生活指導 2000年12月号
家族―心に傷をおった子どもたち―

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生活指導 2000年12月号家族―心に傷をおった子どもたち―

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ジャンル:
生活・生徒・進路指導
刊行:
2000年11月
対象:
小・中
仕様:
A5判 132頁
状態:
絶版
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目次

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特集 家族―心に傷をおった子どもたち
家族―心に傷をおった子どもたち
山田 綾
実践記録
ぼくのこと「輝ちゃん」と呼んで―心地よい居場所と友だちと交わる力を
多久田 紀子
お父さん、俺をもっと殴ってくれ
坂下 健二
【コメント】現代の家族を問う
多久田、坂下氏の実践を読んで
今関 和子
恵子との出会い
片岡 幸雄
孝志よ、一人で生きていけ!―虐待・子捨て……その中で彼は
柏木 修
【コメント】家族とは何か
片岡、柏木氏の実践を読んで
坂田 和子
コメントを受けて
寂しい子どもたちの陰に
多久田 紀子
実践は教師を太らせてくれる
坂下 健二
対抗的公共圏の構築を
片岡 幸雄
母の相対化は可能か
柏木 修
子どもが家族から受けた心の傷と学校
広田 照幸
第2特集 父母とのトラブル
ユミの涙、母の心配
山崎 巨裕
京子と父親の執拗な攻撃に対応しきれなかった苦い思い
大島 冴子
保護者の行動が学校を変える
野茂 郁哉
父母も教師も集団の中で育ち合う―三氏の実践に学ぶ―
村越 規雄
今月のメッセージ
孤立から共同へ
小林 正洋
書評
自分史に重ねて読む
鈴木 庸裕
読書案内
教育改革と公共性
藤井 啓之
子ども・若者文化考
学校文化とマスコミ文化
塩崎 義明
小さな物語
Mさんの居場所さがし
樋口 由紀子
ため息と怒りからの出発
この子は何年生?
梶 真一
学校リストラの現場から
「不適格」教員の排除を切り口に教員のリストラをめざす教員管理政策
住野 好久
読者の声
10月号を読んで
案内板 集会・学習会のお知らせ
すれちがいから出会いの場へ―現代学校の探求 (第20回)
「TOP」
留飯 雄樹
〜洋と武男のいた学級〜
【コメント】どの子にも居場所と出番を作る学級と学校
大和久 勝
同時代を生きる教師たち (第3回)
教師も子ども・親と共に育ち合うことの喜びを
内田 万千子
ほっとたいむ サークルからの発信
幅広い参加者層で、深まる学習サークル
吉田 隆
全生研の窓
編集後記
荒井 伸夫

今月のメッセージ

孤立から共同へ

常任委員 小林 正洋


「先生、うちの子、学校ではどうですか。おとなしくて友だちにいじめられていませんか」と、公男君の母親は話を切り出しました。

「いやあ、そんなことありませんよ。けっこうヤンチャでいたずらもするし、時々、叱られますよ」

「そうですか。少し安心しました。なにせ、心配で心配で。子どもに『今日はどうだった? いじめられなかった?』と、毎日、聞いてはいるのですが、いつも『べつに』としか言わないもので。あまりしつこく聞くと子どもも嫌な顔をするので、家庭訪問で聞いてみようと思っていたんです」

「大丈夫ですよ。結構、楽しそうに生活していますから」

「それを聞いて安心しました。入学してすぐから胃が痛くて痛くて、二週間も続いたんです」

「えっ! 公男君がですか?」

「違いますよ。私がです。心配でしようがなかったんです」

公男君の母親の幸子さんは公男君を家から送り出すと胃が痛くなり、帰ってくるとおさまるという日々が続いたのでした。幸子さんはまだ二〇代の若い母親です。子どもを小学校に入学させるのははじめてです。

そういう母親に子どもの入学というのは大変なプレッシャーになっているんだと、驚いたと同時に、「しっかりやらなくては」と感じたのです。また、学校への期待の大きさも知らされたのでした。

しかし、ここ数年、入学してくる子どもたちの変化の大きさに低学年を担当した教師たちの悲鳴が多く聞かれます。

「気に入らないことがあると誰彼かまわずなぐる蹴るの暴力をふるう」「ちょっとしたトラブルで瞬間的にキレる」「こだわりが強く、できないことがあると先へ進まない」「うまくいかないとパニックになる」「好きなことはやるが、嫌なことにはいっさい手をつけない」あげればきりがないくらいです。

どうしてこんなに変わってきたのでしょうか。子育ての問題があるのでしょうか。たしかに、子育てする社会的条件は良くありません。子育ての孤立化がいっそうすすんでいるのが現状です。

たとえば、公園に幼児を連れていって遊ばせようとしたが、すでに遊んでいる子どもたちのグループに入れず、家の中に公園を作った。早期教育が母親の役目と思い、マニュアルどおりにやってみたが、うまくいかなかった。子どもの言葉が遅れているようで外に連れ出すのが嫌になった。(NHK シリーズ心の風景より)

これもほんの一例にすぎませんが、多かれ少なかれこのような状況はどこにでもあることだと思います。もし,子育ての孤立化のようなことが子どもの変化の一つの原因だとすれば、学校が、親が持つ子育ての不安を取り除く親たちの出会いの場として重要な役割を担うことではないでしょうか。子育ての共同の輪をつくり広げることになるのではないかと思います。そして、そのことが、「個性重視」の名のもとにさらなる競争に追いやろうとし、新たなる差別化に進もうとしていることに対するものではないかと思うのです。

規制緩和と自由化の名で教育現場が市場化し、ますます競争が激しくなり、子どもたち一人一人が、地域の中で家族がバラバラになり、子育ての孤立化が深まるのでなく、ちっちゃな子育ての共同の輪が生まれ広がることこそ、弱肉強食の競争の社会から平和的に生きることにつながっていくのではないでしょうか。

もうすぐ二一世紀です。子どもたちが輝く未来にしていきましょう。

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