生活指導 2005年1月号
「偽装」する子ども トピックス「佐世保少年事件」に思う

L612

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生活指導 2005年1月号「偽装」する子ども トピックス「佐世保少年事件」に思う

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ジャンル:
生活・生徒・進路指導
刊行:
2004年12月8日
対象:
小・中
仕様:
A5判 124頁
状態:
絶版
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目次

もくじの詳細表示

特集 「偽装」する子ども
「偽装」する子ども
大和久 勝
実践報告
ノリオが本当の自分に出会うまで
細田 俊史
ヘルプができる子に
橋元 義文
トラブルを繰り返すなかで
榎本 恒夫
分析
「偽装」から「もう一人の自分」の誕生へ
照本 祥敬
論文
「偽装」してつきあう子どもたち
山本 敏郎
第2特集 トピックス「佐世保少年事件」に思う
子どもの「自治」を育てる創造と挑戦を
坂本 光男
子どもの生活文化を占める「第四の拠点」
浅見 慎一
「親密」さの怖さを知り開かれた「つながり」を
柏木 修
すべての子どもの意見表明権を保障する「子ども集団づくり」を
楠 凡之
「出会い直す力」を育てる集団づくり
住野 好久
今月のメッセージ
ひとりの子どもの課題は仲間・親・教師を育てる
志賀 廣夫
今月の集団づくり・小学校 (第10回)
4年1組物語
浅見 慎一
〜君を忘れない〜子どもが自信をとりもどすとき〜〜
今月の集団づくり・中学校 (第10回)
瀧田中学校物語
加納 昌美
〜親たちと子どもたちの会をやってみよう〜
実践の広場
私の教室
「仲よし学級」で勉強も生活単元も楽しく
西村 公利
すぐ使える遊び
「がおー宇宙怪獣だ」集団遊び
大川 勝也
授業のアイデア
質問タイムで学力アップ
小田原 典寿
楽しいイベント
サラダコンクール
飯田 清子
学校は今
小さな共同をさまざまな場で
小室 貴
通信・ノートの工夫
待ち望まれる通信への一歩
古山 正則
手をつなぐ
年間を通じたつながりを求めて
齊藤 和彦
今子どもたちは
子どもってやさしい
加藤 和男
私のオフタイム
カレイとりに
丹野 千草
案内版 集会・学習会のお知らせ
【特別寄稿】春田正治先生を偲ぶ
春田正治元代表の履歴・業績紹介
折出 健二
特別寄稿 春田正治先生を偲ぶ
機関誌の最良の読み手としての春田先生
竹内 常一
春田先生ありがとうございました。
江部 満
【特別寄稿】春田正治先生を偲ぶ
生活指導研究・運動に貫かれた生涯
大畑 佳司
特別寄稿 春田正治先生を偲ぶ
会う約束を実現できなかった口惜しさ
服部 潔
【特別寄稿】春田正治先生を偲ぶ
春田さんの思い出
横川 嘉範
読書案内
『学校と教室のポリティクス新民主主義教育論』(子安・山田・山本編)
鈴木 和夫
北から南から
地域・サークルからの発信 滋賀県
山本乃里子
〜滋賀のサークル事情〜
教育情報
ジェンダーフリー攻撃は戦争への国づくり
柏木 修
読者の声
11月号を読んで
投稿論文
〈つながり〉論生活指導の諸問題
川村 肇
全生研の窓
編集室だより
編集後記
大和久 勝

今月のメッセージ

ひとりの子どもの課題は仲間・親・教師を育てる

常任委員 志賀 廣夫


 一 私は、特効薬をもっていない

 転入してきた二年生の妙子の体が、登校を拒否し出した。

 青白い表情で目にいっぱい涙をためて「気分がわるいので…」と、訴えてきた。見せてくれた連絡帳には、「朝から気分がわるいと言っています。妙子が我慢できなくなったら家に連絡ください。」と、書いてあった。次の日は、体の中から込み上げて来る吐気を口元でハンカチを使って押さえていた。到底、我慢などできる状態ではなかった。そこで、養護教諭と相談して保護者に連絡をした。慌てて来た母親と保健室の横にある教育相談室で妙子の様子を話し合った。

・転入した次の日から、気分がわるい、気持ちわるいと訴えるようになった。

・それを聞き入れ、休ませると妙子は永久に学校にいけなくなると思え、無理して登校させた。

そう話す妙子の母親と、今、一番悩み苦しんでいるのは妙子であることを確認した。そして、

・仲間のいない妙子さんは孤独の中で体を崩しながらも頑張っている。

・これ以上「頑張れ頑張れ。」と言わないで見守りましょう。

・家に帰ったら、今、気にしている学校のことを聞かないで自分から話すまで待ちましょう。

と、協力をお願いした。そして、「一週間指導させてください。」「もし、妙子さんに前向きな変化がなければまた、相談させてください。」と、お願いした。妙子の母親は目に涙をいっぱい溜めて、聞いてくれた。しかし、私は、妙子を楽しい気持ちで登校させる特効薬はもちあわせていなかった。

 二 仲間に話そう、みんなに相談しよう

 学年の先生に、妙子のことを話してみた。すると、「先生の大きな声で萎縮しているんだよ。」と、私の心がギュッと痛くなるような指摘もあれば、「友達が欲しいよと要求しているんだよ。」と、教えてくれた仲間もいた。そんな仲間の声を聞くなかで、二つの方針をたてた。

・状況に過剰反応する妙子が入りやすい柔軟な学級文化を創造していく。

・妙子を必要とする学級生活を組織的につくりだす。

 そして、妙子の苦しみを遠くから見ていることしかできない、この学級の課題もみえてきた。まず、班長会に相談してみた。班長たちは「あの子、全然しゃべらないから話しにくい」「聞いても、すぐに泣くからいやだ」と、語ってくれた。子どもとして、妙子と仲良くなりたいと行動しているけど、うまくいっていないこともわかってきた。

 三 妙子の課題は、この学級の課題だ

『班長会からのお願い』として、妙子と握手をしようという取り組みが始まった。

 休み時間、それに賛成してくれた子どもたちの列が、妙子の席の前にできた。妙子もそうだが、なかなか握手ができない子どもには班長たちが、腕を支えてあげていた。

 二日目には、子どもたち全員が握手の取り組みに参加してくれた。それに気をよくした班長会は、『妙子さんといっしょに学校をたんけんしよう』と、探検隊員を募集した。そして、「あしたは六年生のほうまで探検するけど参加してね」と、妙子と約束をしながら、次の日の活動をつくりだしていった。

 四 明るい母親の手紙

 地道な取り組みを続けていくうちに「妙子が家で学校のことを楽しそうに話します。」と言う連絡をもらった。この取り組みはこれで終わった訳ではない。しかし、子どもひとりの課題は、親・教師を育て、学級の子どもたちを生き生きさせる活動をつくりだした。

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