今こそ身につけたい!国語科指導技術・ニューノーマル
理論×実践に裏打ちされた指導法で教育界を牽引する土居先生が贈る、国語科授業における“新”指導技術!
国語科指導技術・ニューノーマル(7)
説明文教材の指導技術
必ず“言葉”を拠り所にする/題名から「問いの文」を予想する
神奈川県川崎市立はるひ野小学校土居 正博
2021/12/5 掲載

「題名読み」をスキルにまで高めるには?

 題名から説明文の文章内容を予想する「題名読み」は、説明的文章指導においてはかなり広がり、一般的になってきました。題名から内容を予想することで、読みの構えができ、その後の読解がスムーズに進むというメリットがあります。

これまでの国語授業

「〇〇という内容だと思います。」と内容を予想させる

 しかし、ただ「〇〇という内容だと思います。」などと漠然と内容を予想させるだけではあまり力はつきません。必ず題名のどの言葉から(根拠)どう予想したのか(主張)それはなぜか(理由付け)をノートに明確に書かせるようにしましょう。

 例えば「『鳥獣戯画』を読む」(光村6年)では、次のように指導します。

T「今日から学習する説明文は「『鳥獣戯画』を読む」という文章です。この題名から、どんな内容が説明されていそうですか。ノートに「〇〇という内容だと思う。なぜなら〜〜と書いてあって、××だから。」と書きましょう。」
C「鳥が出てくると思います。鳥という字が入っていて、普通は鳥と書かれていて出てこないということはないからです。」
C「獣も出てくると思います。獣という字が入っていて、これも出てこないのにわざわざ書かないと思うからです。」
C「ぼくは、鳥と獣が戦う話だと思います。鳥と獣という字の次の字が、戦うという字に似ているからです。」
T「なるほど。確かに似ているね! だからそう考えたんだね。でも、同じ字かな……?」
C「私は鳥と獣が遊ぶ話だと思います。なぜなら、戯という字は戯れるという字で、遊ぶという意味だからです。」
T「あ、これは戯れるでしたか……なるほど勉強になったね。」
C「私は、鳥獣戯画、という作品の話だと思います。なぜなら、画は絵を表していて、しかも鳥獣戯画には『』(カギかっこ)がついているので、これは作品だということを表していると考えたからです。」
T「なるほど! 絵の作品なのね。画という字と『』(カギかっこ)からそう考えたんだね。すごい。でもそうすると、なんだか違和感がある言葉がないですか……?」
C「あ! 読むという言葉がおかしいです!」
T「お、どうして?」
C「絵なら、普通“見る”なのに“読む”となっています。」
C「たしかに!」
T「本当だ。見る、と読む、どう違うかな……?」

 いかがでしょうか。このように言葉を拠り所として、題名から本文の内容に迫っていきつつ、言葉から考える、言葉と言葉とを比較するなど、確かな言葉の力をはぐくんでいくことができます。

国語科指導技術・ニューノーマル

必ず“言葉”を拠り所にする

ここがポイント!

  • 「題名読み」を意味ある時間にするためには、拠り所となる“言葉”の教材研究が必須!

「題名読み」を次時につなげる活動にするためには?

 題名読みに関する指導技術は他にもあります。
 題名から「問いの文」を予想する、という学習活動です。この活動では、まず題名だけを子ども達に示します。その後、「この説明文には、問いが三つ出てきます。どんな問いが出てきそうですか。考えてみましょう。」と発問・指示します。

 子ども達は初めこそ戸惑いますが、題名の言葉を拠り所として、実にいろいろな角度から考え、問いを予想してきます。実際に書かれているものでなくとも、「ありそう!」と思えるものもたくさん出てきます。
 こうして出し合った後は、問いが一気に複数出されるような説明文(○○はどのようなものがあるのでしょうか。またそれはなぜつくられたのでしょうか。のようなもの)でなく、問い→答え→問い→答え→問い→答え(○○は100%と言えるのでしょうか→答え→それでは、100%に近づけるためにどのような努力がされているのでしょうか→答え→…… のようなもの)であれば、「みんな、たくさん問いを出してくれましたね。どれも題名の言葉からよく考えられていました。今回筆者が出す問いはこの三つです。(問いの文の正解を見せる)では、これはどのような順序で説明されると思いますか。予想してみましょう。」と、正解を教えた後、今度は順序を予想させます。

 これも非常に面白いのでやってみてください。
 子どもは問いの文の言葉をよく見て、それらがどのように繋がっていくだろうかと予想します。子ども達にその考えを説明させると、「初めは具体的な話をして、読者をひきつけて、次に……」などと筆者の意図を予想してみたり、「初めはみんなが知っている話題から入って、その後少し難しい話をしていくはずだと思うから……」と読者が読みやすい順になっていると仮説を立てて考えたりする子が出てきます。
 問いと問いとがつながっていき、筆者が説明を展開していくような説明文にはもってこいの活動です。あえて題名だけ、問いだけを見せて文章内容や文章展開を予想することで、子ども達の思考は活性化します。題名から内容を具体的に予想するための手立てとして、この「問い予想」「問いの順序予想」は有効なのです。

 本文に入る前から白熱した議論を展開できます。そうして初読に入ると、ある意味子ども達の中では「答え合わせ」みたいな感覚で楽しく読むこともできます。

これまでの国語授業

本文から「問いの文」を探す

国語科指導技術・ニューノーマル

題名から「問いの文」を予想する

ここがポイント!

  • 題名だけに絞るからこそ、読みたい気持ちが高まる。

土居 正博どい まさひろ

1988年,東京都八王子市生まれ。創価大学教職大学院修了。川崎市公立小学校に勤務。国語教育探究の会会員(東京支部)。全国大学国語教育学会会員。国語科学習デザイン学会会員。全国国語授業研究会監事。教育サークル「深澤道場」所属。教育サークルKYOSO’s代表。『教師のチカラ』(日本標準)編集委員。

(構成:林)
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