生活指導 2006年1月号
新しいつながりと世界をひらく対話

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生活指導 2006年1月号新しいつながりと世界をひらく対話

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ジャンル:
生活・生徒・進路指導
刊行:
2005年12月7日
対象:
小・中
仕様:
A5判 124頁
状態:
絶版
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目次

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特集 新しいつながりと世界をひらく対話
新しいつながりと世界をひらく対話
大和久 勝
小学校実践
空から見る一億の灯り
由布院 桃太郎
中学校実践
ミーティングで人は変わるの?
児嶋 五月
子どもの話を聞いて、流れに乗って、見えてきたもの、生まれたもの
加納 昌美
分析
子どもの世界を立ち上げる生活指導
鈴木 和夫
論文
対話における「親密さ」と「公共性」
住野 好久
第2特集 ジェンダーをめぐるバッシング
論考
性教育・ジェンダーバッシングの背景とねらい
浅井 春夫
ジェンダー・バックラッシュのなかで家族を語り直そう
山田 綾
今月のメッセージ
〈子ども集団づくり〉をさらに発展させよう
折出 健二
初めての人のために やさしく解説する集団づくり入門 Q&A・小学校 (第10回)
荒れる子どもたちをどう理解し、指導していけばよいか
齋藤 修
初めての人のために やさしく解説する集団づくり入門 Q&A・中学校 (第10回)
子どもがつながる授業をどうつくるか
高橋 廉
実践の広場
私の教室
明日も楽しく
田島 政和
すぐ使える遊び
学級の中に遊びごころをいっぱいに
安原 昭二
授業のアイデア
ストレスをためない書写指導
澁谷 光博
楽しいイベント
スライムパーティー
宮崎 あゆみ
部活動・クラブ活動の工夫
地域に根ざした合唱団を目指して
田辺 竜之介
子どもの文化事情
子どもたちの周辺で……
清水 裕紀子
手をつなぐ―親と教師
手をつなぎにくい保護者と
横倉 英汰
心に残る子どもとの対話
先生、おれソーラン節、踊りてえな
箕輪 秀樹
私のオフタイム
私のであった地域の祭り
濱口 智
案内板 集会・学習会のお知らせ
北から南から
各地の基調提案 北海道
全生研北海道支部常任委員会
〜子ども、教師、保護者がつながり合う学級・学校をつくりだそう〜
教育情報
「スロー・ライフ」革命の夢想
西本 勝美
読者の声
11月号を読んで
【特別寄稿】ワークショップ型実践のすすめ
浅野 誠
長編実践記録 (第1回)
「学級崩壊」の危機をさまよって
山本 みのる
〜戸惑いと混乱の出会い〜
全生研の窓
編集室だより
編集後記
大和久 勝

今月のメッセージ

〈子ども集団づくり〉をさらに発展させよう

常任委員 折出 健二


〈子ども集団づくり〉は、教育の当事者である子どもたちが集団をつくり集団と共に生きる共同的主体である、という見方を表わしています。ですから、学級という制度枠組に基礎をおいて集団の民主的形成を追求してきたこれまでの実践的経緯にたいして、多様な子どもたちの集団の展開とそこでの人格形成の重要性を提唱しているのです。

 市場主義の競争のもとでは、子どもの多くは「弱者」あるいは「劣位」に追いやられます。この立場の者が自分たちの要求をどう共同化し社会化していくか。その際、「強者」あるいは「優位」にたつとされる者も不安・葛藤を押し殺して生きているわけで、その彼や彼女とも真に共同できる枠組(集団性)はどのようにしたらつくられるのか。ここに、〈子ども集団づくり〉の重要な視座があります。

 ここ十年くらい、〈対話・討論・討議〉を集団づくりの方法として重視してきているのにもそれなりの訳があります。それを、総会の「討議・決定」という従来の枠の延長で見るのではなく、当事者である子どもたちが、互いの要求をつなげ、共同化・社会化していく、その生活活動の民主的手段・様式としてとらえるということです。

 このようにして、〈子ども集団づくり〉は、子どもをめぐって起こる諸問題を「個」または「わたくし」に還元するのではなく、社会的な問題・制度的な問題として捉え、この生活現実を社会的に読みひらく力をつけることを重視しているのです。問題や病理を「個」化する動きに対して、〈子ども集団づくり〉そのものが対抗軸となるのです。

 また、「問題行動」をおこしたり繰り返す彼/彼女を「クライエント」化することに対しても、〈子ども集団づくり〉は意識的にスタンスをとります。ここで「クライエント」とは、なんらかの不安を抱え、心理的葛藤におちいり治癒を必要としている状態のひと、という意味です。

 わたしたちが、現在の子どもの「荒れ」を、子どもたちの「行動化したヘルプ」(第四七回大会基調提案)と見るのは、子どもを「クライエント」とみなすからではありません。それは「ヘルプ」という身近な他者関係を介して共同化・社会化されることを内側に含んだ叫び・要求なのだと見ることを意味しています。

 わたしたちは、子ども一人ひとりの発達課題にはていねいな検討を重ねますが、問題の心理(学)化には、慎重な態度をとり続けてきています。それは、こんにちの複雑な構造的激変を前にしても、「生活台に根ざす」「自己統治能力を育てる」という文脈でいわれてきた、社会的存在として子どもを育てる見地、その生活指導思想を引き継いでいるからです。

〈子ども集団づくり〉は、学びと自治活動・文化活動を共同のベースにもつ公共空間の形成を追求します。それは、子どもを「クライエント」化して教室を「癒し」空間にしようとする昨今の動向・政策をとても危険なものだと観るからです。しかも、そのような心理主義・心情主義を媒介にして、子どもたちを、「この日本にいるかぎり自分たちは守られる、そうであれば自分たちもこの国のために何かしなくては」というナショナリズムに吸収していく流れを読みとるからです。昨今の改憲論議のテンポアップもこれに大いに関係します。

 個人競争社会で多くの若者が「劣位」にあるとされ、当人たちも問題を「自己責任」や「わたくし」に還元しがちで、若年労働政策の貧しさの問題として捉える視点や関係性がよわい。これが、現在の「フリーター」「ニート」問題の背景にはあります。当事者である若者として、自分たちの要求をどう社会化するか。ここを変えなければ日本の社会は変わりません。初めに述べたように、〈子ども集団づくり〉が教育内容として実を結ぶであろうことの、将来的な意義もそこにあります。

「自由」「平等」などの民主主義テーマをめぐるヘゲモニー闘争でいかに主導性を勝ち取り、これを学校改革の公論にまで高めていくか。この一年、実践と研究の正念場です。

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