- まえがき
- T ギャップをステップに変える 中学社会科教師の心構え
- §1 教師が意地悪をしないことがすべての出発点
- [1] 指摘されて気が付いた原則中の原則
- [2] 市販のワークに原則をあてはめる
- [3] 単元テストに原則をあてはめる
- [4] 宿題にも原則を生かす
- §2 怒る前に,教えることがたくさんある
- [1] 教師の善意が生徒を追いつめることもある
- [2] 口頭では伝わらない,モデルを提示する
- [3] 教師のエピソードを語る
- [4] 「人を動かす」ための原理原則
- §3 指導力が不足しているのではない 指導技術が不足しているのである
- [1] 教員1年目,「当たり前のこと」が何も分かっていなかった
- [2] 若い教師が抱える悩みに正対する
- [3] 指導技術を学べば,生徒が救われる
- §4 「教えて,教えて,教える」という基本原則を貫く
- [1] 生徒のマイナス面を嘆いても,何も始まらない
- [2] 5つのステップで対応する
- U 中1ギャップに対応する 春休みにやっておくべきこと
- §1 「特別支援教育」の視点で準備をする
- [1] 中学校入学という「変化」は「不安」そのものである
- [2] 春休み,指導方針を全職員で確認する
- [3] 全職員で低刺激の指導をする
- [4] まずは,無条件に受け入れてみた
- [5] 「正論」だけでは解決しない
- [6] 教師の対応1つで,すべてが変わる
- §2 小学校との「つながり」を意識して準備する
- [1] 中学校の実情をふまえて〜教師の準備〜
- [2] 小学校までの学習について知る
- [3] 春休みだからできること
- [4] 中学生になる前にしておいてほしいこと〜生徒の準備〜
- [5] 春休みを使って楽しく準備する
- V 「授業開き」でギャップをうめる 配慮すべきポイントBEST3
- §1 攻めの「受け」ではなく,しなやかに「受ける」
- [1] 第一印象が重要
- [2] しなやかに「受ける」
- [3] TOSS高段者はどう「受ける」のか?
- [4] 何よりも求められるのは教師の気概
- §2 活動させて,確認して,ほめて,力をつける
- [1] 始業前から指導は始まっている
- [2] 教科書の名前を確認する
- [3] ノートの使い方を教える
- [4] 知っている国名を書かせる
- W 「社会科嫌い」の生徒を巻き込む 「黄金の3日間」のシナリオ
- §1 黄金の3日間でやりたい! 社会科嫌いも振り向く授業
- [1] 山岡さん(仮名)との出会い
- [2] やんちゃも優等生もできそうでできない! 教室中が熱狂する授業
- [3] 歴史の授業でも,黄金の3時間で誰もが活躍できる授業をする
- §2 勉強したい気持ちに手を差し伸べる
- [1] 分からなくてもお隣の人に聞けばいい
- [2] その時間で覚えさせる
- [3] 努力しようとする心を育てる
- §3 楽しく,かつシステムを意識した授業をする
- [1] 学習ルールを教え,勉強の仕方を体験させる
- [2] 全員ができることから始めて,一気に引き込む
- [3] 小さな成功体験を積み重ねる
- [4] 全体への指示を先に通し,後から個別に対応する
- [5] 知的で楽しい授業を続ける
- X 実物「学習の手引き」活用のポイント
- §1 安定した授業の目安を生徒と共有する
- [1] 荒れたときに意識すること
- [2] 全体がうまくいっているうちは大丈夫
- [3] 安定した授業を実現するために
- §2 「学習の手引き」の内容を繰り返し話題にして定着させる
- [1] 伸びる生徒の4条件
- [2] 「伸びる生徒」になるために守るべきルールを明記する
- [3] 日々の指導で「伸びる生徒の4条件」を定着させる
- [4] 「学習の手引き」は生徒にも教師にも見通しを持たせる
- §3 授業,定期テスト,家庭学習と連動させる
- [1] 連動させるために布石を打つ
- [2] 「手引き」に沿って授業を展開する
- [3] 定期テストの出題と関連させる
- [4] 家庭学習でも活用させる
- §4 社会を教えながら「学び方」を身につけさせる
- [1] 授業のデザイン
- [2] 実物資料
- [3] 「学習の手引き」〜春休みの準備〜
- [4] 黄金の1時間目での活用例
- [5] 趣意説明,語りを交えてテンポよく進める
- Y 「定期テスト」でのギャップをうめる テストのユニバーサルデザイン化
- §1 テストで社会科嫌いにさせないための配慮をすべきだ
- [1] 小学校のテストの特徴
- [2] 中学校のテストの特徴
- [3] 初めてのテストだけでも配慮できることがある
- [4] テスト勉強の仕方を教えて,教えて,教える
- §2 テスト作りにも優しさの思想が必要だ
- [1] テストを工夫し,意欲を持たせる
- [2] テスト慣れをさせる単元テスト
- [3] 定期テストは出題パターンを示す
- [4] 1年後に花が咲く
- Z 授業における中1ギャップの乗り越えさせ方
- §1 授業で乗り越えさせる だから教師は教材研究に力を入れる
- [1] 教材研究=教師の学び
- [2] ささやかな教材研究1 空き時間を利用する
- [3] ささやかな教材研究2 教師の内部情報を豊かにする
- [4] ささやかな教材研究3 100発問作り
- §2 教師の小さな工夫が,生徒の安心につながる
- [1] 授業前の工夫
- [2] 授業中の工夫
- §3 問題集の使い方と覚えるコツを教える
- [1] 小学校と中学校の違い
- [2] テスト勉強の仕方を教える〜問題集〜
- [3] 覚え方のコツを教える
- §4 小さな配慮を組織して,逆転ギャップを生み出す!
- [1] 小さな配慮がたくさん積み重なって1つの授業ができる
- [2] 逆転ギャップ
- §5 「エラーレス」で授業を組み立てる
- [1] まずは机の上を整理させる
- [2] 教科書を使うことで,安心感を持たせる
- [3] エラーレスで授業を組み立てる
- [ 小学校とのギャップをうめるTOSS教材 TOSS実践
- §1 学力補強プリントを使って,学習の仕方を教える
- [1] 学力補強プリント
- [2] 定期テストの前に語句チェック
- [3] 自分でできる重要語句チェック
- [4] 勉強の仕方が身につくと応用が利く
- [5] 大事なところは個別に評定する
- \ 学び方ガイド 誰もが笑顔で取り組む 「家庭学習」を保障する
- §1 優れた学習方法と自主的に学習する態度を身につけさせる
- [1] 自主的な学習を促す
- [2] 自主的な学習を妨げる要素を探る
- [3] 学習の方法を教え,身につけさせる
- §2 シンプルならば取り組める
- [1] 習慣をつける学習システム
- [2] 少しの時間で100点を取る
- [3] 対策プリントがほしいんですけど
- [4] 授業と同じことを家庭学習で
- ] 小学校で抜け落ちた学力を中学校で保障する
- §1 「昭和時代」と漢字で書けない生徒が入学してくる
- [1] 「昭和時代」と書けない生徒が増えている
- [2] 「向山式歴史学習法」が学力向上の出発点である
- [3] せめて自分が住んでいる都道府県名を正しく書けるようにしたい
- [4] 教師が「覚えろ!」と言うだけでは,何も変わらない
- [5] 教室の事実から生まれた指導法を学ぶしかない
- [6] 学力が高い学級は丁寧さが身についている
- あとがき
まえがき
TOSS中学JAPANセミナーの翌日,1通のメールが届いた。
1学期,心が折れそうでした。何をやっても生徒に受け入れてもらえず,先輩教師からも「お前は教師に向いていない」と言われ続けました。頑張れば頑張るほど,結果は望まない方向に進んでいきました。たまたまネットでセミナーの存在を知りました。藁をつかむ思いでJAPANセミナーに参加しました。
「荒れた生徒」への対応の1つ1つに納得しました。授業開始前に指導を終わらせておく。言葉ではなくジェスチャーで指導する。そういった思想が私には皆無でした。たった1日でしたが,元気をいただきました。
心が折れる前に勉強しなければならないことがたくさんあることを知りました。何か,生まれ変われそうな予感です。夏休み,必死に勉強します。今後もご指導ください。
私にも覚えがある。頑張れば頑張るほど,生徒との間の溝が深まっていくという経験。今思えば,生徒指導のイロハを知らなかったのが原因だ。ダメな方法を何度繰り返しても,プラスに向かうことはない。頑張る前に,学んでおかなければならないことがある。若い頃は,情熱さえあれば生徒に伝わると思いこんでいた。すべての失敗は,ここから始まる。
教員1年目,私は1人の生徒の対応に頭を悩ませていた。
彼は入学当初から,私が何かをするたびに「小学校とは違う」「○○先生は,そうしなかった」という言葉を繰り返した。学活の進め方,給食の配膳方法,座席の決め方から教科書の持ち方に至るまで,そうであった。これこそ,「中1ギャップ」である。
私が無視すると,大声を出して教室を走り回った。対応に困り,力で彼をねじ伏せたこともある。手を上げてしまったこともある。当時の私には,手に負えない存在だった。いつも「あいつさえ休んでくれたら,どんなに楽なことか……」と心の底で思っていた。私は,彼の行動を「私への反抗」としてしかとらえることができなかった。
今は違ったとらえ方をする。彼は,中学校入学という環境の変化に不安を感じていたのだろう。彼にとっては「変化=未来への不安」なのである。
指導の第一歩は,そういった彼の不安を丸ごと受け入れることだ。それだけで,「叱る」「怒鳴る」「力で抑える」という選択肢はなくなる。
次に,彼の不安を取り除くことだ。「なぜ,中学校ではそう変わるのか?」「変えることに,どんなメリットがあるのか?」を明確に説明すれば済む。もちろん,「1度で伝わるはずだ」と思わないことだ。
私の説明に納得すれば,彼だって素直に従う。いわゆる,「趣意説明の原則」を最後まで貫くのである。
彼の発言は「不安」を「安心」に変えてくれない私への「心からの要求」だった。そこに気付くのに,私は15年間かかった。同じ思いを,若い教師に味わって欲しくない。そうした壁を一刻でも早く乗り越え,教師修業の王道を歩んでほしい。
以上のような願いから,中学向山型社会研究会のメンバーで本書を執筆した。
「生徒にとって価値ある教師でありたい」と思う同志に読んでいただければ幸いである。
中学向山型社会研究会 /染谷 幸二
この一冊に、子どもが熱中する授業や、一年間の授業システムが満載です。