生活指導 2003年5月号
<対話の広場>をつくる

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生活指導 2003年5月号<対話の広場>をつくる

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ジャンル:
生活・生徒・進路指導
刊行:
2003年4月
対象:
小・中
仕様:
A5判 124頁
状態:
絶版
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目次

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特集 <対話の広場>をつくる
<対話の広場>をつくる
鈴木 和夫
実践報告・小学校
緊張した女子の関係をひらく対話
中野 譲
ナッシーからの手紙
北山 昇
実践報告・中学校
井戸端、シャベリ場
佐藤 くみ子
愛のメール大作戦
橋本 尚典
小学校・分析
対話の<広場>をつくるために
住野 好久
中学校・分析
対話のシナリオが求められる実践
安島 文男
関係図書紹介
住野 好久
Q&A 子どもと対話を成立させる
小室 貴
第2特集 地域を丸ごとつかむ総合学習―岩手、小野寺実践を検討する―
ふるさとの大地に根ざして
小野寺 武男
コメント
共同の物語と学び
豊田 健三郎
地域から子どもたちの生き方に迫る総合学習―小野寺実践の分析を通して―
田代 高章
関係図書紹介
田代 高章
今月のメッセージ
対話・討論を軸に
村越 規雄
風の声―この人に聞く
八ヶ岳南麓から語る未来
石川 春香
生活指導研究コーナー
「特設総合学習」等について
遠藤 芳信
教育情報
教育方法による分配
子安 潤
ほっとたいむ サークルからの発信
全国大会後の佐賀生研
中島 明俊
案内板 集会・学習会のお知らせ
書評
『癒しと励ましの臨床教育学』
田中 昌弥
読者の声
3月号を読んで
投稿 実践記録
太鼓続けたいね。地域に残したいね―PTAで和太鼓にとりくんで
響 太
コメント
大和久 勝
全生研第45回全国大会参加要項
編集後記
鈴木 和夫

今月のメッセージ

対話・討論を軸に

常任委員 村 越 規 雄


 中学二年生。進一がふさぎこんでいる。給食もほとんど食べない。どうしたのか聞いても、「何でもない」と答えるだけ。そこで同じ班の女子に様子を聞くと、授業中に、裕也が消しゴムのきざんだ物を何度も投げてきて、それから様子がおかしいという。

 進一は口が重く、自己表現が苦手で、頑固なところもある。一方の裕也は、毎日のようにトラブルを起こし、いたずらからいじめまで、学級、学年を引っかき回している。話すとわかるのだが、ほんのわずか後には、次のトラブルを起こしている。

 裕也は、進一ではなく、前の席の雄太をめがけて投げたというが、進一に聞くと、「絶対に自分を狙った」という。さらに、裕也は、取り巻きの俊行や良介、正とジャンケンをして、負けた者が進一のところへ行き、「バカ、死ね!」「てめえなんか、消えちまえ」と、休み時間のたびに執拗にくり返していたことがわかってきた。理由は、「進一に投げたわけでもないのに、にらんできた」「もともとあいつは嫌いなんだ」ということだった。

 俊行は、人との関わりがなかなか持てず、裕也におもねる形で、かろうじてまわりとの関係を持っていた。良介は、スポーツ優秀な子だが、自分しか見えず、人の気持ちを逆なでするような事をくり返し、集団に入っていけない傾向にあった。

 人と関わりたい、友だちが欲しい。しかし、うまく関われない。そういう子どうしで起こすこうしたトラブルがあまりにも多い。


 いい加減イライラしてくることもあるが、まずはじっくりと子どもたちの話を聞いていく。特に、なかなか言葉が出てこない進一の話を聞くのには根気がいる。一日、二日とたち、家でも食事をあまりとらず、「学校へ行きたくない」と言う進一にとまどう母親からも、不安の声が届いてくる。


 進一の様子がおかしいと家に電話を入れてくれた康太、リーダーの祐作、学の三人には、それとなく進一を守るように協力を依頼しつつ、クラスの様子も聞いていった。そして進一には、「嫌がらせは、クラスの中で起きている。これをなくしていくためにも、事を公にして、みんなで討議していった方がよい」「勇気を出して行動することで、もっと積極的にみんなとわかり合えるようになっていこう」と、事実をクラス全体の前に明らかにし、みんなで話し合い、解決していこうと働きかけた。

 進一は、嫌がらせをくり返された実態をクラス全体の前で話した。裕也たちは、その事実を認め、「嫌いだからやった」と平然と言い放った。教室内が重苦しい雰囲気に包まれた。

 しかし健太が、「俊行は、『(いじめ問題の学年討論集会での感想で)僕はいじめられても、これ以上は悪くならないから、我慢すればいいと思っていたけど、それではダメだと思った』って書いていたのは、それは逆に、誰かをいじめることだったのか」とつめより、それをきっかけに発言が相次いだ。

 進一も、もっと心を開くべきだという発言もあったが、祐作は、「俺だって、そんなに明るくできるわけじゃないし、嫌なところもある。みんなだって、そうじゃないのか。なのに、嫌だからって、いじめという行為に表していいのか。それじゃ、友だちなんて、みんなできないじゃないか」と発言をした。


 自分の思いも言い表わせずに、互いの関係も結べない子どもたち。だからこそ、じっくりと話を聞き、対話をし、それぞれの声をからませていく。実践を進めていくカギが、そうした対話・討論にあるように思う。

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