大学教授

※この情報は、本書が刊行された当時の奥付の記載内容に基づいて作成されています。
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