- 特集 グループづくりとネットワーキング―子ども集団づくりと学校づくり(1)―
- グループづくりとネットワーキング―子ども集団づくりと学校づくり(1)―
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- グループづくりとネットワーキング
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今月のメッセージ
子どもたちの生活を豊かにするグループ
指名全国委員 竹 田 裕 一
休み時間に尚子の姿をあまり見なくなったのは今年の一月頃からでした。休み時間はいつもドッジボールをして遊んでいました。雪が積もってからも雪まみれになりながら走り回っていました。三学期になってからは全くグラウンドに姿を見せなくなっていたのです。
「始業式から反抗的で困っているんです。」
と言う話を新学期が始まって学年の先生から聞かされました。
修学旅行の取り組みが始まって、一日かけての自主研修を計画する学習が始まりました。自分でテーマを設け、見学したい所を時間や費用を考えて選び、一日のコースを作っていく学習の中で、気の合う何人かとパソコンで町を調べたり、見学する場所を調べたりしていくようになりました。尚子のグループは隣の学級の子どもが半分いて、同じように自分の意見を強く主張する子が多く、それまでの友達関係では考えられないようなグループの構成になっていました。担任の先生は、
「計画を完成させるときは意見が絶対に合わないね。だって自分の意見を絶対譲らない子ばかり集まってるもの。だからばらばらになるのは目に見えているね。」
と考えていました。学校の公開授業が始まり、尚子の学年はこの学習を全校に公開する事になりました。ところが公開授業当日、学年の先生の、
「似た取り組みの人たちで研修のグループを作りなさい。」
という指導に尚子が反発しました。
「どうしてもこのグループで研修する。違うところがあるんだから。何で似ている人たちと一緒にならないとだめなんだ。私たちにはやりたいことがあるんだ。」
と言って譲らず、学年の先生は困ってしまいました。そこで私は学年の先生と相談して、
「いいと思うよ。やりたいことがあるんだったら。それをはっきりわかるように計画してごらん。そしたら違いもはっきりして、グループになれるんじゃない。」
と尚子たちにアドバイスしました。尚子たちは何回も私や学年の先生にアドバイスを受けに来ました。そして五人で自主研修の計画を完成させ、自主研修グループとして活動することになりました。
尚子はそれまでとは違う少し穏やかな様子を見せるようになりました。
それから、学年の先生は修学旅行の話し合いを行い、これまでのように修学旅行の活動を学級単位で構成していくことを原則にするのではなく、子どもたちの意見を聞きながら、一番楽しく活動できるグループで活動することにしました。実行委員会での話し合いの結果、ホテルでの部屋、食事、自主研修、バスの座席、見学のグループも自分たちで作ったグループでとなりました。またグループは大きく分けて二つにし、自主研修のグループと部屋グループ。自主研修以外は部屋グループで行動することを決めました。修学旅行が近づいてグラウンドで尚子たちの遊ぶ様子が見られるようになりました。
今の子どもたちは自分を見つめ、友達を見つめ、自立の基盤となる多様な集団をあまり持っていないのではないでしょうか。やせ細った子どもたちの人間観を豊かにするためには、いろいろな集団、多様な考えや文化に足下を持っていることが必要だと思うのです。
また、そのことがこれからの社会を創造していく担い手として、自治や民主主義のとらえ方を豊かにしていくことなのではないか、そんな気がしています。
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