生活指導 2010年4月号
新学期が楽しみになる!―素敵な出会いをつくるための準備

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生活指導 2010年4月号新学期が楽しみになる!―素敵な出会いをつくるための準備

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ジャンル:
生活・生徒・進路指導
刊行:
2010年3月8日
対象:
小・中
仕様:
A5判 123頁
状態:
絶版
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目次

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特集 新学期が楽しみになる!―素敵な出会いをつくるための準備
特集のことば
新学期が楽しみになる!―素敵な出会いをつくるための準備
高橋 英児
子ども集団づくりの構想と見通し
小学校/学級集団の成長を構想してみよう
関口 武
中学校/学級集団の成長を構想してみよう
栗城 順一
最初の出会いまでに―わくわくする出会いをつくろう
低学年/夢に向かって、スタートダッシュ!
北嶋 節子
中学年/指導方針をしっかり立てて学級開き・授業開き
石井 幸雄
高学年/やる気を引き出すスタートを!
高尾 和伸
中学校/学年に合わせたメッセージを
橋本 尚典
学級の第一歩を踏み出す
《T》子どもに信頼される大人として出会おう
低学年/スキンシップと、子どもたちを繋ぐための関わりを大切に
清水 裕紀子
高学年/子ども達と出会うときに大切にしていること
水溜 精吾
中学校/「変化球」を受け止める―「大変な生徒」との対話
木村 哲郎
《U》学級への期待を引き出そう―学級目標・スローガンづくり
低学年/あなたはどんな学級が好き?
岡田 律子
高学年/年度初めは意識改革から
滝 研一
中学校/居心地のいいクラスにするために
増田 圭治
学級に関係と組織をつくる
《T》最初の班づくりを始めよう
低学年/班活動を通して、子どもの居場所のある学級がつくられる
藤原 伸一郎
高学年/リーダー候補の発見も忘れずに
細田 俊史
中学校/班活動の要は班会議にあり
小室 貴
《U》朝の会・帰りの会のポイント
低学年/「自分を出せる」子どもに育てるための第一歩
桂川 清
高学年/子どもどうしがつながる朝の会・帰りの会
山ア 史子
中学校/小さな対話、討論の場に
上木 洋一
今月のメッセージ
彼らはどう生きていくのか……
田邊 一馬
【コラム】教室文化をつくる
小学校/楽しく、生活しやすい教室づくりを
栗原 京子
中学校/共同生活の場としての教室をつくっていく
隈本 智子
【コラム】やってみよう、こんなレク〈目的別〉
学級の様子をつかみたい―子どもが見えるゲームスタート・準備なしで簡単に
田中 朱美
学級の緊張を解きほぐす―班活動への導入
小磯 政行
学級の前向きなトーンを引き出す―「この人は誰!」ゲームで楽しく盛り上げる
伊藤 浩
Q&A/新学期の不安・悩みにお応えします!
Q1:荒れていた学級の担任になった…〈小学校〉
塩崎 義明
Q1:荒れていた学級の担任になった…〈中学校〉
柏木 修
Q2:子どもとの関係をつくり直したい…〈小学校〉
今関 和子
Q2:子どもとの関係をつくり直したい…〈中学校〉
高原 史朗
学級づくりアイデアシート〈ワークショップ〉 (第1回)
志賀 廣夫
私の授業づくり (第13回)
小学校〈国語科〉/詩の形式を借りて生活を表す
宮本 誠貴
〜三年生最初の詩の授業〜
中学校〈美術科〉/みんなに発信
猪俣 修
〜作品を発表するということ〜
実践の広場
子どもの生活・文化・居場所
放課後の子どもたち
桃野 香
子どもをつなぐ活動・行事
初めての同窓会は
伊藤 成哉
いきいき部活・クラブ
勝つために、エンジョイベースボール
五十嵐 晋
手をつなぐ―教師・親・地域の人々
PTA活動を通して親と教師が手をつないだこの10年
瀬成田 実
私が教師を続けるわけ
子どもが再び見えてきて、がんばっている
佐原 成典
〈発達障害〉の理解と支援―学級・学校・地域を育てる (第1回)
発達障害の問題を考える〈その1〉
楠 凡之
教育情報
「応答し合う文化」を探索する現職教員の語り
黒谷 和志
北から南から
サークルだより・滋賀
有川 博延
〜世代間共同でつくり出す大会に〜開催支部・滋賀生研は、今〜〜
読書案内
『1968 若者たちの叛乱とその背景』
白桃 敏司
読者の声
2月号を読んで
シリーズ/各地の実践
山形
太田 一
〜共に感じ、手と手をつないで〜
案内板 集会・学習会のお知らせ
全生研第52回全国大会案内
滋賀大会一次案内
全生研の窓
田邊 一馬
編集室だより
高橋 英児
編集後記
高橋 英児

今月のメッセージ

彼らはどう生きていくのか……

常任委員 田邊 一馬


卒業生のなかには、何年たっても気になる生徒がいます。3年前に卒業した和樹も、そんな生徒の一人です。中学2年生に進級する4月、和樹は県内の他市から転校してきました。2年生、3年生と私は和樹を担任しました。

和樹は、生まれてまもなく施設に預けられて育ちました。その後、両親に引き取られましたが、父親からの暴力に苦しめられることになります。また、両親の離婚後は、障害を抱えた母親と2人の兄弟とともに貧困のどん底で生きてきたのです。

「暗くて表情がない」、それが私の第一印象です。両手をポケットに突っ込んだまま身体は常に斜めに傾いています。決して視線を合わせようとはしません。かといって、威嚇的な態度ではありません。

新学期が始まり、和樹の新しい中学校生活がはじまりました。教師の働きかけに過敏に反応します。急に身体を硬くし、暴力的に対抗しようとする姿勢を露わにします。たとえ教師が好意的に話しかけようとしても同じです。「頑張れよ」などと軽い気持ちで身体に触れようとすると、突然に表情を変えてつかみかかってきます。 

最初は誰ともなじまず、いつも暗い表情でうつむいていました。しかし、次第に学級の子どもたちとは、少しずつその距離を縮めていくように見えました。休み時間や雨の日の昼休みなど、何人かの男子と教室の隅の方に集まって、上に乗ったり抱きついたりしながらゴロゴロしている姿が見られるようになってきました。少しずつ、一つひとつを確かめるように、和樹の表情や様子には変化が表れていきました。 

3年生に進級してからは、少なくとも私や学年の教師に対しては暴力的な姿勢を示すことがなくなりました。むしろ、にこやかな表情で話ができるようになっていました。ところが6月、他学年の先生の注意に対して突然暴れだし、以前のように興奮して手のつけられない状況になってしまいました。

その日の放課後、和樹はボロボロと涙を流して泣き出したのです。私の前で、私と二人っきりの教室で、しゃくり上げるようにして泣き続けました。彼の今日までの生きづらさや苦悩を吐き出すように泣き続けました。私には何も言う言葉がありませんでした。 

その後、高校へ進学したいという希望を持ちはじめました。母親ははじめ反対していましたが、何とか了解してくれました。奨学金の申請を行い、仲間の応援や本人の努力もあり、何とか高校へ進学することが決まりました。そして、笑顔で卒業していきました。 

ところが進学した5月、校内で暴力事件を起こして謹慎処分を受け、そのまま不登校となり、結局その秋に退学してしまいました。

その間も、和樹は定期的に私を尋ねて来ました。それは、卒業するときの私との約束です。

そして今も和樹を支えて続けているのは、中学校時代の仲間たちです。しかし、彼らも今年の春には高校を卒業します。

社会の貧困と矛盾を一方的に背負わされた子どもたちが、増え続けています。卒業した彼らを支え支援していく体制をどうつくり出せるのかということが課題です。それはまさに昨年の大会基調が提起した私たちの課題なのではないでしょうか。

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