なぜ「深い学び」がうまくいかないのか?
学習科学で読み解く授業と評価の転換

なぜ「深い学び」がうまくいかないのか?学習科学で読み解く授業と評価の転換

新刊

総合7位

深い学びは、「知っている」の先に始まる

「深い学び」を、活動の多さや知識の定着だけで捉えていませんか。本書は学習科学の知見をもとに、「知っている」から「次に知りたいことを創り出せる」学びへの転換を提案。次期学習指導要領改訂の論点を押さえながら、理論と現場をつなぐ1冊です。


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PDF
ISBN:
978-4-18-110518-1
ジャンル:
授業全般
刊行:
対象:
小・中・他
仕様:
四六判 240頁
状態:
在庫あり
出荷:
2026年11月4日

CONTENTS

もくじの詳細表示

はじめに
第1章 学びのゴールの再定義
1 学びのゴールが変わる
2 学びの科学がくつがえした伝統的な教育観
3 新しい学びのゴールとうまく学ぶための条件
[第1章 編集ノート]私たちにとって不自然だった従来型の教育
第2章 「深い学びの実装」の実現に向けて
Part1 協働的な学びを通した個別最適な学びの重要性 個別最適な学びを実現しようとするほど、協働的な学びが不可欠になる?
1 協働的な学びの位置付けで授業はこれだけ変わる
2 協働的な学びは問題解決能力を引き出す
3 個別最適な問題解決能力を育む協働的な学び
Part2 対話を通して知識を生み出す協調学習の実現 話し合い活動は、理解を「確認する場」ではなく、知識を「生み出す場」だとしたら?
1 うまく学ぶための条件を生かした授業づくり
2 主体的な学びを引き出す授業 知識構成型ジグソー法実践事例
3 協調的な問題解決能力を伸ばす学習環境
Part3 学習者が生成AIを活用する学び 生成AIは学びを「効率化する道具」ではなく、「思考を深める相手」になるとしたら?
1 生成AIを活用した深い学びの実現に向けて
2 仲間とAIと対話しながら学び合う実践
Part4 これからの学習評価に必要な視点 授業のゴールはテストで高い点数を取ることだと思っていませんか?
1 なぜ学習評価は難しいのか
2 AIドリルの解析から算数・数学の学びを考える
3 入試問題を子どもたちはどのように解いているのか?
4 テストの設問形式で思考過程は変わるのか?
[第2章 編集ノート]子どもたちの準備はできている
第3章 「多様性の包摂」の実現に向けて
Part1 公平・公正な社会と教育を目指して 多様性への配慮は、特定の子どもへの対応ではなく、すべての学びの前提だとしたら?
1 遺伝学と認知科学から考える多様性の包摂
2 探究学習を通して多様性を包摂する力を
Part2 これからの学び方と必要な力を俯瞰する 社会を変えていくのではなく社会に合うような人を育てようと思っていませんか?
1 デジタル社会が変えていく学びの形
2 知識創造社会と21世紀型スキル
3 21世紀型スキルを育む授業づくり
Part3 学びを保障する一人一台端末の使い方 求められる力は、情報を正確に読み取る力ではなく、新たな意味を生み出す力だとしたら?
1 ICT時代に期待される読解力は「創り出す」力
2 ICTを活用した調べ学習の価値
3 相互に思考を共有し吟味する学び
4 自由に学習方法を選択できる力を育てる授業の実現
[第3章 編集ノート]「すべての人が天才になる」時代の教育へ
第4章 「教員に求められる資質・能力」を高める環境づくり
1 新しい学びのための授業研究のあり方とは
2 授業づくり・評価づくりの教員コミュニティ形成
3 授業観・学習観の変容を目指した教員養成大学授業の取り組み
4 もっと先を学びたくなる学習環境づくりを
おわりに

はじめに

 「単元目標が○○だったら、この授業の本時に子どもたちに持たせたい問いは○○というのもいいかもしれませんね。そうすると、クラスの子どもたちはどんな思考を働かせ、どのような話し合いになりそうですかね?」


 益川が小学校、中学校、高等学校を訪問したときに、先生方と相談している際によくある場面でのやりとりです。先生方と一緒に授業をつくり、子どもたちの学びの過程を見取り、振り返り、次の授業づくりに向けての改善アイデアを一緒に考える。このような取り組みを各地で続けてきて、あっという間に20年の月日が流れました。

 当初から大事にしてきたのは、益川と先生方お互いの強みを出し合って、ともに創り上げる関係性です。益川は学習科学、認知科学といった「人はいかに学ぶのか」や「うまく学べる条件」については詳しいのですが、先生方は、「授業や単元を通して育みたい力や思い」、そして何より「目の前の子どもたちの実態」を把握されています。一人ひとりの先生、学校、地域によって想いや考え方は多様です。大学での授業、業務、研究の合間に、多いときには週に数校を訪問するという関わりを続けつつ、学校現場の実態に即して、子どもたちの学びの見取りに応じたやりとりを大事にしてきました。

 その一方で、最近学校現場から「益川先生の考え方をもっと知りたいので何かおすすめの本はありませんか?」という質問を受けることがありました。これまで自身は、大学生や研究者を対象とした研究のための専門書や翻訳書ばかり取り組んできたため、これをぜひと紹介できるものが限られていました。そのような中、執筆の機会をいただく出来事が2つありました。一つは、明治図書の新井皓士さまから学習科学とこれからの教育をテーマにした先生方向けの書籍を執筆しないかというお誘いでした。ただ、お声がけいただいた当時は執筆に時間を割くことが難しく進みませんでした(お誘いから出版まで3年かかってしまい申し訳ありません)。もう一つは、2018年から教育情報誌『ミライノマナビ』で連載していたコラムが、2025年に最終回を迎えたことです。このコラム連載は先生方から一定の評価をいただいて、コラムを読まれて学校や自治体訪問依頼が来ることも多くなっていました。そこで、連載していたコラムの内容を中心に、2026年の現状と将来に合わせて一部整理や加筆をして出版することを決めました。

 本書のもう1人の著者であるフリー編集記者の萩原渉さんには、創刊編集長として立ち上げ時に声をかけてもらい、コラム連載の内容、構成のアドバイスなど、長年にわたり執筆を支えていただきました。実は萩原渉さんは、中京大学の大学院生時代の同期仲間であり、大学院研究室も同室でした(益川の指導教員は三宅なほみ先生、萩原渉さんはご主人の三宅芳雄先生でした)。当然、認知科学や学習科学の造詣が深く、良い連載記事につながっていましたので、本書出版の際には、連載当時の思いとともに現在の日本の教育と照らし合わせながら各章の最後に総括的な執筆をお願いしました。

 数年前から始めた趣味の山登りは、授業づくりや深い学びと共通点が多いと感じています。授業づくりの視点では、事前に登る山のことを深く調べた上で目標をできるだけ明確にすることで、登山当日に起きるトラブルを最小限にとどめて登頂につなげることです。授業づくりにおいても、事前準備と子どもたちの学びの想定、目標の明確化は重要です。実際の授業では様々なことが起きますが、そこでの学びの見取りが次の授業実践に生きてきます。山登りでも天候不順等で撤退を余儀なくされることがありますが、それが次の登山に生かされていきます。深い学びの視点では、ある山の登頂に成功し、目標に達すると、次に登りたい山が出てきて新たな目標が生まれるという点です。本書では理想的な学びの姿を、対話的な学習活動を通して、持っていた問いが解決するとその先に知りたいことが見えてくる新たな目標が創出されることだと紹介しています。

 さらに山登りでは、文明環境から離れ、身体全体を通して自然の豊かさに触れると同時に、自然に対して1人では無力であることも実感します。加速度的な情報通信技術の発展は、持続可能な社会の構築に貢献するのでしょうか。AI技術を駆使した戦争が行われている現実、環境問題などの難題を抱える中で、社会変革を実現する鍵は「教育」にあると考えています。本書で取り上げる「実現したい学習環境」は、対話を通して多様な個々人が豊かになると同時に社会を豊かにしていこうとする力を育む環境です。

 今、青山学院大学の研究室では、大学院生の数も増え、ゼミ時間では所属院生だけでなく学外院生や社会人、先生方もゲスト参加し、認知科学や学習科学の歴史文化を大事に、多様な立場や考え方をぶつけ合い、新たな知を創発し合っています。自身が先人の先生方から引き継ぎ発展させてきたように、次世代につなげていきたいと考えています。


  2026年5月   /益川 弘如

著者紹介

益川 弘如(ますかわ ひろゆき)著書を検索»

博士(認知科学)。中京大学情報科学部認知科学科助手、静岡大学大学院教育学研究科准教授、聖心女子大学現代教養学部教育学科教授を経て、現在、青山学院大学教育人間科学部教育学科教授。専門は学習科学、認知科学、教育工学。問いや疑問を解決するため、お互いにわからないこと、わかってきていることを出し合いながら深めていく対話過程を通して、知識や技能を深めたり創出したりするような授業づくりとその学習評価について、テクノロジの強みを生かした研究を進めている。

萩原 渉(はぎはら わたる)著書を検索»

教育ジャーナリスト フリー編集記者 高校情報科教員

修士(情報科学)。教育出版者勤務を経て、2017年独立。

AI時代の教育の行方に興味を持ち、中高の先進的な事例を多数取材・発信。

2018年『ミライノマナビ』創刊編集長(発行:アップ教育企画)、2026年からは取材で得た知見を教育現場で生かすべく教鞭も執る。

※この情報は、本書が刊行された当時の奥付の記載内容に基づいて作成されています。
    • この商品は皆様からのご感想・ご意見を募集中です

      明治図書
    • これからの学びを科学する、というキャッチコピーをそのまま本にしたような内容だった。
      ますますこれからの学びのあり方にワクワクしてきた。
      2026/10/1730代・小学校教員
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