きょういくじん会議
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故意の敗戦で指導者処分! 教育とスポーツの関係とは?
kyoikujin
2009/4/28 掲載
部活動と生徒指導―スポーツ活動における教育・指導・援助のあり方

 22日の朝日新聞の記事によると、新潟県教育委員会は、今年の1月に新潟市内で行われたフットサルの大会で、選手にわざと負けるように指示した中学生チームのコーチであった教頭を、地方公務員法の信用失墜の行為にあたるとして、減給1か月(10分の1)の懲戒処分としたとのこと。この教頭も、教育的配慮を欠いた、と反省しているとのことですが、この事件は、学校教育とスポーツの関係が抱える問題点を明らかにしたといえるかもしれません。

 記事によると、この試合は、わざと負けるように指示されたチームの6連続オウンゴールを含む0対7での敗戦となったようですが、県教委は「生徒を指導すべき立場にありながら、通常あり得ない作戦をとり、子どもや保護者に与えた影響は大きい」と指摘し、「メディアで全国的に取り上げられる事態で、著しく教師への信用を失墜させた」と判断し、この教頭を懲戒処分としたようです。また、9日の朝日新聞の記事によると、日本サッカー協会からも12か月のサッカー関連活動停止処分が出されており、異例とも言える厳しい処罰が下される結果となりました。

 このような厳しい処罰がくだされた背景には、学校現場におけるスポーツ活動には教育的な要素が大きく期待されている、という事が影響しているのかもしれません。勝利を優先させるべきか、教育的な要素を優先させるべきかという問題です。
 新学習指導要領の第1章の総則の中には、

生徒の自主的、自発的な参加により行われる部活動については、スポーツや文化及び科学等に親しませ、学習意欲の向上や責任感、連帯感の涵養等に資するものであり、学校教育の一環として、教育課程との関連が図られるよう留意すること。

とあり、学校現場での部活動が学校教育の一環であるとはっきり述べられています。また、その目的も、スポーツや文化及び科学等に親しませ、学習意欲の向上や責任感、連帯感の涵養等に資するもの、とあり、今回の事件が上記の目的から著しく逸脱していたということは認めざるを得ないでしょう。
 勝利すること、また優勝することが優先されるプロの世界においては、次の試合のことを考えて、(わざと負けることは少ないにせよ)引き分けを狙ったり、メンバーを落としたりして試合に臨むことは珍しくありません。もしかしたら、この教頭も子どもたちを優勝させてあげたい一心で、このような指示を出したのかもしれませんが、学校教育の一環である部活動での試合として、フェアプレーの精神や対戦相手に対する敬意が、著しく欠けていたと言わざるをえないでしょう。
 日本サッカー協会でも、育成年代であるユース世代での大会は、トーナメント戦のみの一発勝負が多いことを危惧して、数年前から各地でリーグ戦を行うといった環境の整備を進めていました。その場での勝った、負けただけでなく、敗戦を通じて得るものがあり、出てきた課題を克服していくことでの成長があるということを指導してきており、今回の事件で言えば、対戦相手も自分たちも得るものが何もない試合をしてしまったという点で、この育成の目的から外れており、厳しい処罰へとつながったのかもしれません。

 部活動の顧問をされている先生であれば、このような試合の勝ち負けだけでなく、レギュラーの選手を選ぶ基準(練習にまじめに参加する選手か、出ていなくても上手い選手か)や、プレー中のマナー(わざとファウルをするように指示するか、審判への異議を言うべきか)など、さまざまな局面で勝利を優先するべきか、教育的な要素を優先するべきかの判断をしなくてはならないかもしれません。部活動は、子どもたちにとって学校生活の大きな部分を占めているのも事実であり、今後もこのような問題について、細かい配慮をはらっていく必要がありそうです。

この記事は、『きょういくじん会議』の記事を移転して掲載しているため、文中に『きょういくじん会議』への掲載を前提とした表現が含まれている場合があります。あらかじめご了承ください。
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