教育オピニオン
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魔の6月を乗り切る学級経営術
広島市立広島中等教育学校水登 伸子
2016/5/15 掲載

1 「○○月の学級経営」って?

 この原稿の依頼を受けた時「魔の6月を乗り切る」って、すごいな…と思いました。「キャッチコピーが大切」とか授業で言ってるけど、ふむふむ、本物の編集者さんはこういう切り口で読者を引きつけるのだな。続いてその依頼文には「学級経営にゆるみのでてくる6月をどのような心構えで乗り切ればいいのか」とあり、「なるほどー。6月は学級経営にゆるみがでてくるのか!」と、ますます感心…したのですが、私、6月の学級経営に「ゆるみ」がでたことがあったっけ?と、とりあえず去年の日記を読み返してみました。(こういう時、日記って役に立ちます。)
 6月1日が月曜日で高校生(中高一貫なので)の悩み相談にのる、火曜日:道徳の出張研修会で爆笑がとれてうれしい、水曜日:朝の校門指導で同僚と「モノマネして」などと登校して来た生徒にからむ、木曜日:放送部から「水登先生の元気の源は?」の取材を受けて撮影がある、金曜日:3年生の男子達と合唱バスパートの見本レコーディングをし、CDを作って全学年に配る、土曜日:午前中は部活、午後は小学校教員になった教え子がやって来て、国語の指導案を一緒に考える。
 …最初の一週間でこれですわ。次の週からは合唱の取り組みが始まるわ、部活の試合はあるわ、考査はあるわで一切余裕なし。そして、そんな私のバタバタを「ありゃりゃー。先生って大変ですねー」と思いながら見て、必死でついてきていたのが、当時1年生だった我がクラスの生徒達です。もう6月だろうが何月だろうが、1年間に渡って生徒の気持ちに、ゆるむひまなし。もしかしたら、担任が飛び回っていて、「自分達ばかりに注目している閉塞感」がないのも、良いのかもしれません。
 私、「ここは少し泳がせてぶつかり合いを仕組もう」とかいう度胸がないんですよ。ずーっと「私も頑張ってるから、みんなも頑張って!」しかない。もはや全く「学級経営術」の答えになっていませんが、そういうタイプの先生にとっては「自分のやっていることや考えを生徒に見て、知ってもらう」ことが必要な訳で、それに有効なのが「学級通信」という名の、実は「担任広報誌」です。

2 学級通信で「私」を知ってもらう

 私は教員になって4年目くらいから、ずっと週末に学級通信を出すという習慣を崩していません。1回崩すと「今週はもらっていない」という生徒の言い訳が家庭に通用するようになるからです。最初の懇談会で「絶対週末に出しますから催促してください」と保護者に言います。内容のほとんどは、生徒が書いた「お題日記」から。これは毎日の終学活でテーマを決めて書かせているものです。
 例えば今週号は「校外学習で飯ごう炊さん。理想のカレーは?」。(これが学級通信の内容か?という疑問はさておき)、生徒の書いた文章を紹介する前に、「いよいよ校外学習が近づきました! カレーの思い出といえば、私・・・」と、まず自分自身のカレーにまつわる話を書きますよね。つまり、うちのクラスの生徒も保護者も、毎週一回は私の人生の一端を知ることになるのです。それは中学生時代の私の話だったり、今週エライ目に遭った話だったり、いろいろです。夏休み前の三者懇談で初めてお会いする保護者が、妙にフレンドリーに笑顔で接して来られる理由はそこだと思います。
 中学生(と先生達)の1年間は本当に忙しくて、もし「ゆるみ」を感じる月があるとすれば、それは先を見越して動き始めていないだけです。その学年が始まったばかりの頃に、先を見越すのは先生の役目だけれど、先生がそのプロセスも含めて発信していけば(「こんなこともあろうかと思って、先生はこんなことも準備していたんじゃー!」と威張ると良いです。)段々生徒もそれができるようになり、「今は体力的にも精神的にも大変な時期だから、これでいっぱいいっぱいだな」とか「もっとやれるはず。はっぱかけようか。」などの見極めがお互いに(ここが大切!)できるようになります。そうなったら、その学級の「学級経営」は、先生と生徒の共同経営。それこそ最強です。

水登 伸子みずと のぶこ

1960年、広島県呉市生まれ。現在、広島市立広島中等教育学校勤務。広島市中学校教育研究会道徳教育部会部長。以前、明治図書『道徳教育』に連載していたご縁で、昨年『「特別の教科 道徳」の授業づくり 集中講義』という本を出させていただきました。道徳の授業に関する話の他にも、若い先生方の役に立つ(と信じている)いろいろな話題を載せています。また、道徳の授業の基盤となる学級作りについての章もありますので、ぜひご一読ください。現在は、文章中にある「お題日記」や「学級通信」の詳しい内容について、まとめているところです。

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