- 特集 特別なニーズを持つ子どもと集団づくり
- 特別なニーズを持つ子どもと集団づくり
- /
- 小学校実践
- 龍君とともに
- /
- チコちゃんどこいくの
- /
- 中学校実践
- 橋のある川―熊ちゃんとみんな―
- /
- 分析
- 「特別なニーズを持つ子」とともに生きる
- /
- 論文
- 生活指導としての特別なニーズ教育―集団づくりの論点と課題―
- /
- 第2特集 『子ども集団づくり入門』をどう読んだか
- 『新入門』実践シリーズの刊行が待ち望まれる
- /
- 読みやすいけど読みひらけない
- /
- 「地球規模」で考えなければならないことがたくさんある
- /
- 「教師であり続ける」のは厳しいけれど…
- /
- 『子ども集団づくり入門』を入門とするために
- /
- さらに具体的・実践的な展開が望まれる
- /
- 今月のメッセージ
- 特別支援教育施策と《教育の理想》
- /
- 初めての人のために やさしく解説する集団づくり入門 Q&A・小学校 (第12回)
- 一年間のまとめから次年度の実践エネルギーをつくろう
- /
- 初めての人のために やさしく解説する集団づくり入門 Q&A・中学校 (第12回)
- 一年のまとめをどうするか―物語「個人史」を書こう―
- /
- 実践の広場
- 私の教室
- 楽しいイベント、ベスト3
- /
- すぐ使える遊び
- 作って遊んでつながって いろいろ“ドッジビー”
- /
- 授業のアイデア
- クイズやゲームを取り入れて
- /
- 楽しいイベント
- 班長が輝き、班員も輝く「仲良し班遊び」
- /
- 部活動・クラブ活動の工夫
- ラインがなければ楽しいのに―中学校ソフトテニス部―
- /
- 子どもの文化事情
- 中学生がつくる創作劇
- /
- 手をつなぐ―親と教師
- 我が子の成長を実感した時、親は変わる
- /
- 心に残る子どもとの対話
- きめる人を交代したら
- /
- 私のオフタイム
- 好きなことを好きなときに好きな場所で
- /
- 案内板 集会・学習会のお知らせ
- 北から南から
- 各地の基調提案 千葉
- /
- 〜子どもとつながり、子どもがつながる集団づくりを豊かに発展させよう〜
- 教育情報
- 「こころのひずみ」って何?
- /
- 読者の声
- 1月号を読んで
- 長編実践記録 (第3回)
- 「学級崩壊」の危機をさまよって
- /
- 〜卒業、そしてその後に〜
- 2005年度既刊目次
- 編集後記
- /
今月のメッセージ
特別支援教育施策と《教育の理想》
常任委員 白桃 敏司
私たち障害児学校に勤めている者は、時に、障害が非常に重く、今この場で命が途絶えることもあり得る事として実感できる子どもたちと接することがある。重度障害者と日頃から接している医師、高谷清氏は、このような障害の人たちと接しながら、以下のような思いを綴っている。
「いのちとは、元々はだかであるはずだ。……しかし今、いのちに付加価値をつけたり順序をつけたりしているように思う。……少なくとも、いのちを守り健康を回復するための看護(『教育』と読み替えてもよいだろう:白桃)は、いのちはみんなはだかで、いのちそのものが大事にされるということが基本であるのだろう。
彼らの存在は、そのものがいのちであり、もし付加価値のみに人間の価値を置けば、彼らの存在は無である。……わたしは、在るがままを価値観ぬきで受け止めることの大事さを思うのである。」※1
また、昨年末に聞く機会があった大田講演(東京大学名誉教授)では、憲法に言う「基本的人権」をどうとらえるかという場合、「いのち」という言葉をキーワードにして解説し、3つの視点が呈示されていた。その一つは《いのちとは、一つひとつが全て違う》ということであり、二つ目は《いのちとは、自ら変わっていける》ものだという。そして最後に、《いのちとは『関わりの中で生きている』》ものだということだ。基本法は、これらのことを全てにわたって保障するものとして読み取る必要がある。そのように大田氏は話していた。※2
「ちから」の有る者が益々「ちから」を得ることができる(でき易い)この世界にあって、高谷氏と大田氏の視点からは、現在の特別支援教育政策から抜け落ちている、何より大切な視点が見えてくる。憲法の理想は教育のちからに依って達成するという「崇高な理想」に向かって、私たち教員がしっかり見据えておくべきことは、「いのち」はそれだけで尊く、「いのち」に付加価値をつけるとき、誰の為のどのような加価値かを見極めていくことだ。そして「全てが違ういのち」の特性を、民主主義的な異質共同への世界にむかって進むための強力な武器とし、「個」の「変化(成長)へのちから」を信じて互いが「つながる」ように、「つながることが出来るような世界」づくりを、子どもや保護者と共に進めていくことだ。
まず何より、付加価値のない「いのち」そのものに価値を認めて対峙する大人がいる。そして、その上で、強力な「つながり」を持つ「民主主義的な世界」を立ち上げたい。そう思う。
まだ私たちは、未熟すぎるほどの「民主主義」しか経験していないと思う。
私自身は、特別支援教育が「特別なニーズを持つ子どもたち」への支援として進められる、と期待したこともあった。しかし、やはり予想していたことだが、「現在の世界」をより強く引き継ぐ為の施策として、この支援教育政策は進んでいる。先ほどの大田講演では、「人間の強烈な欲望が孤立化を促進し、そのつながりの無い大人世界に産み落とされてくる子どもたちの不幸」も述べていたが、今の教育現場は、子どもたちの孤立化をますます深める方向での学力をつけることに躍起になっている。少なくとも、都立養護学校実践(特に、知的養護学校)がその方向に進む傾向にあることだけは指摘しておきたい。
私たち全生研は、この様な政策をも飲み込みながら、「平和的な国家の形成者」をこれからも育てていく方向で実践を積み重ねるだろう。それは、賽の河原での石積みにも似て、徒労感の多い活動に見えることもあるかも知れない。しかし、新しい知見で実践を進める素晴らしい仲間から学びながら、私は、やはり「民主主義」を確立した「平和的な世界」を実現していきたい。そのような世界づくりに、子どもと横並びで進んでいきたいと思っている。
※1 『はだかの いのち』高谷清著
※2 05年12月18日に東京国分寺市で実施された、「日の丸・君が代」強制反対集会での大田講演
-
- 明治図書