生活指導 2003年2月号
現代の「子すて状況」を超えて

L588

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生活指導 2003年2月号現代の「子すて状況」を超えて

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ジャンル:
生活・生徒・進路指導
刊行:
2003年1月
対象:
小・中
仕様:
A5判 124頁
状態:
絶版
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目次

もくじの詳細表示

特集 現代の「子すて状況」を超えて
現代の「子すて状況」を超えて
鈴木 和夫
実践記録 現代の「子すて状況」を超えて
純一のラブロマンス!
河内 五郎
愛子と学級に平和を!
藤原 祐輝
「目をつぶってみろよ!何も見えやしねえだろう!」
渡邉 朗
分析
「子すて」状況の子どもたちと出会い直す集団づくり
住野 好久
現場からの問題提起
コーディネーターとしての教師の役割
谷尻 治
Q&A 現代の「子すて状況」を超えて
坂田 和子
第2特集 「心のノート」批判―今日の道徳教育を問う
どう読む?どう使う?「心のノート」
阿部 弘美
いま、道徳教育を開く―「心のノート」を超えて
大和久 勝
道徳の奥深さと「心のノート」の浅薄さ
小渕 朝男
今月のメッセージ
すてられた子ほど仲間を求める
志賀 廣夫
風の声―この人に聞く
子育ち・子育て、地域と歩む児童館
阪口 元一
21世紀の生活指導を探る (第10回)
「奉仕活動」から「ボランティア活動」へ
竹内 常一
集団づくり―わたし流メソッド
小学校/共感が交わりの世界を広げる
小田原 典寿
ほっとたいむ サークルからの発信
ナイスミドルのにぎやか学習会
戸奥 佐恵
案内板 集会・学習会のお知らせ
書評
『いじめと児童虐待の臨床教育学』
伊東 毅
読者の声
12月号を読んで
投稿 実践記録
一年生の物語を織る―「ひこうきくらぶ」「おにごっこくらぶ」を通して―
益田川 清
コメント
今関 和子
教育基本法「見直し」反対の見解
全生研Web情報
全国委員会の反響
全生研の窓
編集後記
鈴木 和夫

今月のメッセージ

すてられた子ほど仲間を求める

常任委員 志 賀 廣 夫


@ 親に怯える


 帰宅時刻が一分おくれたことで、ピシャッと閉められた扉に向かって広太は、「お母さん許して下さい。」と、泣き叫んでいた。そんな、広太に「お前なんか家の子ではない。どこへでも行け。」と、ヒステリックに怒鳴る母親を、いつも広太は恐れている。

 学校での広太は思いもよらない行動を度々起こす。例えば、その中に、三階の窓から、歩いている人をめがけて牛乳パックを何個も投げつけた事があった。牛乳パックは、人に命中すると爆弾のように破裂し白い中味が飛び散った。被害にあった通行人が騒ぎたて、学校がパニックになったこともあった。思った以上の出来事になってしまい怯え震える広太に、「どうして、あんなことをしたのですか」と、聞いてみた。すると、「だって、みんなが喜んでくれるんだ。」「みんなが喜ぶと、ぼく嬉しくなるんだ。」と、語った。

  いたずらだけがぼくを救ってくれる


 広太のいたずらは、更に続いた。まるで、母親から見放された寂しさの隙間を埋めるように……。

 しかし、そんな広太が、ある出来事を機にいたずらをする事を止めた。それは、彼が、彫刻刀を使って机に傷を付けたことが発端であった。誰が見ても、その傷あとは痛々しく感じられた。

 「広太君、またひどいことをやったよ。」と、楽しむかのように、私に言いつけに来る子どもがいる一方、「うちの学級がまた問題を起こした」と、悲しむ子どももいた。それだけ、広太が生じさせるいたずらや破壊的な行動は、全校や地域から注目されていたのである。

 そこで、広太の生じさせた課題を学級に問いかけてみた。それに対して、いちばん驚いたのは、広太であった。「今までと違う。俺が怒られているのを、喜んだみんなが…どうして、今日は真剣に話し合っているのか」と、口をポカンと開けて、いつもと違うみんなの様子を、ただただみていた。


  もういたずらをしなくっていいんだ


 広太の生じさせた課題で、学級の子どもたちは真剣に話し合った。

・なぜ、広太は同じことばかり繰り返すのか。

・みんなは、なぜ、広太の生じさせる課題を面白がってみていたのか。

 そんな中、舞子が泣き出した。「私、この学級、とっても冷たいと思っている。だって、いつも、みんなから注目されているのは、頭のいい子や運動神経がいい子だけでしょ。家では怒られて、この学級ではほとんど注目されない広太君や私たちは、寂しくってしかたないんだ。だから、みんながやらない事をわざとやって、見てもらいたいんだよね。」

 彼女が、言い終わると自然に拍手がおこった。

 すると、今まで広太のいたずらや失敗を、喜び楽しんでいた隆が、「俺のとうちゃん、大工だからそんな机の傷の直し方ぐらいわかるよ。明日まで待っていろよ。」と、広太の方を見ながら怒鳴った。

 翌日、サンドペーパーとニスを持って、隆は学校にやってきた。そして、傷ついた机を補修しはじめた。その側で、広太は、自分は何かしたいのだが、何をしてよいのかわからずウロウロしていた。

 しかし、彼の表情は、自分のことを支えてくれる子どもたちを前にして、今まで見せたことのないような安心したものになっていた。

 最後に広太は「もう、いたずらしなくてもいいんだね。」と、静かにつぶやいた。

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