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体育授業を変えるコーディネーション運動65選
東根 明人 監修
は じ め に
T コーディネーション能力を高める運動の必要性(冒頭)
U コーディネーション能力を高める運動例65(冒頭)
V 授業におけるコーディネーション運動の実践(冒頭)
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は じ め に
小学校へのコーディネーション運動の導入 日本では今,少子化が進み,さらに昭和60年(1985)頃から体格は良くなっているものの,@体力・運動能力の低下,A身体を操作する能力の低下,B生活習慣病の危険性の高まりといった,懸念すべき状況が報告されています。 これらの直接的な原因として,@学校外の学習活動や室内遊び時間の増加による,外遊びやスポーツ活動時間の減少,A空き地や生活道路といった子どもたちの手軽な遊び場の減少,B少子化や,学校外の学習活動などによる仲間の減少をあげています(中央教育審議会,2002)。 私たち指導者は,心身ともに著しく発達する児童期に,何を,どのように,支援できるでしょうか。総合型地域スポーツクラブ,民間クラブ,スポーツ少年団等の活動の場はあるのでしょうが,全ての子どもたちが参加しているわけではありません。スポーツができる子どもや好きな子どもはいいかもしれませんが,図1のようにそうではない子どもたちもおよそ30%います(SSF笹川スポーツ財団,2003)。 (図1省略) 運動をする時間・空間・仲間が減少している現在,運動経験や運動の日常化のはたす役割は,これまで以上に重要になってくると考えます。特に,学校体育では身体の健全な成長を育むとともに,精神についても同様のテーマを解決できる教科ではないでしょうか。体力・運動能力の低下は,一般的に知られていますが,気力・意欲の低下を指摘する人も少なくありません。たとえば,「話さない,笑わない,すぐ切れる」に象徴されるような,情意面の課題です。 私はこれらの課題を解決する具体的な方法のひとつとして,コーディネーション運動が有効であると考えます。コーディネーション運動は,スポーツ種目や運動種目に対してどんどん細分化していく一方の,分析的な運動ではなく,全身をひとつにとらえ,統合的・科学的な視点に立った新しい運動法です。しかし,本書に紹介する運動例の多くは,先生方がすでに行っているのではないでしょうか。実践現場において,素早く動いたり,リズミカルな動きを養うためにコーディネーション運動とは知らずに行っていたと思います。今日からは,はっきりと自信を持って子どもたちに接してください。特にコーディネーション能力は,日本人が得意とする分野です。心身ともに柔軟で,吸収力のある小学校期に適切な刺激を与えてください。 とはいうものの,小学校の先生方は体育だけを行なっているのではありません。不得意な先生もいらっしゃると思います。そこで本書では,現在コーディネーション運動を授業に取り入れている先生方にご協力をいただき,初めての方でもすぐに現場に取り入れられるように,低学年・中学年・高学年別に具体的な展開例を掲載しました。さらに,運動の効果についても,身体面・情意面の測定内容と結果を提示してあります。 この運動のポイントは,「輝く笑顔と汗」。気持ちを解放して夢中になって動き,先生と子どもたちが一緒に運動の楽しさ・できる喜びを味わうことです。この体験があるからこそ,運動の日常化につながるのではないでしょうか。私たち人間は,楽しいと脳が活性化して意欲も湧いてきます。もう少しやってみようということにもなります。子どものときに,からだを動かす楽しさや喜びを体験しておくと,将来も気軽に運動に接することにつながると思います。 最後に,本書の出版・執筆にあたりまして,千葉県印旛村立六合小学校寺内章喜校長先生には,2003年12月からコーディネーション運動の実践と研究に全面的なご支援をいただき,心より御礼申し上げます。寺内校長先生の暖かな眼差しと,強い意志によりまして,先生方と子どもたちが一生懸命コーディネーション運動に取り組んで,数々の成果を挙げていただきました。今後も,モデル校として益々活発に活動していただきたくお願いいたします。さらに,千葉県浦安市立入船南小学校鈴木忠吉教頭先生には,教育委員会当時から格別なご配慮をいただきましたことに,紙面をお借りし感謝の意を表します。そして明治図書出版(株)の真鍋恵美様には企画から校正までご尽力をいただきました。本書がきっかけとなり,全国にコーディネーション運動が広がることを期待します。
2005年11月 /東根 明人
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T コーディネーション能力を高める運動の必要性(冒頭)
 1 コーディネーション能力とは
運動を行うには,運動効果器の正常な機能すなわち筋力や持久力のエネルギー系と関節可動性が必要なことはいうまでもありません。しかし,運動がある目的を達成する意味のある行為としておこなわれるのであれば,これらの要因だけで運動を合理的に実施することは不可能に近い。そこには,運動の調整(regulation)が不可欠となります(沖田,2003)。運動の調整は,神経系が知覚情報に応じて動員する筋の組み合わせと,それらの出力を適切に制御することによって行われています。つまり,身体動作に伴ういくつかの神経や筋肉群の同時的・共同的使用の機能であり,随意運動を目的に合わせて調整していく能力と捉えることができます(ハルトマン,1998)。この神経系による運動の調整能力をコーディネーション(協調性,協応性)といい,グルントラッハ(1996)は,動きを構成する要因として図2のモデルを提示しています。 (図2省略)
コーディネーション能力に関する研究は,人間の意志により制御されている多くの関節と筋の組み合わせによって実現される無限の運動の自由度をもった随意運動がどのようにして制御されているのかという,1967年の「ベルンシュタイン問題」に端を発しているといわれています(宮本,星,2003)。同時期,旧東ドイツにおいても運動の巧みさや巧緻性について,さまざまな検討が加えられていました。その中から,マイネルのスポーツ運動学を基盤に,シュナーベルが中心となり現在のコーディネーション能力の基本的概念を体系化しました。70年代には,ヒルツらが学校体育現場,ブルーメらは競技スポーツ現場を中心に研究と実践を重ね,その後の各競技連盟のプログラム開発の基礎を築いたと報告されています(東根,2002)。 パフォーマンスを構成する要因となると,動きの3要因に技術,戦術,経験,知識,心理,性格などが加わります。コーディネーション能力は,これらのどの要因とも密接に関わり,相補的な役割を担っており,図3に示した運動学的な五感といわれる知覚,聴覚,平衡感覚,皮膚感覚,筋感覚などの感覚受容器からの情報をスムースに収集し,運動効果器に指令を出すといった一連の運動プロセスを制御する能力ともいわれています。したがって,神経系の発達が著しい児童期において,全身の筋を使ったダイナミックな運動や感覚受容器にさまざまな刺激を与える多様な運動は,中枢神経系のネットワークを強化するだけでなく,筋組織や呼吸循環器系への刺激にもなるため,極めて重要であると考えます。 (図3省略)
2 コーディネーション運動の実際
動きやパフォーマンスを合理的に効率的に発揮するためのコーディネーション能力。この能力の内容については,図4のように7つにまとめられます。実際の運動は,ボールゲームを例にした図5(次頁)にあるような出現や順序性があり,これらの能力が一つ一つ単独に機能するのではなく,複数が組み合わされて実施されているのはいうまでもありません。たとえば,「あの子は運動神経がいい」とか「呑み込みが速い」といった表現をします。バランスをとるのが上手な人や,リズムに合わせて身体を動かすことが得意な人がいます。このような人たちの動きに隠されているのがコーディネーション能力です。 (図4省略)
ボールゲームなどで,ディフェンスがいないと素晴らしいプレーをするが,ディフェンスが入ると動きの滑らかさがなくなってしまう人は,コーディネーション能力の観点からディフェンスとの距離感に関わる「定位能力」,パスをするのかシュートをするのかあるいはドリブルなのかといった技術の対応を判断する「変換能力」に課題があるといえます。あるいは,シュートができなかった後の連続プレーが苦手な人は,「変換能力」と動作を滑らかにつなげる「連結能力」や緩急をつける「リズム能力」を高める必要があります。 その一例として,ボールを投げ上げて前転をしてキャッチ,あるいはターンをしてキャッチするのは,回転した後の平衡感覚を調整する「バランス能力」,ボールがどこに落下するかを予測し察知する「定位能力」,さらに一連の全身動作をスムースに行う「連結能力」を高める運動です。
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U コーディネーション能力を高める運動例65(冒頭)
 コーディネーション能力を高めるには,様々な運動が考えられます。 ここでは,
1 用具を使わないコーディネーション運動 2 マットを使ったコーディネーション運動 3 平均台を使ったコーディネーション運動 4 ボールを使ったコーディネーション運動 5 ゲーム形式のコーディネーション運動
と分類してご紹介します。 その運動を授業に取り入れることで,主運動の到達力および情意面で向上が期待できるとともに,結果として体力の向上につながるものと考えます。つまりコーディネーション運動は主運動の動きを習得する近道であるといえます。 是非,いろいろなコーディネーション運動にチャレンジしてみてください。 (図省略)
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V 授業におけるコーディネーション運動の実践(冒頭)
 1年 コーディネーション運動を取り入れた「鬼遊び」
1 単元について @運動の特性 鬼遊びは,「追う・逃げる」を楽しむ遊びである。場所や人数を限定したり,特定の場所や人を決めて簡単なルールで遊ぶことができる。 A子どもの実態における課題 この時期の子どもたちの実態として,本来遊びの中で育成されるべき基礎的な運動能力が身に付いていなかったり,体を動かす喜びを十分に味わってこなかったことがあげられる。加えて,今までの運動経験の違いなどからくる個人差も認められる。このような子どもたちに,体育学習を通して運動感覚づくりをし,さらに,学年の発達段階に応じ,安全面に対する意識や学習のマナーについても,運動を楽しむ中で身に付けさせることが大切であると考える。
2 コーディネーション運動を取り入れた授業づくりのポイント @コーディネーション運動導入の目的 コーディネーション運動は,基本の運動の考え方である「運動の楽しさにふれる」「運動の基礎基本を育成する」を踏まえ,様々な運動感覚づくりを行うことができる運動である。 そこで,一人で行う一般コーディネーション運動を取り上げ,いろいろな状況(運動の場・人との関わり等)での身体操作を経験させることとした。さらに,集団での遊び,特に,特定の技能を必要としない鬼遊びを取り上げることで,体を動かすことの楽しさや心地良さを体験させたいと考えた。 意のままにならない体を意のままに動ける体にすることは,体育学習やコーディネーション運動の大きな意義であり,今後の体育教材の学習につながることではないかと考える。
Aコーディネーション運動の解説 表 コーディネーション運動の能力分類 (表省略)
○ラダーステップ(ラダーを使ったケンパーステップ) 赤玉のない所はケンステップ,ある所はパーステップで行う。ケンステップの足は,同じ足で,左右交互にといった具合に条件を設定する。赤玉を置く場所は,その日の担当グループが決める。 >point> ケンステップの足,赤玉を置く場所を変えることで,従来の運動効果に加え,定位,バランス,識別能力の向上も図れると考えた。 (写真省略)
○ケンステップ(市販のケンステップを使ったケンステップ) 片足で跳べる間隔でケンステップを置く。ステップの方向(ケンステップの矢印)は,前方を基本にランダムにする。ケンステップの置き方は,その日の担当グループが決める。 >point> 着地の場所を限定したことにより定位能力,いろいろな方向へのステッピングによりバランス,識別能力の向上が図れると考えた。 (写真省略)
○ミニハードル(市販のミニハードルを使ったリズム走) ミニハードルを直線状(9m程度)に異なった間隔で置く。置く幅はその日の担当のグループが決め,2レーン運動の場を作る。運動は一方通行とし,走る速さについても意識させるとよい。 >point> ステップの幅や高さを意識してリズム走をすることにより,定位,バランス,識別能力の向上が図れると考えた。 (写真省略)
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