生活指導 2009年12月号
子どもと対話する若い教師たち

L673

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生活指導 2009年12月号子どもと対話する若い教師たち

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ジャンル:
生活・生徒・進路指導
刊行:
2009年11月4日
対象:
小・中
仕様:
A5判 123頁
状態:
絶版
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目次

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特集 子どもと対話する若い教師たち
特集のことば
子どもと対話する若い教師たち
井本 傳枝
論文
子ども世代と若い教師―若手教師の/への不安と期待―
藤井 啓之
実践・小学校
なおの心が開き始めるまで
紺 さとる
〈コメント〉「柔らかい感性」で子どもをとらえて
住野 好久
思春期の女の子との対話
佐藤 晋也
〈コメント〉子どもの「生きづらさ」をつなぐ共感的な対話を紡ぎだす教師に
浅見 慎一
実践・中学校
リーダーについて考え続けて
八木 優子
〈コメント〉どっしりかまえて、子どもと向き合う
小室 貴
第2特集 子どもの中の貧困に向きあう生活指導〜第51回全国大会(富山)に学ぶ〜
基調提案をこう読む
今こそ、出会い直しの時
豊田 健三郎
「子どもの貧困」とどう向き合うか
川辺 一弘
「反貧困の教育実践」の全体像の構築へ
船橋 一男
大会をふりかえる
学習参加者の声
熱き思いに刺激を受けた富山大会
田中 真紀子
富山にて―二学期来るのが待ち遠しい
米山 美保
問題別分科会〈「人事評価制度」の中での教職員集団づくり〉報告
村越 規雄
[研究のまとめ]実践から見る子どもたちの問題と研究討議の成果・課題
大和久 勝
大会を終えて
[大会担当より]献身的に取り組んでいただいた現地スタッフの皆さんに感謝!
田邊 一馬
[現地実行委員会より]「一は二を生み、二は三を生み、三は万物を生む」(老子)か?
毛利 豊
今月のメッセージ
若手教師とべテラン教師の異世代間協同から新しい学校づくりへ
船越 勝
私の授業づくり (第9回)
小学校(社会科)/「ゆるキャラ」の授業(5年)
塩崎 義明
中学校(美術科)/絵本を創ろう
加納 昌美
実践の広場
子ども文化の世界
文化で子どもがつながる、子どもとつながる。
遠山 正実
貧困・格差と子どもたち
「基本的信頼を託すことのできる」おとなとは
増田 圭治
学級のイベント
障がいを持つ子どもたちとともに
霜野 孝充
学年・学校行事
「総合的な学習」を生かして、異年齢・親子で楽しめる「ふれあい祭り」を
澤田 好江
部活動・クラブの指導の工夫
「自分の山」を登る楽しさ
後藤 義昭
職員室の対話
夏の夜の職員室での対話
猪野 善弘
手をつなぐ―親と教師
教師が家庭のことに、首を突っ込む時……
安村 比佐夫
私が教師を続けるわけ
子どもと共に楽しくやってこられたから
村木 幸廣
若い教師のメッセージ
生活指導と出会って
佐藤 智美
案内板 集会・学習会のお知らせ
教育情報
「どうする?若者支援〜教育・福祉・労働をつなぐ〜」シンポに参加して
志賀 廣夫井本 傳枝
読者の声
10月号を読んで
指標改定への意見
再び全生研指標改訂問題について
川村 肇
〈新討議資料〉全生研「指標」改定案
全生研常任委員会
編集後記
井本 傳枝

今月のメッセージ

若手教師とベテラン教師の異世代間協同から新しい学校づくりへ

和歌山大学教育学部 船越  勝


近年、大都市部を中心に、教員の大量採用が続いている。職場の高齢化が長年問題にされてきたが、若手教師が職場に配置されるなかで、職場の教員の年齢構成も大きく変わって来つつある。しかし、若手教員の大量採用のなかで、私たち教師をめぐる今日の問題が新たに見え始めてきたとも言える。それは、新たに採用された少なからぬ若手教師が、実践的な困難を抱えているということである。

せっかく正規採用になったにもかかわらず、実践的な困難から、休職や退職を余儀なくされる若手教師は、決して一部ではない。ある教育委員会では、新採教員のうち約20%が1年以内に退職したという状況もあるのである。しかし、こうした状況は、若手教師に顕著に表れている状況であるとともに、同時に、私たちすべての教師にかけられている「攻撃」としてもとらえていく必要がある。

では、こうした若手教師の自立をどのように構想すればいいのか。いいかえれば、そもそも教師になるとは、どういうことなのであるか。それを三つの立場に分けて、見てみよう。

第一は、「制度的な自立」である。具体的には、教員採用試験に受かることが教師になるという意味にとらえるものである。つまり、最も日常用語のレベルでの意味を示している。しかし、この立場では、教師とはそもそもどのような関わりをする存在なのかという本質的な問いかけがない。

第二は、「体制的自立」である。これは、学校や教員を支配しようとする勢力に合わせた「自立」で、今日、様々に強められている傾向である。この立場は、むしろ自立というより、服従ないし従属といった方が、問題の本質をよく表している。

第三は、「関係的な自立」である。それは、子どもや保護者に教師として、人間として関わり続けるなかで、未熟ではあっても、「一人前の教師」として認めてもらうことによって、教師になるととらえる立場である。私たちは、基本的にこの立場で、教師の自立を考えるものである。

私たちは、今日の教員の大量採用時代を、否定的にではなく、若手教師とベテラン教師による異世代間協同による新しい学校づくりの可能性が広がる状況ととらえたい。そして、そのためには、次のような三つの若手教師が育つ「場」を創ることを大切にしていきたい。

世代間継承という視点から見れば、若手教師を育てるのは、個々人の問題ではなく、学校というコミュニティの存続をめぐる課題だととらえることが重要である。さらにいえば、私たち市民社会のあり方にも関わってくる。したがって、若手教師が育つ「場」づくりとして、まず第一に、職場づくりが問われなければならない。さらには、組合分会、サークルづくり、教師の個人が行う塾など、様々な「場」で、それぞれの持ち味を生かしながら取り組まれる必要性がある。

第二に、若手教師の関係的自立を追求する実践は、同時に最も困難な生徒を見捨てずに、学校全体として取り組む体制を創ることであり、言い換えれば、学校づくりのプロセスそのものである。私たちは、かつて1970年代に若手教師の大量採用を受けとめるなかで、学校づくりと民間教育運動の発展を創り出す経験をしてきたが、いまその状況の再構築が求められている。

第三に、そのためには、戦後の民主教育を担ってきた団塊世代の役割が、今日とりわけ重要である。団塊世代が行うべきことは、上述の課題の先頭に立つことである。それは、「教師塾」による教師の自立の「囲い込み」に抗して、体制的自立ではなく、関係的自立へと若手教師を開いていくとともに、戦後教育の「理想」を守り、発展させていくことにもつながっていくのである。そうした志を持って、これからの生活指導実践と運動に取り組もう。

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