著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
『私たちの道徳』で道徳科の授業を構想しよう
京都市教育委員会指導部長柴原 弘志
2015/3/4 掲載
今回は柴原弘志先生に、新刊「『私たちの道徳』完全活用ガイドブック 中学校編」について伺いました。

柴原 弘志しばはら ひろし

京都市教育委員会指導部長。
昭和30年、福岡県生まれ。京都大学教育学部卒業。
京都市立山科中学校、向島中学校、深草中学校を経て、京都市教育委員会学校指導課指導主事(主として道徳・特別活動領域担当)。
平成13年から文部科学省初等中等教育局教育課程課教科調査官。その後、京都市総合教育センター副所長、京都市立下京中学校校長等を経て、現在、京都市教育委員会指導部長。
平成26年中央教育審議会道徳教育専門部会主査代理。

―本書には、文部科学省発行・道徳教材『私たちの道徳』の様々な活用法が掲載されています。ズバリ、本書のウリは何でしょうか?

 検定教科書を使用した「道徳科」の授業を、本格実施以前に具体的なイメージをもとに構想し、創意工夫のある展開を試みることができるということです。文部科学省の説明によると、小学校での検定教科書の使用は平成30年度からであり、中学校は翌平成31年度からということです。だからといって、それまでの間、これまでどおりの道徳授業をしておくということではなく、検定教科書の一つのモデルとしての側面も有する道徳教材『私たちの道徳』を最大限に生かした道徳授業に取り組んでおくことは、各校における新学習指導要領のもとでの道徳教育充実に向け、極めて有意義なことといえます。

―本書には、道徳の時間における様々な事例が掲載されています。「副読本との併用が難しい」という声もありますが、効果的な活用法を教えてください。

 今回の改訂では、検定教科書の使用後も、教科書だけでなく多様な教材を併用することが求められています。そうした意味からも、本ガイドブックに紹介している事例を参考にして、読み物資料を一部に含む道徳教材『私たちの道徳』の効果的な活用に取り組むことで、副読本との併用のノウハウをつかんでいただけるのではないかと思っています。

―本書では、道徳の時間だけではなく、他教科や領域での活用法も数多く掲載されています。その理由はなぜでしょうか?

 道徳教材『私たちの道徳』は、道徳の時間はもとより学校の教育活動全体を通じて、また、家庭や地域においても活用されるものとして作成されたものです。加えて、このたび示された中学校学習指導要領案には、「学校における道徳教育は、特別の教科である道徳(以下「道徳科」という。)を要として学校の教育活動全体を通じて行うものであり、道徳科はもとより、各教科、総合的な学習の時間及び特別活動のそれぞれの特質に応じて、生徒の発達の段階を考慮して、適切な指導を行わなければならない」とあります。これまでの道徳の時間と同様に、道徳科の時間も学校における道徳教育の「要」として位置付けられているものであり、道徳教材『私たちの道徳』が他教科や領域でもその機能を十二分に発揮できるよう、本ガイドブックを大いに活用していただければと思っています。

―ところで、新学習指導要領の改訂案が示されました。今後、どのように道徳授業づくりを進めていけばよいとお考えですか?

 このたびの中学校学習指導要領案において、道徳科の目標は次のように示されています。「(前略)よりよく生きるための基盤となる道徳性を養うため、道徳的諸価値についての理解を基に、自己を見つめ、物事を広い視野から多面的・多角的に考え、人間としての生き方についての考えを深める学習を通して、道徳的な判断力、心情、実践意欲と態度を育てる」
 ここで求められている目標を実現するための道徳授業づくりのポイントは、4点です。第1は、目標中に示された学習活動となるために効果的な教材を選定し活用することです。第2は、各時間のねらいをより具体的なものとして明確化し、そのねらいの達成につながる発問をしっかり吟味して設定することです。第3は、生徒はもとより、時にはその授業に参加している者の、多様な感じ方・考え方が大いに交流される場を大切にすることです。そして第4は、生徒における毎時間の授業の振り返りや受け止めを授業の改善・充実に生かすことだと考えています。

―「『私たちの道徳』を活用しよう!」と、本書を手に取った読者の方に、メッセージをお願いします。

 本ガイドブックには、これまでのQに対する回答のエッセンスが、具体的な実践事例と共にすべて盛り込まれています。新たな道徳科の授業にもつながる、生徒の心に届き、心に響く道徳授業づくりに大いにご活用ください。

(構成:茅野)

コメントの一覧
1件あります。
    • 1
    • けいこ
    • 2015/7/9 9:41:20
    柴原君に会いたいなあ
コメントの受付は終了しました。