- まえがき
- 第1章 ピアジェ理論の背景と発達段階
- 1 感覚運動期
- 2 前操作期
- 3 具体的操作期
- 4 形式的操作期
- 第2章 ピアジェ理論と幼児教育
- 分類
- 系列
- 保存性
- 記憶と知能
- 第3章 子どもの世界観
- 1 知性と感性
- 2 アニミズム
- 3 子どもの道徳判断
- 4 部分的な思考
- 5 上位概念と下位概念
- 6 自己中心性
- 7 模倣活動と補足活動
- 第4章 ピアジェ理論を保育実践に
- *幼児の活動と系列
- (1) はじめに
- (2) 系列の単元
- (3) 導入教材1(自作)
- (4) 応用〔T〕―そんごくう・その1
- (5) 応用〔U〕―そんごくう・その2
- (6) 導入教材2(自作)
- (7) 応用―屋外活動
- (8) 留意点と考察
- *幼児の活動と保存性
- (1) カトレア幼稚園の紹介
- (2) よき先生,仲間との出会い
- (3) ジュネーブを訪ねて
- (4) 高い水準の教材・「ペタペタシール」
- (5) カトレア幼稚園の「育み」
- (6) 保存性について
- *幼児の活動と集合
- (1) 保育実践園の紹介
- (2) 「ペタペタシール」教材について
- (3) 使ってよかった「ペタペタシール」教材
- (4) 「ペタペタシール」教材を使った「集合」の概念
- (5) 「ペタペタシール」教材の実践保育
- (6) 実践保育における導入の実例
- (7) 「ペタペタシール」教材の発展性
- (8) 日常保育への発展性
- (9) 実験…1年を振り返って
- *提案:プロップ・ボックスの紹介
- (1) プロップ・ボックスとは
- (2) 研修会で発表されたプロップ・ボックスの例と斎藤先生の講演
- (3) なぜプロップ・ボックスを提案するのか
- (4) プロップ・ボックスとプレイ・コーナーを準備する
- (5) プロップ・ボックスの例:ファーストフード・レストラン
まえがき
ピアジェ博士は20世紀の発達心理学の父として,もっとも世界の教育に深く影響を与えました。ピアジェ理論は,「3つ子の魂100までも」という先人の教えを実証し,私たちに0才〜7才までの教育環境で,子どもの人格形成は決まるという確信をもたらしたのです。1対1で行う臨床診断法で我が子や数多くの子どもを観察した中で,「子どもは大人のミニチュアではなく,子どもの発想は子ども自身独自のものである。」と,大人の観点から決めつけることの誤りを指摘しました。子どもが本来自ら働きかけ考える力を獲得する能力があるという「自発性」を発見したり,大人のように客観性に欠ける「自己中心性」を発見しながら,子どもの行動を分析し「認識論」として体系化いたしました。ある意味では,ピアジェは徹底した現場主義者で,子どもの活動の中からピアジェ理論は構成されています。私たち現場の教育者は,1つ1つの理論が目の前で次々と実証されていくのを肌で感じ,幼児教育の環境には必要不可欠であると確信いたしました。ピアジェが現れるまでは,心理学者と現場の教育者とは大きなずれがありました。なぜなら,子どもの活動を通さない理論は机上の空論に過ぎず,現場教育には適さなかったからです。私どもは長年のピアジェ理論をいかに現場教育に適用すればよいか,教材を開発したり現場の先生たちの研修を行いながら,1996年には日本ピアジェ会を結成し,カリフォルニア州立大学院教授でピアジェ研究の第一人者である斎藤法子先生とともに,毎年春,夏に研修会を行っていますが,今般,ピアジェ理論を幼児教育にどのように実践すればよいか,広く多くの先生方や保護者の皆様に参考になればと,本著を刊行することになりました。21世紀を担う子どもの教育環境を整えるための一助となれば幸いです。
日本ピアジェ会会長 /松井 和男
-
- 明治図書