- はじめに
- T 子どもウオッチング
- ──どこに目をつけるか
- 一 子どもを見る目を確かにするには
- 1 先入観をもって子どもを見る
- 2 「驚き」をもって子どもを見る
- 3 子どもの声を聞きわける
- 4 子どもの目の輝きと活動内容を見る
- 二 子どもを取りまく環境の変化
- 1 子どもの長所を見つけて伸ばす
- 2 子どもを見直す――壮大な実験「トライやる・ウィーク」
- 3 保護者から感謝状をもらった先生
- 三 子どもに自分理解を深めさせるには
- 1 自分理解はむずかしい
- 2 「自分さがしの旅」とは?
- 3 自分理解を深める場面
- U 総合的学習における子どもウオッチング法
- 一 新しい世界が見えているか
- 1 身近な事例から世界まで発展させているか
- 2 目からウロコの落ちる事実と出会えているか
- 3 無知に気づき追究意欲が高まっているか
- 4 追究していくうちに新しいものが見えるようになっているか
- 5 偶然に「はてな?」に出会うことがあるか
- 6 「本当にやりたいこと」が見えているか
- 7 自分にできることは何かが見えているか
- 8 自分で創意工夫できる面白さに気づいているか
- 二 調べ方を工夫しているか
- 1 自分で問題解決できる面白さに気づいているか
- 2 教科で学んだことを応用できているか
- 3 調べ方を自分で決められるか
- 4 異学年の子どもと楽しく活動できるか
- 5 幼児やお年寄りとも楽しく活動できるか
- 6 グループをつくって調べられるか
- 7 校外へ出て調べられるか
- 三 追究する面白さがわかっているか
- 1 困難に出会いそれを乗り越えることができるか
- 2 教師が先回りして教えないことに喜びをもっているか
- 3 追究しても追究しても正解のない面白さに気づいているか
- 4 追究のスリルを楽しんでいるか
- 5 三振もするがホームランも打てる力があるか
- 6 作って食べて認識のかわる面白さを体得しているか
- 7 自分で学習材を開発できる面白さに気づいているか
- 8 他人と共に追究できるか
- 9 追究すると次々と発展する面白さに気づいているか
- 四 生き方を深めているか
- 1 好奇心をもつことの面白さに気づいているか
- 2 学習したことを生活に生かしているか
- 3 生活そのものが追究的になっているか
- 4 知識や学習技能がいつの間にか身についているか
- 5 目的をもってやりたいことができるようになっているか
- 6 他人のためにつくしている人に出会うことを楽しんでいるか
- 7 自分の仕事に打ち込んでいる人に出会って感動しているか
- 8 いろんな生き方をしている人に出会うことを楽しんでいるか
- 9 自分の成長を自覚できるようになっているか
- V 子どもの指導技術入門
- 1 授業構成のイロハ
- 2 子どもの学び方をつくる
- 3 授業における表情の読みとり
- 4 発問の良否の見分け方
- 5 集団を統率する技術
- 6 発言できない子の指導法
- 7 技術としてほめるのではなく本音でほめる
- W 問題のある子の指導入門(1)
- 1 集団行動のとれない子の指導
- 2 自主性の乏しい子の指導
- 3 公私の場を混同する子どもの指導
- 4 子どものストレス解消策
- 5 変わっている子の指導
- 6 みだれた字を書く子の指導
- 7 食べ物の好き嫌いの多い子の指導
- X 問題のある子の指導入門(2)
- 1 「笑いの少ない子」の指導
- 2 クラスの正義感を育てる指導
- 3 「ひねくれた子」の指導
- 4 「真面目さの足りない子」の指導
- 5 「不登校気味の子」の指導
- 6 「のりやすい子」の指導
- 7 「根気のない子」の指導
- 8 「グループをつくりたがる子」の指導
- 9 「キレやすい子」の指導
- 10 「異性意識の強すぎる子」の指導
- 11 「自分はダメだという子」の指導
はじめに
「おはようございます」という子どもの声を聞いて、その子の心身の状況を判断できるだろうか?
真のプロ教師は、子どもの声を聞いただけで、心身の状況をたちどころに判断できるという。「今日は、元気はつらつだな」とか、「ちょっとおかしいぞ。家で何かあったな」とか、「体調がよくないようだ。どこが悪いのだろう?」などと判断できるというのである。
このような真のプロになるには、ふだんから一人ひとりの子どもをよくウオッチングして、頭に入れておく必要がある。
ところが、今、「子どもが見えない」という教師が多い。時代が変わり、社会の状況が変わって、子どもも大きく変化しており、今までの子どものとらえ方では見えなくなっている。新しい子どもウオッチング術が必要になっている。
「子どものどこに目をつけて、どのようにウオッチングしたら子どもが見えるのか」ということを、総合的学習に焦点をあてて提案してみようとしたのが本書のねらいである。
新しく設定された総合的学習では、生活科以上に子どもが見えにくい。授業を見ても、個やグループでテーマを追究していて、全体としては何をしているのかわからないことが多い。個やグループの追究も、どこまで深化しているのか見えにくい。
そこで、「新しい世界が見えているか」「調べ方を工夫しているか」「追究する面白さがわかっているか」「生き方を深めているか」という四つの窓(めがねになるもの)を設定し、この窓から子どもウオッチングしたらよいのではないかと考えた。この四つの大きな窓だけでは見えにくいので、より具体的な33の視点を提案した。この視点で子どもウオッチングすれば、子どもの動きが見えるはずである。
例えば、「身近な事例から世界まで発展させているか」という視点で、子どもの追究をウオッチングすれば、その程度がわかる。「世界どころか、日本へも広げきれないでいる」とか、「今、ようやく日本へ広げたところだな」とか、「もう世界へ広げかけているな」というように、評価もできる。つまり、子どもの追究の程度が具体的に見えるのである。
調べ方にしても、「自分で問題解決できる面白さに気づいているか」とか、「教科で学んだことを応用できているか」といった視点で子どもの追究をウオッチングすれば、調べ方を工夫しているかどうか判断できる。
つまり、「子どもウオッチング術」は、子どもの状況を的確に把握し、同時に評価もできるものでなくてはならない。本書は、このことを明らかにしようとしたものである。
明治図書の雑誌『子ども文化フォーラム』bTに、「総合的学習のための子どもウオッチング――どこに目をつけるか」というわずか一ページの文を書いた。この文が江部編集長の目に止まり、「一冊にまとめるように」といわれ、一気に書きおろしたのが本書である。江部編集長に厚くお礼を申し上げたい。ありがとうございました。
2000年7月吉日 /有田 和正
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