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今月のメッセージ
生きづらさの時代に思う
常任委員 榎本 恒夫
私が勤務する中学校では、昨年度の三月、平成一七年度の学校課題研究計画として、県や市からの委嘱による研究内容が提案された。事前にその委嘱を受けるのかどうかなどという論議はなされない。すでに決まっていることとして、唐突に職員会議に提案されたのである。それは、上から下への一方的な報告、あるいは押しつけであった。そして、本年度から三つの指定研究が同時並行して進められている。それらの研究にかかわる事業は最優先され、委嘱研究を進めるための既成の事実だけが積み上げられていく。当然、会議も増える。勤務時間が終わってからの部会や、提出期日に迫られた仕事に追われることになる。
それらの仕事を通して、教員としての達成感や充実感をおぼえることはない。それは私だけではなく、多くの職員にとっても同様である。なぜなら、そこには子どもたちの姿が見えないからである。「子どもの人間形成のための……」などという言葉が、子どもたちの現実から遊離して、空々しくさまよっている。にもかかわらず、委嘱研究推進のための仕事は続く。それが今、私たちが、そして学校が負わされている最も大きな問題である。
今、教員個々には様々な研修が義務づけられ、学校には組織として研究委嘱がおろされてくる。その成果が個人や組織の評価として取り上げられ、私たちを分断し孤立化させる。それが枷となって、私たちを縛りつけ、私たちから言葉を奪い取ってしまっている。
まさに、私たち教員の「生きづらさ」の現実がそこにある。
私が担任する二年生のクラスには、私が『アザラシ・グループ』と呼ぶ男子達がいる。十人以上の大きな集団である。休み時間や、雨の日の昼休みなど教室の隅の方に集まって上に乗ったり、抱きついたりしながらゴロゴロしている。しかし、怠惰で無気力な印象を私は受けなかった。たまには喧嘩もあるが、むしろのんびりとした開放的な様子にさえ思えた。
ところが、それがだらしないということで他の先生から注意を受ける。「あの男子達を厳しく叱って下さい」などと言われることもあった。しかし私は、それが彼らにとって必要なことだと考えていたので、何も言わなかった。
四月に問題児のレッテルを貼られて転校してきた原田は、本人もそして家庭にも多くの問題を抱えた生徒である。初めの頃は誰ともなじまず、いつも暗い表情をしてうつむいていた。しかし、この『アザラシ・グループ』のおかげで、その一員として、少なくとも学級には居場所を見つけることが出来るようになっていったのである。
彼らは学級の話し合いのなかで、自由に発言する。それが、周りの子どもたちを刺激し、みんなが言いたいことを言えるようになってきている。当然一方には、そのグループに入れず、周りでみている子どももいる。しかし、彼らの楽しそうな雰囲気は着実に学級集団の支持を受けるようになっていった。
二学期、体育祭では彼らがリーダーシップをとって、学年種目の練習に取り組み、大きな成果を上げた。そして、後期の男子学級委員もそのメンバーから選出された。また、学級では、彼らの一人を説得し、自分たちの代表として全校生徒会選挙に立候補させ、副会長として送り出したのである。
子どもも、そして私たち大人も「生きづらさ」をかかえさせられた困難な時代。今、その集団の共有すべき課題を発見し、他者との関係を見直し回復することが求められている。その勇気を、目の前の子どもたちに見たように思う。
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- 明治図書