家庭教育ツーウェイ 2006年11月号
こんなに違う男の子、女の子の対応術

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家庭教育ツーウェイ 2006年11月号こんなに違う男の子、女の子の対応術

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ジャンル:
その他教育
刊行:
2006年10月6日
対象:
幼・小
仕様:
B5判 80頁
状態:
絶版
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目次

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特集 こんなに違う男の子、女の子の対応術
男の子も女の子も、それぞれにすばらしい
向山 洋一
男の子、女の子の育て方
男子の「女性化」を阻止しよう
明石 要一
問題児は親が作る〜父母が理解しあっている家庭で育つ子は幸せ〜
波多野 ミキ
実感 男の子と女の子はこんなに違った
違いにびっくり!それぞれに合った言葉かけがある。
伴 佳代
男の子には手をかけて、女の子には目をかけて
勇 和代
TOSS式子ども調査が教える男の子、女の子の違い
@何をしている時が楽しいか
父親は、ここ一番で逃げない
吉川 廣二
男の子と女の子のよさ(特性)
佐藤 琢朗
A友だちは何人いるか
友だちの数は遊びと深い関係がある
八和田 清秀
「たくさん」の男の子、「少人数」の女の子
小倉 郁美
Bプレゼントに何がほしいか
男女ともゲーム機がトップ
山 佳己
思い出に残るプレゼントを
浜井 俊洋
C昨日テレビゲームをどれだけしたか
使用時間を守らせ、遊びや趣味を広げてやる
大野木 一雄
家からテレビがなくなった!
奥 清二郎
D家の人とどんな時話すか
じっくり型の女の子と、〜ながら型の男の子
小野 隆行
「食事」の時間を大切に「話題」を選んで
雨宮 久
E年賀状を何枚出すか
年賀状を出すのを面倒がる男の子。「書く文化」の復活が、必要である
廣野 毅
女子は相談をして年賀状を出す子が多い
迫田 一弘
小学校3年生から変わり始める
頭ごなしに修正しようとおもわずに、変化は成長と見る
石川 裕美
紳士・淑女として接することも大切です
山西 浩文
女の子の文化、男の子の文化
五色百人一首は男女を仲良くする。「限度がある」ことの大切さを教える。
木村 孝康
男女ともに楽しめる紙の文化「おりがみ」
楢原 八恵美
男の子の事件簿
初期の「万引き」は、教育のチャンス!
甲本 卓司
事件は起きる―愛情をもって本気でしかれ―
三木 美子
女の子の事件簿
自分の思いを伝える機会をもうける
舛田 安生
女の子は褒めて褒めて育てる 不公平感をのこす叱り方はしない
ミニ特集 学校が楽しいと言える子の育ち方―八時就寝、「おはよう」のあいさつ、家族そろって朝ごはん
親に温かく大切に育てられた子が「学校が楽しい」という。
向山 洋一
十分な睡眠と家族との会話
松垣 和年
八時就寝でプラスの方向に循環させる。そこには、親の努力が必要である。
東田 昌樹
「早く起きなさい」のイライラ声よりスキンシップ
星原 一宏
自分が安心できる居場所のある家庭
山下 理恵
自分の生活を自慢したくてたまらない子どもであってほしい
近藤 滋子
今月の名言・格言・ことわざ (第8回)
喧嘩両成敗
岩野 節男岩野 紀子
向山編集長が語る「今月の名言・格言・ことわざ」 (第8回)
喧嘩両成敗
向山 洋一
〜けんか両成敗は日本人の知恵です。〜
編集前記
師尾 喜代子
子どもTOSSデーのドラマ
北海道/いただいた言葉にやった教師が涙する
水野 正司
福島/理科の人気がダントツ二番手は五色百人一首
大堀 真
全国各地にTOSS式子ども地域教室を!
保護者と一緒に作る「子どもTOSSデー」
寺田 真紀子
幼児のドラマ、小1のドラマ、小2のドラマ
幼児/銭湯と百玉そろばん
細谷 華世子
小1/ことわざで、朝のスタートが気持ちよく、クラスが知的に!
北山 広子
小2/五色百人一首がドラマを作る!
高谷 圭子
小3のドラマ、小4のドラマ、小5のドラマ、小6のドラマ
小3/「五色百人一首」は、子どものやる気を引き出す魔法のアイテム
小田 哲也
小4/だれでもできるなぞり学習
星原 一宏
小5/学級十名で、原稿用紙トータル一一九枚達成!
東田 昌樹
小6/子どもの集中力を生んだ五色百人一首
小野 一豊
礼法専門家から見た子どもたちの立ち居振る舞い
型を学ぶことの心地よさを伝えてくれる和装礼法
山口 美智子
つぶやきに見る子どもの成長
つぶやきに学ぶ
水野 茂一
〜負うた子に教えられる・心を広く〜
シングルエイジ時代(0〜9歳)教育のポイント
「させる」と「したい」
水野 美保
TOSS学生奮戦記
保護者の方を応援したい!軽度発達障害児余暇支援活動「PASPORT」
小嶋 悠紀
SOS 子ども・親が電話相談をする時
シャキッとしなくて困る
波多野 ミキ
保健室から1ページ
保健室の先生の得意技「触れる」は、安心感を与えます!
松島 裕美
こんなときどうする?平山先生!
今すべき事を後回しにしない方法は?/指吸いをやめる方法は?
平山 諭赤木 雅美
子育て日本の教育「貝原益軒・細井平洲・森信三」
教育は菊作りのようにしてはいけない。野菜や大根を作るようにすべきだ。
松藤 司
藍川メソッド・音楽教育“常識”の間違い
本歌取り
藍川 由美
食育・親子で楽しく・ここがポイント
朝食を「きちんと」食べさせていますか
並木 孝樹
キャリア教育のポイント
幼児期からの「しつけ三原則」は、キャリア教育の土台です。
太田 輝昭
数字で見る子どもの姿
中学一年生の姿が見えますか
明石 要一
中学から見た基礎基本
勉強ができる生徒に共通していることは?
大北 修一
教師・読者座談会 (第20回)
親として楽しく食育をしましょう!
山西 浩文
親子で挑戦ペーパーチャレラン
計算タイルチャレラン
伊藤 亮介
親子でたいそう
くぐって遊ぼう!!
村田 斎
親子で漢字文化ワーク (第20回)
神谷先生・辻野先生の漢字文化教室
神谷 祐子辻野 裕美
ライフスキル教育
クレジットカードの利用五ヵ条(金融教育)
細羽 正巳
最前線・英語教育
英語を話せる子どもたちを育てるTOSS英会話
佐藤 泰弘
最前線・インターネット教育
便利なインターネットにひそむ影
瀧口 泰広
母親ネットワーク
『家庭教育ツーウェイ』を是非、PTA図書に!
西岡 美香
校長が語るこれからの学校教育
家庭・学校・地域の役割分担が明確になる
大森 修
読者のページ
編集部ニュース
現代っ子アンケート・子どもインタビュー
インターネットを使った授業面白いですか?
平田 淳
TOSSインターネットランドで勉強しよう!
50音チャレンジャー
寒河江 恒太鈴木 恭子

こんなに違う男の子、女の子の対応術

男の子も女の子も、それぞれにすばらしい

向山洋一

本誌編集長/日本教育技術学会会長/千葉大学非常勤講師

無料の世界最大の教育情報サイト、インターネットランド主宰

TOSS(会員1万名の教師の研究団体)代表


 小学校に入学した頃は、男の子と女の子の違いはありません。

 しかし、小学校二年の三学期から、三年生にかけて、大きな変化が生まれます。

 教師の世界では、「国語の教科書を声をあわせて何回も読むのは、小学校三年生一学期まで」と言われてきました。

 小学校の低学年の時には、声をあわせて教科書を何回も読みます。

 何回も読むうちに、上手になってきますし、読み方のリズムも身についてきます。

 しかし、この指導法は低学年のうちなのです。

 もちろん、高学年でも声をあわせて読む時はありますが、それは最初の一回くらいなのです。

 三年生になると、個性が強く出てきます。また、気のあった仲間をもとめます。

 「ギャングエイジ」といわれるほど、「自分達の群れ」を作るのです。

 個人差(個性)が芽生えてくるだけではありません。男の子、女の子の違いも生まれてきます。

 はっきり分かるのは、お年玉などの小遣いの使い道です。

 昔、田園調布地区十一の小学校で調査をしたことがありますが、はっきりと違いが出ました。

 低学年の頃は、男の子も女の子も「おもちゃ」が主流です。おもちゃ屋へ行きます。

 しかし、二年生から三年生にかけて、女の子の行く場所は「文房具屋」に変化します。

 文房具を買うのではありません。

 ファンシー商品を買うようになるのです。

 男の子はチャンバラ、女の子はおしゃれという感じでしょうか。

 このような変化を考えると、小学校一年生の頃から「生き方のキーワード」を、一つか二つ、折にふれて話すことが大切だと思います。

 男の子なら「何にでも挑戦する」ということでしょうか。あるいは「約束を守る」ということでしょうか。

 女の子なら「人に優しい」ということでしょうか。

 これは、ご両親の我が子への想いから出てくることばだと思います。

 何かのエピソードをまじえながら話してあげるといいと思います。子どもの一生の宝となります。

 私が小学校二年生の担任をしていたときの学校通信から「男の子」と「女の子」のすばらしさを紹介します。

 遠足に行って、ドッジボールしていたところ、ボールが川に落ちてしまった事件です。

***

 サッカーボールは流れていった

 全校遠足の二年生の目的地は田園調布の先、多摩川河原の少年野球場と隣接の公園だった。荷物を置いた子供たちは広々とした場所で、それぞれに遊び始めた。ダンボールを使っての土手の草スキー、なわとびなどに人気があった。わがクラスの男の子で三人ほどサッカーボールを持ってきた子がいた。だから男の子の多くはサッカーで遊んでいた。

 かくして一時間、担任もそれぞれの遊びの中に入った。小方先生は草スキー、西川先生はなわとび、私はサッカーボールを使ってのドッジボール。

 少年野球場の片隅に、雨つぶ形のラインがひいてあった。まん中にひろってきた棒を置いて、ドッジボールのコートとした。

 太っているコートが女の子のコート、やせているコートが男の子のコートであった。

 クラスの半分くらいの子供たちで始めたドッジボールも、三十分もやっているうちに人間が集まってきて、クラスの三分の二くらいの子供たちにふえた。私も、女の子のチームに入って遊んでいた。

 ところが、ある時、ボールが男の子の守っていた外野をぬけてコロコロころがっていった。男の子たちは夢中で追いかけたが、川辺りの斜面をころがって川に飛び込んでしまった。勢いがついていたため、川辺りから七、八mも遠くへ行ってしまった。

 とても、届かない。石をボールの向こう側に投げて、もどそうとしたがうまくいかなかった。ボールは、ゆっくりゆっくりと岸を離れていった。

 子供たちは、川岸でがっかりしていた。外野の男の子たちは、ボールの持ち主である今村君に「ゴメンネ」と連発していた。

 私も、「学校にあるサッカーボールをあげるから、あきらめよう」となぐさめていた。みんなの気落ちした様子に、枝折君が、「ボクのサッカーボールで続けよう」とよびかけていた。

 また、ドッジボールは続けられた。

 泣きじゃくっていた今村君は、私の所へきて「少しドッジボールを休んでいます」と言った。

 また、ボールがころがるといけないので、私はゲームから離れて斜面になるところに腰をおろした。外野から十メートルほどである。今村君も少し離れた花壇に腰かけて泣いていた。

 遊びは続いた。ドッジボールをやっていない子供たちもそばにやってきた。かくれんぼをしていた清水君、大竹君、小畑君も通りすぎていった。雪葉さんは私とボールの守りについた。舞ちゃん追川さん大田さんもやって来て、今村君に声をかけていた。突然追川朋子ちゃんはかけ去っていった。もどってきた彼女は小さい黄色いボールを今村君にわたしていた。やがて昼食となった。

 突然、梁(やな)田(た)君が走り込んできて、「アクアラングの人たちにボールをとってもらっていいか?」と聞いてきた。昼食が終わるころである。子供たちは、遊んでいても、昼食していても、今村君のボールのことを考えていたのである。昼すぎにやってきたアクアラングの人を見て思いついたのだ。

 神崎君が考えついた。そして坂田君にけしかけた。実行する人である。坂田君は心細いので梁田君をさそった。梁田君は私の了解を求めにきて、いさんで頼みにいった。やがて四、五分、「とりました」という大歓声がひびいてきた。

 私はいそいで川辺に向かった。エンジンのひびきもいさましいボートがもどってきたところだった。私は何度も御礼を言った。相手の方々は照れていた。

 みんな集まってきて、今村君に「よかったね」と連発していた。

 彼の弁当には、いなり寿司がまだそのまま残っていた。

 今村君がポケットから、小さな黄色いボールを出して朋子ちゃんに渡した。朋子ちゃんも黙ってそれを受けとった。

 「どうしたの?」と私が聞くと、朋子ちゃんは、「あげたの」と短く言った。今村君は「返したの」と短く言った。サッカーボールをなくして泣いていた今村君に、朋子ちゃんは、せめてもの心尽しに小さなボールをそっとあげたのだ。今、それはいらなくなった。だから、黙って返して、黙って受けとったのだ。

 小さな小さな小さな世界の物語である。

***

〈向山〉

 女の子は、あくまで優しい。

 泣いている今村君のそばにやってきて、声をかけてなぐさめていた。

 朋子ちゃんは、ボールをなくした今村君に、小さな黄色いボールをあげていた。

 男の子は、状況を突破させる。

 ボールが川に流れてシュンとしていたとき「ボクのサッカーボール」でドッジボールを続けようとよびかけた。

 遊びながらも、男の子は「川に流れたボールを何とかしたい」と考えていた。

 神崎君は、「川にいるアクアラングの人」に頼むことを考えついた。

 先生の許可は、梁田君がとりにきた。

 そして、大成功したのだ。

 ボールが、もどってきたのだ。

 今村君は、遠足のお弁当を食べていなかった。

 ボールが返ってきたことを知って、今村君は朋子ちゃんに小さな黄色ボールを返した。

 朋子ちゃんは、黙ってうけとった。

 男の子も、女の子も、何とすばらしいのだろうと私は思った。


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