きょういくじん会議
まじめなニュースからやわらかネタまで、教育のことならなんでも取り上げる読者参加型サイト
シリアスゲーム―教育にゲームを活用する
kyoikujin
2009/1/21 掲載
テレビゲーム教育論―ママ!ジャマしないでよ勉強してるんだから

 15日の産経新聞によれば、医療や教育といった社会的な問題解決にゲームを役立てる、シリアスゲームという考えが広がっているそう。ゲームといえば勉強の妨げになる、キレやすくなる、コミュニケーション能力が低下する、等々と批判されることも多いものですが、そこに一石を投じることはできるのでしょうか。

シリアスゲームとは

 2004年12月20日のRBB TODAYの記事によると、アメリカでは何年も前からシリアスゲームを真面目な研究対象として捉え、教育や医療などの分野へ積極的に応用しているようです。

 そもそもシリアスゲームとは何なのか。まだ歴史も浅いため、シリアスゲームの定義をずばりと示す事は難しいのですが、シリアスゲームを専門に製作しているSGラボでは、

コンピュータゲームが持つ表現メディアとしての機能を活かし、教育・コミュニケーションツールとして社会的目的の達成に役立てようというのがシリアスゲームの概念

としています。ここで言う「表現メディアとしての機能」とは、ただ情報を受け取るだけでなく自分で操作していくこと、といったところでしょうか。単純に楽しむだけのゲームではなく、そこから何かを得られるもの、とも言えそうです。ひとつ例を挙げるなら、WFP(国連世界食糧計画)の食糧支援の仕事を疑似体験する、FOOD FORCEというゲームがあります。無料でダウンロードできるので、興味のある方はお試しを。

 日本ではアメリカに比べまだまだシリアスゲームへの認知度は低いですが、例えばニンテンドーDSでは脳を鍛えると謳ったソフト、「脳トレ」がヒットを記録し、こちらも人気となっているWii Fitでは手軽にフィットネス体験ができるなど、ここ数年で従来とは違う、新たな形式のゲームが生まれています。楽しめ、そして得るものがあるという点から、これらもシリアスゲームのひとつと言えるかもしれません。そう考えれば、日本でもシリアスゲームが身近になってきている、と捉えられます。

シリアスゲームが注目される理由

 日本でシリアスゲームの存在を広めているシリアスゲームジャパンの藤本氏が、前述したRBB TODAYの記事の中で語っているところでは、

  1. 現実には危険、高コストな環境を低コストで再現できる
    (例:フライトシミュレータ、医療実習用シミュレータなど)
  2. 学習者を引きつける効果がある
    (例:内装などで変わる導線が反映されるレストラン経営シミュレーション「レストランエンパイアなど」)
  3. 従来の教育手法では教育しにくかったことを教育できる
    (例:大学経営シミュレーション「Virtual-U」など)

とのこと。特に教育に活かしていくことを考えるなら、この中で魅力的なのは、やはり2番でしょう。冒頭で挙げた産経新聞では、「大航海時代Online」という一般に発売されているゲームソフトを歴史の授業で使用したところ、理解の向上に一定の効果が見られた、という事例が取り上げられています。楽しみながら学んでいける、というのはまさに理想的な学習のスタイルではないでしょうか。

 もしも今後、ゲームがより本格的に教育に取り入れられるようになれば、お母さん達の叱り方も、「ゲームばかりしていないで勉強しなさい」から、「早くゲームをやりなさい」となる時が来る、かもしれませんね。

この記事は、『きょういくじん会議』の記事を移転して掲載しているため、文中に『きょういくじん会議』への掲載を前提とした表現が含まれている場合があります。あらかじめご了承ください。
コメントの受付は終了しました。