- 提起文 説明・説得の力が育つ算数授業
- 本当の説明・説得の力は自然な子どもの関わり合いの中で育つもの /田中 博史
- 特集1 説明・説得活動の重視で算数のどんな力が育つか
- 帰納的に考え説明する活動、演繹的に考え説明する活動 /坪田 耕三
- 聞き合う力。迷う力、創り出す力 /森本 明
- 考えを伝え合い、つなぎ合い数理のおもしろさを感じる! /青木 弘明
- 特集2 説明活動をこうして活かす
- 発想のズレを埋める /夏坂 哲志
- 説明活動で思考力を伸ばす!! /倉田 一広
- 「説明する活動」は二段階で。@説明したくなる場面を仕組み,A“手紙”にまとめる /木下 幸夫
- 関連付けた説明で、理解を深めよう! /盛山 隆雄
- 良質な学習材で子どもの考えを引き出し、友だちの考えを説明させる /林田 健一
- 「思いつきの言葉」と「非言語表現」 /藤本 邦昭
- 1・2・3月教材攻略法
- 1年 大きな数
- 同数累加で大きな数を作る /中田 寿幸
- 2年 10000までの数
- 操作的な活動を通して数の世界を広げる /橋本 哲志
- 3年 箱の形
- 箱を作るにはどうしたらいい? /樋口 萬太郎
- 4年 分数
- 分数学習で子どもがつまずきやすい場面を積極的に仕組む! /高瀬 大輔
- 5年 割合とグラフ
- 「差」ではなく「倍」で比べることの必要性に気付かせる「割合の導入教材」 /小松 信哉
- 6年 比例
- 授業に楽しさを /永田 美奈子
- コラム
- 子ども発見! /芳賀 均
- 面白教材・教具 /市下 望
- 連載
- 田中博史の算数 /田中 博史
- アメリカにおける教育改革 その3 /村田 亜季
- 提言
- 授業と力ずくの力 /正木 孝昌
- 教育評価を捉え直そう /二宮 裕之
- リレー連載
- 副編集長のリレー連載 /山本 良和
- 国語教師から算数教育へ /白石 範孝
- グラビア
- カードゲームで感覚豊かに遊ぶ! :構成 /田中 博史
- ※36〜37ページに第7回基幹学力研究全国大会のご案内があります。
- 提起文 論理的に説明・説得する力を育てる国語授業
- 「論理的」に話し、「論理的」に書き、説明・説得する力を育む /二瓶 弘行
- 特集1 論理的に話し、説明・説得する力を育む
- 「他者」との対話が論理を育てる /村松 賢一
- 物語文の読解で、論理的に話す子どもを育てる /齋藤 純一
- 「分かりやすく、分けて」話す /真鍋 佳樹
- 特集2 論理的に書き、説明・説得する力を育む
- 「論理語彙」を目安に思考の場を設定する―「行事作文」を例にして― /池上 幸治
- まずは論理的に考えるスキルの獲得を /小林 康宏
- 説得する必要感・切実感をもって書く経験からスタートしよう /井上 幸信
- 「明日」の国語授業を創る
- 物語 この授業で「言葉の力」をつける
- クライマックスを読み解き、作品全体をとらえなおす〜「一つの花」にこめられた願いをまとめる。〜 /松岡 俊宏
- 説明文 この授業で「言葉の力」をつける
- なりきることで創る実感のある読み /片山 守道
- 書く この授業で「言葉の力」をつける
- 書くことが大好きな子どもを育てる〜毎日の日記を通して /小田 浩平
- 聞く・話す この授業で「言葉の力」をつける
- クイズ番組をつくってみよう! /広山 隆行
- 古典・詩・俳句 この授業で「言葉の力」をつける
- 古の世界に思いを馳せ,自らの生活に引きつけて学ぶ古典学習 /田ア 伸一郎
- 漢字 この授業で「言葉の力」をつける
- 「部首カルタ」をつくって,活用できる力を! /遠藤 裕一
- ミニ連載 高知からの発信A
- 国語と算数教師ともに生きる熱き日々 /藤田 究・田中 元康
- リレー連載
- 私の学級づくりと「言語活動」 /小野 美和・加地 美智子
- 二十代先生の国語授業日記 /灘本 裕子
- 若き国語教師への手紙 /原 榮一
- 国語授業は学校を変える 研究主任奮闘記 /池田 直人
- 国語授業は故郷を変える 指導主事奮闘記 /村田 伸宏
- 連載
- にへいちゃんの国語教室通信 /二瓶 弘行
- 青木伸生の国語教室創造記 /青木 伸生
- 提言
- 「言葉の力」の豊かさと確かさと(続) /梶田 叡一
- グラビア
- デジタルカメラでぬいぐるみを撮影しての物語創作 :構成 /青木 伸生
算数 [提起文] 説明・説得の力が育つ算数授業
本当の説明・説得の力は自然な子どもの関わり合いの中で育つもの
筑波大学附属小学校 /田中 博史
(写真省略)
1 説明・説得の力が育つ算数授業、その3つの様相
新学習指導要領の目標のはじめに「算数的活動を通して」とある。これは算数の目標全体にかかる大切な言葉として位置づけられている。さらに解説書においては、わざわざ「例えば教師の説明を一方的に聞くだけの学習や、単なる計算練習を行うだけの学習は、算数的活動に含まれない」と付け加えている。
相変わらず多い教師の説明調の授業や教え込みの授業からの脱却を何とか実現したいという想いからだろう。
大人は自分が気持ちよく説明すれば、それが子どもに伝わると思い込んでいるが、小学生の子どもには思ったほど伝わっていないし、実はそれほど子どもも聞いてはいない。さらに大人の伝え方もそれほどうまくはない。
人間は、自分で知識を再現したときに、初めて自分のものとすることが出来る。
だから本当は説明している教師が一番学習していることになっている。笑えない現実である。
国語の世界では、早くから説得の技法などの学びを取り入れているが、算数でもその意識が必要である。
説得するには、相手意識が必要だ。単なる自己満足の説明と異なるのは、なかなか理解してくれない相手に自分の考えたことを伝えなくてはならないという必要感に支えられているという点で大きく異なる。
授業における説明活動は荒く分けて次の3つの様相があると私は考えている。
その1 自分が理解するための説明活動
他から聞いて、わかったつもりのことを再現することで自分の理解を確かめる活動。この場合は表現方法は未熟でも、一通りでも困らない。
その2 相手に伝えるための説明活動
自分の考えを、相手に伝えることを目的とした活動。この場合は、相手の理解度によっては、いろいろな表現方法を用いることが必要になる。一人よがり表現は役立たない。
その3 相手を説得するための説明活動
相手が自分と異なる意見を持つ場合は、説得するための様々な技法が必要になる。これはわからない相手に伝えるその2の活動とは、一段階レベルがあがる。相手もわかったつもりなのだ。それが違うということを説明するには、反例をあげるなどの技法が必要になる。
2 使い方も考えさせることが必要
上記のような子どもの表現力の育ちを意識すると、子どもたちが必要に応じて式や図、表やグラフが用いられることが大切なのだということがわかる。だが、算数の単元学習では効率を重視するためにどうしても、分断してその指導を繰り返す傾向がある。
もちろん何かを習得するには、必ず繰り返しが必要になるが、目的意識が乏しい活動になることが多く、活用できない技能になってしまうという反省がPISAの調査などでも浮き彫りになっている。
この反省は実は古くから成されていて、総合的な学習の誕生にもつながっていたはずだが、こうした初期の問題意識とはかけはなれた総合的学習になっているのが私は残念でならない。
目的は、子どもに必然的な場面をつくり、子どもたちが自ら必要な技能を選んで使うことを体験させることである。こう言うと短絡的な方はすぐに生活の中で…ということになるが、子どもたちが生活の中で活用できる場面がそんなたくさんあるかというと、現実にはそんなにない。
もっと子どもにとって一番身近で切実な「遊び」の中でそれを取り入れていくのがまずは自然でいいと私は考える。
最近、私が連載でとりあげているカードゲームは、こうした目的のため設定したものである。
「遊び」の中では、常に小さな『問題解決活動』が繰り返されている。子どもの必要感とは、こうした身近な中にこそある。(詳しくは連載にて)
子どもも、大人も必要感に支えられて取り組むときが一番力になる学習をしている。
近年、海外で何度も授業をする羽目になり、そのために必死で英語を学んだ私の実感でもある。
3 説明したくなるものを子どもの中に創る
人間は、何か面白いきまりを見つけると人に話したくなるものだ。それが自分しか気がついていないと思うと、得意気になって話す。
その発見を聞いていたみんなが感動したり、びっくりしてくれると次も見つけようと動き出す。これは生活の中で役立つからやっているわけではない。こうしたことが「面白い」からやっているのだ。このような知的な喜びを体験させることも人間教育の大切な視点である。
説明活動が重視されると、その形式だけを繰り返そうとする傾向が現場にあるが、子どもたちが説明したくなるものを創るための努力を教師がまずしないと駄目である。
まずは発見したと喜ぶ子どもの説明をじっくりと聞いてあげよう。時にはわざと聞き間違えるのもいい。すると聞いていた別の子どもが「そんなこと言ってないよ。Aちゃんはこう言ったんだよ」と説明してくれるようになる。こうして子どもたちが互いに補い合い、説明しあう授業が少しずつ出来上がっていく。大々的な形骸化した発表会をすることを求めているのではない。自然な関わり合いの中にこそ、育てたい大切な力はある。
新学習指導要領でいわれる『説明活動』が,これまでのような,“子どもたちが模造紙にまとめ,発表して,ハイおしまい!”ではいけないことは分かっていましたが,具体的な実践方法の提案に踏み込んでいるのが本書だと思います。
『提言』では,理論的な背景にもわかりやすく触れられます。
教育界の最新情勢についていけるだけでなく,熱い授業実践家たちの提案に大きな刺激を受けられる一冊です!