人権教育を生かした学級づくり4
かず先生のメルマガ通信

人権教育を生かした学級づくり4かず先生のメルマガ通信

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学級に日々起こる問題を心理学から読み解き解決策を模索する。

この本は小学校の先生である著者が、週一回発行したメールマガジンをまとめたものである。多くの子どもたちの事例を紹介しつつ、カウンセリング理論や教育心理学を取り入れながら、子どもたちの気持ちや行動を分析する。


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ISBN:
4-18-012013-5
ジャンル:
人権教育
刊行:
対象:
小学校
仕様:
A5判 148頁
状態:
絶版
出荷:
復刊次第

目次

もくじの詳細表示

まえがき
bP 学級目標「みんなと仲良く」は、やめよう!
なんでこの目標はだめなの?/どんな目標を設定すればいいの?/子どもたちに尋ねよう
bQ けんか両成敗のお説教で終わらず、自己表現のチャンスに!
けんか両成敗は、理屈には合っているけれど……/対人葛藤場面における謝罪行動とは……/自分の気持ちを言えるようにしよう/けんかやトラブルをどう解決するかで、子どもは成長する
bR トラブルのないクラスは、要注意!―いじめは水面下に潜む
トラブルが水面下に潜む現象/なぜトラブルが表面化しないのか……トラブルの被害者側の心理/なぜトラブルが表面化しないのか……トラブルの加害者側の心理/顕在化していくためには、集団の構造変革から
bS 構造変革のための具体策―まずは情報収集!
いじめは氷山の一角/情報収集は個別のカウンセリングをしながら……/学級会を有効に……
bT 構造変革のための具体策―次は学級会!
いじめの構造/自分の行動パターンに気づくように/自分の言葉で発言するために……秘密作戦会議を/力関係の逆転を
bU いじめの解決事例その1……ナツオの場合
ナツオのこと/突破口は……/ボス支配からリーダーへと変貌/いじめの構図と、その根底にある意識
bV いじめの解決事例その2……アキコの場合
アキコのこと/突破口は……/アキコの変化/力関係から、信頼関係へ
bW いじめの解決事例その3……フユオの場合
フユオのこと/フユオの生活背景と心理/いじめられるほうも悪い?/どっちが悪い?/感情を出し合う
bX いじめの解決事例その4……ハルコの場合
ハルコのこと/いじめの集団心理/それぞれの不安/共同幻想の消滅と新たな出発
10 いじめられる子は悪くない
いじめには、正当な理由は存在しない/いじめられている子へのケア/いじめについての意識/仲良し集団の抱える矛盾
11 仲良しグループ内の葛藤に切り込む!―その1
一見仲良しだけど、実は、葛藤を抱えている/それぞれの内的葛藤は/心の揺れは連鎖する/三者の関係性を質的に変えるために
12 仲良しグループ内の葛藤に切り込む!―その2
一見仲良しだけど、実は、三角関係/それぞれの内的葛藤は/それぞれの感情を出す/新たな関係のなかで
13 仲良しグループ内の葛藤に切り込む!―その3
一見仲良しだけど、実は、巧妙な支配関係/グループの力が増すと、教師の指導力が弱まる悪循環/段階的に個々をつないでいく/力の支配関係から脱却
14 仲良しグループ内の葛藤に切り込む!―その4
一見仲良しだけど、実は、巧妙な支配関係/それぞれの立場と思惑/段階的に個々をつないでいく/表面に見えないこと
15 いい友達関係って、どんな関係?―その1
おとなと子どもとの実感のギャップ/同じ気持ちの確認が自己を正当化することに/怒りと孤独感の共有/関係性に迫る
16 いい友達関係って、どんな関係?―その2
お互いの弱さを許し合う三人の関係/学級会で気持ちを出し合う/ユキたちの変貌/自己受容と他者受容
17 いい友達関係って、どんな関係?―その3
行動の意味づけを/ユキとアイリのその後/失敗は成功の元/他者への優しさ
18 いい友達関係って、どんな関係?―その4
問題行動での結びつき/四人のきっかけ/薄氷の上の連帯感/挫折を乗り越えて
19 班は、人間関係を広げ、深めるもの!
班作りの重要性/仲良しグループと班の違い/班の有効性と限界性/班を人間関係作りの学びの場に
20 班での支え合い―課題のある子を中心に(1)
班の決め方/マコトの班は……/マコトの変容、そしてツヨシの変容/友達関係が広がる
21 班での支え合い―課題のある子を中心に(2)
ケンジの班で……/クラスみんなで考える/サトシ、ヨシキの変容、そしてケンジの変容/班長の成長
22 班長の仕事とは?
班長に責任を押し付けない/では、班長の仕事って何?/情報交換の班長会議/班長がピアカウンセラーに
23 班長はピアカウンセラー
サエの場合……/マリエの場合……/支え合いのなかで……
24 クラスを立て直す班長会議
集団全体に秩序がなくなるとき/子どもたちを信じて/秩序の回復に向けて/学年全体に広げる
25 班での支え合いから信頼関係へ
話し合いの形態/トラブルの解決を通して子どもは成長する/閉じられた関係から開かれた関係へ/受容と信頼の友達関係
26 自分の感情を知る
感情はいつから芽生えるのか/感情の分化が基本/キヨシの場合……/不快感情と向き合うことの大切さ
27 「キレやすい」子の怒りの感情と攻撃性
怒りをコントロールできない子/周囲の子どもたちの視線と対応/怒りをコントロールする力をつけるために/ケンタの場合
28 「普通」の子の怒りの感情と攻撃性
「普通」の子の攻撃性/攻撃的な子どもたち/攻撃は心の防衛から/怒りをコントロールする
29 自らの攻撃性をコントロールする
不快感情と向き合う/ユウスケの場合/メグミの場合/感情と行動
30 思いを語り合える関係に
自分を隠す/ユウカの場合……/ミクの場合……/信じて語る
資料 人間関係作りのためのワークシート
あなたなら、どうする? その1/あなたなら、どうする? その2/あなたなら、どうする? その3/自分の感情について知ろう その1/自分の感情について知ろう その2/自分の感情について知ろう その3/自分の感情について知ろう その4/自分の感情について知ろう その5/自分の感情について知ろう その6

はじめに

 この本は、2004年の8月から2005年2月までの期間に、週一回発行したメールマガジン「カウンセリングを生かした 子どものための人間関係作り」を一冊にまとめたものです。本にするにあたって、タイトルを改め、一部加筆修正しました。通常の本のように章立てのある構成にしていませんので、発行号ごとにナンバーで掲載しました。No.1からNo.30までテーマごとに一話完結ですので、興味のあるテーマからどこからでもお読みいただけるのが特徴です。

 なお、本書では、多くの事例を紹介しながら、子どもたちの気持ちや行動を、心理学の視点から読み解きながら、その人間関係のあり方について考察しています。私が20年以上にわたって、小学校教員を勤めてきたなかで出会ったさまざまなタイプの子どもたちを事例として挙げていますが、プライバシーに配慮し、いくつかの事象を組み合わせたり、一部を変えて構成したものです。子どもの名前もすべて仮名です。

 子どもたちをめぐる状況は、年々、深刻さを増しているように感じます。ニュースで時折報じられる痛ましい子どもの事件でもそうですが、私が運営・管理している「松下一世の人権教育のページ」というサイトの子どもの掲示板への書き込みからも「いじめ」「友達とのトラブル」「親との関係」「先生との関係」「虐待」など、多くの問題を抱えて悩み傷ついている子どもの心の叫びが聞こえてきます。とりわけ、いじめに象徴される人間関係のひずみは、子どもたち自身を傷つけています。たとえ、いじめられていなくても、一人ぼっちになりたくないという不安、どうしたら友達とうまくやっていけるのかという悩みを抱えている子どもたちは限りなく多くいます。そういった不安や悩みは、時として、他者に対して攻撃的になったり、自分を追い詰めたりしてしまいます。

 私たち教師は、そんな子どもたちに、友達を作る力をつけ、他者と対等につながること、他者と心を通わせることのすばらしさを体験してほしいと願っています。どの子にも、思いやりのある人に育ってほしいと願いながら、日々奮闘している教師はたくさんいます。しかしながら、一人一人の子どもと対話するゆとりがないほどに教育現場は、めまぐるしく、また、子どもたちの抱える課題は大きく深刻です。

 教師の心身症は年々増え続け、2003年度に休職した教師の数は、3000人を越しています。短期通院者を入れると、おそらくその何倍もの数になることでしょう。

 私自身も、なぜ子どもたちがこんなに荒れるのか、傷つけ合うのか、なぜ思いが通じないのか、どうすれば子どもの心に言葉が届くのか、と自問しながら、ずいぶん悩みました。そんなとき、子どもたちの優しさに助けられたり、また保護者の思いに触れることで励まされたり、同僚の温かさに支えられてきました。

 そして、カウンセリング理論や教育心理学、臨床心理学を取り入れながら、子どもたちの気持ちや行動を分析していくことで、子どもたち自身が豊かな人間関係作りの力をつけていくための道すじを模索してきました。学校関係向けの心理学の書物としては、理論や調査報告から、最近は、カウンセリング方法、不登校やADHDなどの子どもに対する関わり方、また人間関係作りのトレーニングなど幅広くあります。こういったものに学びながら、この本では、教師として、日々求められる日常の多くの課題を取り上げています。この本は、子どもたちの危機を救うための「魔法の呪文」では決してありません。教育に即効的な成果はなかなか望めません。一人一人に寄り添い、長い目で見守るということしかできません。この本を、教育に関心を寄せるさまざまな立場の皆様に読んでいただき、子どもたちの課題を共有し、ともに解決策をさぐることができれば、うれしく思います。


  2005年4月   /松下 一世

著者紹介

松下 一世(まつした かずよ)著書を検索»

1956年,高知市で生まれる。1978年,大阪教育大学小学校課程社会学科卒業。1978年より,小学校教師。1997年,大阪教育大学修士課程教育学修了

現在,大阪府内の小学校勤務

※この情報は、本書が刊行された当時の奥付の記載内容に基づいて作成されています。
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