- 附属小学校研究成果の刊行によせて
- /加治佐 哲也
- まえがき
- /田中 雅和
- 学びをつなぐカリキュラムへの挑戦
- 国語科
- ■第5学年の実践
- 論語の世界を広げよう(光村図書5年「論語」など)
- 社会科
- ■第3学年の実践
- 学校の周りを調べよう〜学校の周りの「はてな」を見つけよう〜
- ■第5学年の実践
- わたしたちの生活と情報〜情報を読み解こう〜
- 算数科
- ■第4学年の実践
- 面積ブックをつくろう〜かく活動を活かす〜
- ■第5学年の実践
- 割合で比べよう
- 理科
- ■第3学年の実践
- 物の重さ
- ■第5学年の実践
- ふりこザイルをつくろう〜ふりこのきまり〜
- 生活科
- ■第1学年の実践
- 「あめのひ」でもたのしめるわくわくらんどにしよう〜授業記録から分かる子どもたちの気付き〜
- ■第2学年の実践
- やさいのいのちをかんじよう!〜「いのち」をテーマにしたカリキュラムを探る〜
- 音楽科
- ■第5学年の実践
- 作曲パズルに挑戦しよう〜器楽教材「星笛」を通して楽曲の構成を探る〜
- 図画工作科
- ■第2学年の実践
- モンスターフィッシュがやってくる!〜土粘土を使った立体表現〜
- ■第6学年の実践
- 光と影のアート〜立体造形影の造形〜
- 体育科
- ■第2学年の実践
- タッチして逃げろ!タッチさせてタックル!「カバディ」を楽しもう!(ゲーム領域:鬼遊び)
- ■第3学年の実践
- 走ってパスしてシュートを決めよう!(ゲーム領域:ラグポートボール)
- ■第5・6学年の実践
- 平泳ぎから臨海合宿までの道のり
- 道徳
- ■第4学年の実践
- 目標に向かってねばり強く
- 英語学習
- ■第1学年の実践
- FUKUWARAI!〜友だちとコミュニケーションを図る楽しさを目指して〜
- あとがき
- /真崎 克彦
- 執筆者一覧
まえがき
兵庫教育大学附属小学校長 /田中 雅和
研究主題を「『自己を形づくる』学校の構築」としてから3年目の今年は,「学びをつなぐカリキュラムづくり」を副主題として,研究・実践を進めてきた。「自己を形づくる」ためには,子どもが自ら学ぶ意味や価値を認識し,主体的・意欲的に学ぶ姿勢を身につける必要があると考え,その視点からこれまで研究・実践を展開してきた。子どもがよりよく「自己を形づくる」学び手となるよう,教師・子ども・教材の三者の「関係性」を重視し,同時に子どもの「学び」と教師の「教え」との関係を見つめ,あるべき教師の指導性とは何かを問い続けてきた。本書は,これまでのこのような研究を受けて,「学びをつなぐこと」とカリキュラム研究に視点をおいた研究・実践,授業づくりやカリキュラムづくりの試みを,まとめたものである。
子どもの「学びをつなぐ」ためには,各教科等や諸活動の教育活動全体を通した横断的なつながり,初等教育課程全般の学年進行を見通した縦断的なつながり,さらにはその先の教育課程までを視野に入れた系統的で体系的なつながりを,教師の側が,有機的な関連をもって連続するように意識し,意図的・積極的に「教え」,「学び」と調和させることが必要になろう。だからこそ,教育活動や教育へのアプローチ全般を考えるという意味で,「カリキュラム研究」を見つめ直すことが重要になる。本校の教員が目指しているのは,「人間として生き抜く力」を養い,「人格の完成」に迫るために,有効で望ましい「学びをつなぐカリキュラム」とはいかなるものかを検討・考察することである。ここで言う「カリキュラム」は広義にとらえた場合のものであり,「学び」の内容についても広範囲にわたる議論が想定されている。
広範囲の視点による議論は本論に譲ることにして,今はひとまず,小学校における「学びをつなぐ」ことの意味を,あえて少々狭めて考えてみたい。
小学校では基本的にクラス担任が,学校生活の全般に密接にかかわり,全ての教科等を指導するという形態をとる。中学校以降の教科担任制とは異なるこの特徴が,「学びをつなぐ」ことを有効に機能させるために,大きな利点になることは,余り自覚も意識もされていないように感じられる。クラス担任が全てにかかわるからこそ,教師の意図的な「学びをつなぐ」仕掛けが可能になる。例えば,各教科担任が他教科にかかわる内容に触れる場合,子どもは感覚的に異質な世界(別教科)の内容と見なすこともあろうが,同一人物(担任)が扱う内容ならば,感覚的にも連続性をもったものとして受け入れ易いはずだからである。
初等教育における学習や学力の育成に求められるのは,基礎・基本に裏打ちされた思考力・判断力・表現力等(確かな学力)を身につけることである。その学習は,単に各教科において個別の知識を獲得させること(記憶させること)ではないが,基礎・基本の知識は記憶の必要もある。しかし,理屈もなく鵜呑みにする丸暗記の記憶は定着しない。一方で,しっかりした理解に基づく記憶は体系性をもって安定した使える知恵にもなり,記憶が定着することによって理解は一層深まる。そのために,「学びをつなぐ」こと,随所で繰り返し「学び」を確認・関連させることが重要になる。「学ぶ」「考える」ということは既得の知識をつなげてネットワーク化することと言えるが,クラス担任制という形態は「学びをつなぐ」活動を有機的に関連づけるのに有効に機能し得る次第である。
本書では,子どもにとっての「学びがつながる」という意味を問い直し,「学びをつなぐ」ための教師の手だてを探り,カリキュラムにおける「学びのつながり」を見出すことを試みる。本書が,各方面からのご教示やご批正をいただきながら,望ましい教育活動の推進に資するものとならんことを祈念する。
最後に,これまでの実践・研究を支え,長くご指導・ご支援やご尽力を賜った諸先生方と明治図書の関係諸氏,また,ともに考える教育の場を築いてくれる素直で明るい本校の子どもたちに,心から感謝いたします。
-
- 明治図書