著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
「当たり前の意見」だけを言わない道徳授業をつくる
創価大学大学院教職研究科教授石丸 憲一
2023/5/24 掲載
今回は石丸憲一先生に、新刊『道徳科授業サポートBOOKS 「ザワつく」道徳授業のすすめ』について伺いました。

石丸 憲一いしまる けんいち

創価大学大学院教職研究科教授。兵庫教育大学大学院修了。

―道徳が教科となって以来、「考え、議論する」道徳授業が日々行われています。本書で提案する「ザワつく」道徳授業とはズバリどんな授業のことを指しているのでしょうか。

 「考え、議論する」と言いながら、真の議論になっていないように感じています。それは、やはり、先生方が正しい意見、まっとうな意見を心の中では求め、それを子供たちが感じて答える形になっているからだと思います。逆説的に言えば、そういう「当たり前の意見」を言わないような授業をつくることが議論のスタートになると考えています。

―本書では「問題の本質」として挙げられた5パターンの型とともに授業プランが多数紹介されていますが、読者の先生方にどのように活用していただきたいと思いますか。

 5つの型は「わかりきったこと」を先生方が感じやすいようにと、子供たちの思考パターンから割り出したものです。この5つの型と授業モデルを照らし合わせることにより、どういう問いが「わかりきった」発問、あるいは「子供たちにとって切実な」思いから生じた発問かを見分けられるようになります。もし本書で取り上げた教材で授業することがあればモデル通りやってみてください。その上で、授業モデルの発問を参考にご自分なりの「ザワつく」授業にしていただければと思います。

―「問題の本質」をつく発問には、教師でも回答に迷うようなものもあるかと思います。子供の反応が印象的だった発問には、どのようなものがありますか?

 例えば、「自然愛護」をテーマにした授業では、何も工夫しなければ子供たちからは「自然は大切」「守らなければ」というような建前を前提とした意見ばかりが出されます。「みんなはできているの?」と問うても、子供たちからは、「大人が自然を壊している」「地球温暖化と言いながら二酸化炭素を出し続けている」ことが指摘されます。そこで、「将来を生きるのはみんななのだ。このままで大丈夫だと思う?」と言うことでやっと本気の話し合いが始まります。「自分たちの未来」を想定させることが「問題の本質」に迫ることになるのです。

―道徳授業は1時間1主題で完結します。話し合いや振り返りの時間を確保するために、授業づくりをする上でのポイントや気をつけることはありますか?

 従来の授業では、導入に必要以上に時間をかけることが多く見られました。本時の内容項目についての子供たちの事前の受け止め方を探り、教材の理解を丁寧にすることで子供たちがより考えるようなると信じてやってこられたのだと思います。でも、内容項目の捉え方の把握や教材の理解は、教材の中心部分に「いきなり」ズバッと切り込むことで、十分に捉えたり子供たちが理解することができますし、余計な先入観を持たずに話し合いに臨むこともできるのです。何より考え議論する時間の確保が重要なのです。

―最後に、全国の道徳授業に携わる読者の先生方へのメッセージをお願いします。

 教科の授業は数時間1単元の構成となっており、1単元を通じて子供たちのよい表れを求めることはなかなか難しいものです。しかし、道徳授業は1時間で完結します。子供たちにとっても教師にとっても、1時間に全力を傾けることで、自信を持つことをしやすい教科なのです。授業が変わることは子供にとっても教師にとっても大きなことですが、ぜひ「ザワつく道徳授業」を実践して、授業はうまくいくものだという実感を体験してみてください。それであなたの授業が変わります!!

(構成:木山)
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