- はじめに
- 第1章 新しい時代の道徳授業
- 1 道徳性と道徳的実践力
- (1) 「要(かなめ)」が意味すること
- (2) 道徳性を養う
- (3) 道徳的実践力を育成する
- 2 道徳の時間の特質 ―授業の前に求められること―
- (1) 道徳の時間以外における道徳教育と密接な関連を図ること
- (2) 計画的,発展的に指導する
- (3) 補充,深化,統合を図る
- @補充
- A深化
- B統合
- 3 道徳の時間の特質 ―授業で求められること―
- (1) 道徳的価値の自覚を深める
- @道徳的価値を理解する
- A自分とのかかわりで考える
- B道徳的価値を自分なりに発展させていくことへの思いや課題が培われる
- (2) 自己の生き方についての考えを深める
- 4 低学年の子どもの傾向と道徳の時間の指導
- (1) 低学年の子どもの一般的な傾向
- @第1学年
- A第2学年
- (2) 低学年の道徳の時間での指導
- 第2章 小学校道徳授業内容項目別実践例 低学年編
- 1 子どもが自ら進んで,基本的な生活習慣を身に付ける [1−(1)]
- 2 自分のやるべき勉強や仕事をやって,達成感を味わおう [1−(2)]
- 3 正しいと思うことは勇気をもって行う [1−(3)]
- 4 「よいと思うことは進んで行おうとする態度を育てる」授業 [1−(3)]
- 5 正直に素直に伸び伸び生活しよう [1−(4)]
- 6 気持ちのよいあいさつは心をつなぐ [2−(1)]
- 7 身近ないろいろな人に温かい心で接し,親切にする 〜役割演技やペープサートを使って〜 [2−(2)]
- 8 友達の輪を広げよう [2−(3)]
- 9 友達と仲よくし,助け合うことで信頼や友情を育てる [2−(3)]
- 10 自分はいろいろな人に支えられていることに気付き,感謝する [2−(4)]
- 11 小動物との触れ合いの体験と関連させ,生命の大切さを考える [3−(1)]
- 12 動植物の死から,生命の大切さを考える [3−(1)]
- 13 身近な自然の中で遊んだり,動植物を育てたりする [3−(2)]
- 14 美しい心,すがすがしい心をもつ 〜資料提示の工夫などを通して〜 [3−(3)]
- 15 大切にしようみんなで使うもの [4−(1)]
- 16 しっかりと約束やきまりを守ろう [4−(1)]
- 17 みんなのためにできる仕事をする [4−(2)]
- 18 働く喜びを生きる力に [4−(2)]
- 19 家族の一員として役に立つ喜びを実感する [4−(3)]
- 20 先生,大好き! クラス,大好き! 学校,大好き! [4−(4)]
- 21 自分の住む町のよいところを見つめ,愛着を深める [4−(5)]
はじめに
○学習指導要領の改訂と道徳教育
今回の学習指導要領の改訂は,道徳教育の視点から考えると,昭和33年に道徳の時間が特設されて以来5回目となる。
学習指導要領を改訂するに当たっては,次のような基本方針が示された。
@教育基本法改正等で明確になった教育の理念を踏まえ「生きる力」を育成すること。
A知識・技能の習得と思考力・判断力・表現力等の育成のバランスを重視すること。
B道徳教育や体育などの充実により,豊かな心や健やかな体を育成すること。
豊かな心を育成する道徳教育については,子どもたちに基本的な生活習慣をしっかりと定着させるとともに,社会生活を送る上で人間としてもつべき最低限の規範意識を,子どもの発達の段階に応じて指導し確実に身に付けさせることが重視されている。また,その過程で,人間としての尊厳,自他の生命の尊重や倫理観などの道徳性を養い,それを基盤として,民主主義社会における法やルールの意義やそれらを遵守することの意味を理解し,主体的に判断し,適切に行動できる人間を育てるために,道徳教育を充実・改善することが必要であるとしている。
学習指導要領の改訂に当たっては,これまでも基本方針の中に豊かな心の育成など道徳教育の充実が示されてきたが,今回の改訂では,道徳教育が道徳の時間を要として学校の教育活動全体を通じて行うものであることを明確にした。その上で,子どもの発達の段階に応じた指導内容の重点化を図ることや体験活動を推進することが示されている。また,道徳教育の推進を主に担当する教師を道徳教育推進教師として,校長の明確な道徳教育の方針の下,道徳教育推進教師を中心に全教師が協力して道徳教育を推進することが明確にされたところである。
○道徳教育の充実に向けた期待
さて,今回の学習指導要領に改訂に際して,道徳教育については様々な論議がなされた。道徳の時間については教科にするとか,あるいはしないとかというような議論もあった。道徳の時間の教科化についての議論は,実は平成12年の教育改革国民会議でもなされたことである。「学校は道徳を教えることをためらわない」という提言があり,小学校に道徳,中学校に人間科,高校に人生科などの教科を設けるという内容であった。また,これらの教科を専門の教師や人生経験豊かな社会人が教えられるようにするということも示されていた。なぜこのような提言が示されたのだろうか。「学校は道徳を教えることをためらわない」という提言の背景には,多くの国民から見ると学校は道徳を教えることをどうもためらっているように見えたことがあるのではないかと推察できる。
また,平成18年に閣議決定の上で設置された教育再生会議でも同様な論議があった。教育再生会議では,第一次から最終まで4回の報告が出されたが,例えば第三次報告の中には「徳育を新たな枠組みにより教科化し,年間を通じて計画的に指導する。」ということが示されている。これもやはり裏を返すと,学校は年間を通じて道徳教育を計画的に行っているのかと心配する国民が少なくないことを物語っているとも受け取ることができる。最終報告においても,「徳育を教科として充実させ,自分を見つめ,他を思いやり,感性豊かな心を育てるとともに人間として必要な規範意識を学校でしっかり身に付けさせる。」ことが示されている。これもやはり裏を返すと,多くの国民が,学校は自分を見つめたり他を思いやったりするなど,感性豊かな心を育てているのだろうかという懸念の表れであるとも言える。
今回の改訂を機会に,道徳の時間が道徳教育の要として位置付けられた意味を理解し,学校おける道徳教育のあるべき姿を再確認する必要がある。そして,学校おける道徳教育が具体的にどのような目標の下に,子どもたちへの教育指導がなされているのかをしっかりと説明していくことが求められている。その上で,教育課程の実施,言い換えると「授業」として行われている道徳教育である「道徳の時間」の指導を,その特質を見失うことなく意図的,計画的に行うことが重要となる。
○道徳的価値の自覚及び自己の生き方についての考えを深める道徳の時間
今回の道徳教育の改訂では,道徳の時間の特質として,これまでの「道徳的価値の自覚を深める」ことに「自己の生き方についての考えを深める」という文言が加えられた。
この背景としては,第一に,新しい学習指導要領が「生きる力」の理念を継承していることから,次代を担う子ども自らが学ぶ意思や意欲をもち,未来への夢や目標を抱き,自らを律しつつ,自己責任を果たし,自分の利益だけでなく社会や公共のために何をなし得るかを大切に考える豊かな心をはぐくむことを強化している。つまり,子どもたちの自律性,自発性を生かし,伸ばすことを一層重視しているという観点から,道徳の時間においても,子どもたち一人一人が自己の生き方についての考えをしっかりと深めることを目指したものである。
第二に,学校段階における指導の重点を明確化する中で,とりわけ小学校においては生きる上で基盤となる道徳的価値観の形成を図る指導を徹底し,自己の生き方についての指導を充実することをねらっていることである。
第三に,道徳の時間の特質である道徳的価値の自覚を一層促し,そのことを基盤としながら,児童が自己の生き方に結び付けて考えてほしいとの趣旨を重視したことである。
中学校段階では,道徳の時間の特質を「道徳的価値及びそれに基づいた人間としての生き方についての自覚を深める」としていることから,小学校段階では,これに発展する前の段階であることを明確にすることで中学校との系統性を平明にする意図もある。このことにより,道徳の時間が人間としての在り方や生き方の礎となる道徳的価値について学び,それを自己の生き方に結び付けながら自覚を深め,道徳的実践力を育成するものであることをより明らかにしたものである。
このことによって,道徳の時間の特質が変わることはないが,これからの道徳の時間の指導は,子どもたち一人一人が自己の生き方についての考えを深めつつ,あわせて道徳的価値の自覚を深めることができるような授業を創造していくことが重要になる。
道徳の時間が授業として位置付けられてから半世紀が過ぎた。全国の学校の状況をみると,子どもたちの実態を的確に把握し,家庭や地域の願いをくみ取って明確な道徳教育の重点目標を設定し,先生方が道徳の時間の特質についての共通理解を図って道徳の時間の授業を展開しているところが少なくない。
全国の先生方が,道徳的価値の自覚及び自己の生き方についての考えを深めるという道徳の時間の特質を生かした授業を展開することで,確かな道徳的実践力を育成することを期待したい。
本書は,このような期待の下に,多くの授業実践を基に指導細案集として作成したものである。全国の先生方の日々の授業構想に役立てていただければ幸いである。
なお,本書を上梓するに当たって,ご執筆いただいた先生方,とりわけ,集約にご尽力いただいた和井内良樹先生及び仁井田康義氏,茅野現氏をはじめとする明治図書出版の皆様方に心より御礼申し上げたい。
平成22年4月
文部科学省初等中等教育局教育課程課 教科調査官 /赤堀 博行
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明治図書
















