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今月のメッセージ
対話・討論を軸に
常任委員 村 越 規 雄
中学二年生。進一がふさぎこんでいる。給食もほとんど食べない。どうしたのか聞いても、「何でもない」と答えるだけ。そこで同じ班の女子に様子を聞くと、授業中に、裕也が消しゴムのきざんだ物を何度も投げてきて、それから様子がおかしいという。
進一は口が重く、自己表現が苦手で、頑固なところもある。一方の裕也は、毎日のようにトラブルを起こし、いたずらからいじめまで、学級、学年を引っかき回している。話すとわかるのだが、ほんのわずか後には、次のトラブルを起こしている。
裕也は、進一ではなく、前の席の雄太をめがけて投げたというが、進一に聞くと、「絶対に自分を狙った」という。さらに、裕也は、取り巻きの俊行や良介、正とジャンケンをして、負けた者が進一のところへ行き、「バカ、死ね!」「てめえなんか、消えちまえ」と、休み時間のたびに執拗にくり返していたことがわかってきた。理由は、「進一に投げたわけでもないのに、にらんできた」「もともとあいつは嫌いなんだ」ということだった。
俊行は、人との関わりがなかなか持てず、裕也におもねる形で、かろうじてまわりとの関係を持っていた。良介は、スポーツ優秀な子だが、自分しか見えず、人の気持ちを逆なでするような事をくり返し、集団に入っていけない傾向にあった。
人と関わりたい、友だちが欲しい。しかし、うまく関われない。そういう子どうしで起こすこうしたトラブルがあまりにも多い。
いい加減イライラしてくることもあるが、まずはじっくりと子どもたちの話を聞いていく。特に、なかなか言葉が出てこない進一の話を聞くのには根気がいる。一日、二日とたち、家でも食事をあまりとらず、「学校へ行きたくない」と言う進一にとまどう母親からも、不安の声が届いてくる。
進一の様子がおかしいと家に電話を入れてくれた康太、リーダーの祐作、学の三人には、それとなく進一を守るように協力を依頼しつつ、クラスの様子も聞いていった。そして進一には、「嫌がらせは、クラスの中で起きている。これをなくしていくためにも、事を公にして、みんなで討議していった方がよい」「勇気を出して行動することで、もっと積極的にみんなとわかり合えるようになっていこう」と、事実をクラス全体の前に明らかにし、みんなで話し合い、解決していこうと働きかけた。
進一は、嫌がらせをくり返された実態をクラス全体の前で話した。裕也たちは、その事実を認め、「嫌いだからやった」と平然と言い放った。教室内が重苦しい雰囲気に包まれた。
しかし健太が、「俊行は、『(いじめ問題の学年討論集会での感想で)僕はいじめられても、これ以上は悪くならないから、我慢すればいいと思っていたけど、それではダメだと思った』って書いていたのは、それは逆に、誰かをいじめることだったのか」とつめより、それをきっかけに発言が相次いだ。
進一も、もっと心を開くべきだという発言もあったが、祐作は、「俺だって、そんなに明るくできるわけじゃないし、嫌なところもある。みんなだって、そうじゃないのか。なのに、嫌だからって、いじめという行為に表していいのか。それじゃ、友だちなんて、みんなできないじゃないか」と発言をした。
自分の思いも言い表わせずに、互いの関係も結べない子どもたち。だからこそ、じっくりと話を聞き、対話をし、それぞれの声をからませていく。実践を進めていくカギが、そうした対話・討論にあるように思う。
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