- まえがき
- T リニューアル附属新潟式「学級力」
- T 「附属新潟式学級力」の考え方(理論編)
- 1学級力の考え方
- (1)「よい授業」づくりの要件とは
- (2)学級を見る窓=「学級力」
- (3)「学級力」で「学級経営」が変わる
- (4)自分の学級の「学級力」をどう評価するか
- (5)「学級力」をどう高めるか
- (6)全校体制で取り組むことの価値
- U 「附属新潟式学級力」のできるまで(理論編)―「学級力指標」自校化の取組―
- 1「学級力指標」自校化の方針
- 2「学級力指標」改善の具体的な手順
- (1)「大切にしたい力」アンケートによる項目の絞り込み
- (2)子どもにとってイメージしやすい項目名に変更
- (3)「学級力アンケート」項目の見直し
- V RPDCAサイクルとスマイルミーティング(理論編)
- 1 学級力を高めるための二つのシステム
- 2 子どもの学級に対する所属意識を高めるためのシステム〜RPDCAサイクル〜
- 3 RPDCAサイクルはどのように進めるの?
- 4 RPDCAサイクルをより効果的にするために
- 5 教師が様々な状況に対する方策を知るための情報交換システム〜スマイルミーティング〜
- 6 スマイルミーティングは教師同士が笑顔になる場!
- 7 学級力が高まっていくと……
- 【コラム】管理職から見た「附属新潟式学級力」育成の取組
- U 「学級力」で,子どもが授業がこう変わる
- 【低学年の事例】
- C.協調維持力A互いに助け合う
- ○2年・生活科「日本海へこぎだそう」
- ・CCT:「お絵かきリレー」で,互いに助け合う力を育む
- ・生活科の授業:海で遊ぶための船を協力してつくる
- 【中学年の事例】
- A.目標達成力@目標をたてる
- ○3年・理科「実験の見通しを発表しよう」
- ・CCT:「目標リレー」を行おう
- ・理科の授業:実験の見通しを発表しよう
- ・CCT:9月の取組を振り返ろう
- 【高学年の事例】
- C.協調維持力@学級を楽しくする
- ○6年・社会科「『長篠の戦い』における信長の戦い方を説明しよう」
- ・CCT:レーダーチャートを使って学級の改善策を話し合う
- ・CCT:「ハイ,ポーズ」で,友達と共同しながら表現する
- ・社会科の授業:友達と共同しながら信長の足軽鉄砲隊を説明する
- 【コラム】「附属新潟式学級力」はここがすごい!
- V 「学級力」をこう育て,授業で発揮させる
- 【低学年の事例】
- ○1年・音楽科「めざせ,にじいろのうたごえ」―A.目標達成力@目標をたてる―
- ・CCT:「わたしたちの,今日の目標はこれです」
- ・音楽科の授業:にじいろのうたごえを目指して班でできることを話し合う
- ○2年・国語科「あったらいいなこんなものお披露目会」―A.目標達成力A評価する―
- ・CCT:「ほめほめさくせん」で,友達のよさに目を向けさせる
- ・国語科の授業:あったらいいなこんなものお披露目会で認め合う
- ○低学年・算数科「くりあがりのあるたしざん」―B.創造的対話力@話をつなげる―
- ・CCT:「気持ちのよいあいさつをするため」の話し合い
- ・算数科の授業:たし算の学習で
- ○1年・図画工作科「1枚の紙から」―B.創造的対話力A新たな考えをつくる―
- ・CCT:「アートカードゲーム」で,新たな考えを出し合う
- ・図画工作科の授業:「1枚の紙から」で,見立てたことを発表し合う
- ○2年・学級活動「CCTのミニ集会とお店(係)活動で学級をもっと楽しく!」―C.協調維持力@学級を楽しくする―
- ・CCT:「10分間のミニ集会で楽しく遊ぼう」
- ・学級活動の授業:「お店活動」でもっと楽しい学級をつくろう
- ○1年・学級活動「係活動を決めよう」―D.規律遵守力@生活のきまりを守る―
- ・CCT:生活目標を守るための「めあてと振り返り」をさせる
- ・学級活動の授業:「係活動を決めよう」で,係活動の意味を考えさせる
- ○1年・国語科「じどう車くらべ」―D.規律遵守力A学習の約束を守る―
- ・CCT:「ハンドサイン名人」を目指そう
- ・国語科の授業:「じどう車くらべ」を読み深める
- 【中学年の事例】
- ○3年・体育科「マットマスターをめざせV」―A.目標達成力A評価する―
- ・CCT:「長縄マスターをめざせ」で友達の動きに目を向けさせる
- ・体育科の授業:友達の動きの改善点や高まりをとらえさせる
- ○中学年・総合「課題解決の方法はこれだ」―B.創造的対話力@話をつなげる―
- ・CCT:「こんなときどうする」
- ・虹の輪タイムの授業:課題解決活動を考える
- ○4年・社会科「ごみゼロ作戦」を話し合おう―B.創造的対話力A新たな考えをつくる―
- ・CCT:「401リング」で,新たな解決策を出し合う
- ・社会科の授業:ごみ問題を解決する新たなアイデアを出し合う
- ○3年・国語科「おもしろ漢字を発表しよう」―C.協調維持力@学級を楽しくする―
- ・CCT:「附属テレビショッピング」で意外なものを販売!
- ・国語科の授業:「おもしろ漢字,大発明!」で新漢字を提案
- ○4年・道徳「自分や友達のよい所を見付けよう」―C.協調維持力A互いに助け合う―
- ・CCT:「互いに助け合う」学級力を高めるために,友達と協力するゲームで,互いに助け合う体験をしよう
- ・道徳の授業:自分や友達のよい所を見付けよう
- ○4年・総合「つくろう!ネイチャーゲーム」―D.規律遵守力@生活のきまりを守る―
- ・CCT:「401会社イベント」で必要なきまりを出し合う
- ・総合の授業:ネイチャーゲームを計画し,きまりを守らせる
- ○4年・理科「落ち着いて観察や実験を行う子ども」―D.規律遵守力A学習の約束を守る―
- ・CCT:学級で守りたい「学習の約束」を話し合う
- ・理科の授業:「学習の約束」を守る!
- 【高学年の事例】
- ○5年・体育科「みんなのゴールを決めよう」―A.目標達成力@目標をたてる―
- ・CCT:「5-2向上作戦」で,今週のめあてを話し合う
- ・体育科の授業:持久走における学級の目標を話し合う
- ○5年・算数科「解決方法のどこがいいかな?」―A.目標達成力A評価する―
- ・CCT:「5年1組ハイ,チーズ」で表現方法を評価し合う
- ・算数科の授業:「解決方法のどこがよいかな」でコメントし合う
- ○6年・算数科「友達の考えを理解し合おう」―B.創造的対話力@話をつなげる―
- ・CCT:「6の1学級改善計画」を立てよう
- ・算数科の授業:他者説明で意味を共有させる
- ○5年・総合「演劇をつくろう」―B.創造的対話力A新たな考えをつくる―
- ・CCT:「おでこのメガネ」で,新たな価値に気付く
- ・総合の授業:学級で取り組む演劇の題材を決めよう
- ○5年・外国語活動「ALTに協力して伝えよう」―C.協調維持力A互いに助け合う―
- ・CCT:「Yamanote Line Game」で,互いに助け合うよさを再認識する
- ・外国語活動の授業:互いに助け合い,ALTに夏休みの出来事を伝える
- ○高学年・図画工作科「ポスターをかこう」―D.規律遵守力@生活のきまりを守る―
- ・CCT:「私たちの生活を見直そう」ミーティング
- ・図画工作科の授業:ポスターをかこう!
- W 「学級力」ツールボックス
- 学級力導入のポイントQ&A
- Q1 学級力を導入する上でズバリ必要な考え方とは?
- Q2 学級力のアンケートはどのように実施するとよいのですか?
- Q3 学級力を高める活動はどのように決めるとよいのですか?
- Q4 振り返りはどのようにしているのですか?
- Q5 学級力とQ―Uの違いは何ですか?
- 「CCTメソッドの覚え書き」例
- 学級力アンケート
- 学級力算出ソフト「一級算」
- あとがき
- 附属新潟小学校研究同人
まえがき
中央教育審議会は,平成20年1月答申において次の7項目の柱を掲げ,学習指導要領改善の方向を示しました。
@改正教育基本法等を踏まえた学習指導要領改訂
A「生きる力」という理念の共有
B基礎的・基本的な知識・技能の習得
C思考力・判断力・表現力等の育成
D確かな学力を確立するために必要な授業時数の確保
E学習意欲の向上や学習習慣の確立
F豊かな心や健やかな体の育成のための指導の充実
平成23年4月から全面実施された新学習指導要領は,まさにこの考え方を具体化するものとなっています。
附属新潟小学校においては,この改正学習指導要領の趣旨を先取りする形で,前次研究「子どもが学ぶことに価値を見いだす教育課程の編成」(平成19〜21年度)を実施し,新たな教育課程の編成を探求してきました。昨年度から始まった今次研究「創造的思考力を高める授業」ではさらに一歩踏み込んで,子どもたちのクリエイティブ・シンキングに関する能力を高める学習指導法の確立を目指しています。
しかし,一口に「創造的思考力を高める授業」といっても,それは一朝一夕に成るものではありません。そこで私たちは,改めて「よりよい授業づくり」にはまず何が必須かを考え,当校が10年前から取り組んできた,よりよい学びを支える技能「学習スキル」の定着を図るほかに,子どもたちがお互いに認め合い高め合う「学級力」の育成が不可欠だと考えるに至りました。「学級力」とは,早稲田大学の田中博之教授が提唱された「総合学級力」から示唆を得たものです。私たちはこれに修正を加え,「附属新潟式学級力」を生み出しました。「目標達成力」,「創造的対話力」,「協調維持力」,「規律遵守力」という4領域のそれぞれ2項目,合計8項目について子どもたちに毎月アンケートを実施し,これをレーダーチャート式のグラフにまとめることで,当該学級の「学級力」を分析的に明示できるようになっています。教師はもとより,子どもたち自身が自らの学級を分析的に眺めることができる,言わば学級の「窓」としての機能を果たしており,しかも私たちはその結果を学校全体で共有しているのです。
従来,このような考え方は「学級経営」という単語で一括りにされていました。「学級経営」は,新学習指導要領においても,「日ごろから学級経営の充実を図り,教師と児童の信頼関係及び児童相互の人間関係を育てるとともに児童理解を深め,生徒指導の充実を図ること」と記述されるように,極めて重要な事柄であることは言うまでもありません。しかし,これまでは「学級経営」というネーミングに示されるように,学級担任による学級の「経営」として,あくまでも教師サイドに立った見方が中心だったように思われます。しかも,特に小学校においては,「学級経営」は当該学級の担任一人に任せきりという状況になりがちでしたから,なかなか学校全体の有機的で組織的な「経営」にまで結び付くことはありませんでした。
私たちはこのような現状への反省にもとづき,むしろ子どもたちを中心に据えた「学級力」の育成こそが,「よりよい授業づくり」の根底をなすものだと考えたのです。そして,学校を形成するそれぞれの「学級力」が結集すれば,それはそのまま「学校力」の向上へと直結すると考えたのです。
本書をぜひご一読くださり,私たちの「附属新潟式学級力」についてご理解いただくとともに,それに対する忌憚のないご意見をたまわれば幸甚です。
最後になりましたが,本書の出版をお勧めくださいました明治図書の江部満様に対し,重ねて深謝申し上げる次第です。
平成24年1月 新潟大学教育学部附属新潟小学校 校長 /鈴木 恵
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- 明治図書