- まえがき
- 第1章 豊かな学級文化を創造せよ!
- 第1節 楽しい向山式係活動で学級文化を創造する
- 第2節 係活動に協力しない子どもがいる時
- 第3節 楽しいこと,面白いことを話し合わせる! 向山型学級会
- 第5節 伝承遊び復活――熱中! 時間差陣取り
- 第6節 「保護者の要求」を学級経営に生かそう
- 第7節 子どもからもらう「評価項目の一部も子どもが作る」担任の通信簿
- 第8節 中学校への心の準備と小学校最後の日々の充実を
- 第9節 岡田学級を卒業する子ども達へ
- 第2章 社会科授業で前人未到の極致をめざす!
- 第1節 「岩倉使節団・大久保利通」を授業する
- 第2節 「児島惟謙の生き方」を授業する
- 第3節 社会科授業の発問作りの特質
- 第4節 内部情報の蓄積と確実な知識の習得をめざす家庭学習!
- 第5節 子ども熱中の朝学習向きミニ教材
- 第6節 インターネットでの調べ学習の第1歩は,「指導ステップの細分化」である
- 第7節 授業は,ピンポイント法則をシステム化して成り立つ
- 第8節 重要場面「エピソード」で楽しく覚える開国
- 第9節 岡田流ペリー来航の授業
- 第10節 明治維新――鉄道開通の授業
- 第3章 困難に打ち克つ力をつける授業をしよう!
- 第1節 脳内革命を授業する
- 第2節 道徳の時間は,ことわざカルタリーグ戦をやろう!
- 第3節 1人に役立つことが人の生きがいである
- 第4節 子ども達に正しい宗教観を持たせよう
- 第4章 パーツで構成する英会話の授業
- 第1節 英会話の授業を始めよう!
- 第2節 模擬ドル紙幣で,買い物をしよう!
- 第5章 向山氏に学ぶ教材開発の原理原則
- 第1節 向山氏から学んだ教材作りの法則
- 第2節 子どもが熱中するスーパーマリンゲーム
- 第3節 子どもが開発するメイロ型学習ゲーム――自学自習新メニュー
- 第6章 力を最大限に引き出す体育科授業の秘訣
- 第1節 指導と評価の一体化は,向山式指導評価で!
- 第2節 組体操の練習も学習システムで成果を上げよう!
- 第3節 運動会種目は,シンプルイズベスト!
- あとがき
まえがき
向山洋一師匠(TOSS代表)が,提唱した,「TOSS授業技量検定」が,全国津々浦々に燎原の火のごとく広まっている。
なぜ,かくも短期間に広まったのだろうか。
指標に照らせば授業の腕が一目瞭然になるからである。
かつて日本の教育界には,授業の技量がどのくらいなのかを示す指標は,存在しなかった。
したがって,今までは,授業を見ても,その授業者の腕がどの程度なのかはさっぱりわからなかったのである。
年配の教師が,「授業とはこのようにすべきだ。」と自信満々に言えば,皆その話を鵜呑みにした。
また,誰かが,「あの先生は,名人だ。」と言えば,何の疑いもなく信用してきた。
本を何冊か書いた有名な先生と言えば,その話に酔いしれて追っかけをした。
しかし,そのような講座を聞いて帰っても,全く授業の腕は上がらないので,やがておかしいなあと思うようになる。
あるいは,誤った方法を習得して,授業の腕が下がってしまう場合さえある。
これは,剣道を例にすれば,三級の初心者も,八段の名人も,みな同じということになる。口先だけでの軟弱者が,師範をしているようなものだ。
剣道では,その技量を分析して,評価するシステムが以前から確立されていた。
私も,受検したことがあるが,納得できるシステムだった。
授業の技量検定ができなかったのは,その指標を示す人がいなかったためだと考えられる。
向山師匠が示した,「TOSS授業ライセンス表」が,いかに画期的であるかは,ご理解いただけると思う。
「TOSS授業ライセンス表」は,E表からA表まで5つある。それぞれに,5つから8つの評価項目があり,配点が決まっている。
例えばD表は,右のようになっている。項目は,5つで,配点は,各10点。
その合計点で,下記の評定基準に当てはめて級を審査する。
43点で21級であるから,各項目が平均9点とれれば,45点となるので,十分突破できる。
TOSS授業ライセンスD表評価項目
1 授業の始まり(15秒)のつかみ 10
2 子どもへの目線 10
3 あたたかな表情,対応 10
4 明確な発問,指示 10
5 心地よいリズム 10
しかし,各項目が普通程度なら5点であるから,25点で29級となる。もっと低ければ,30級をも逃してしまうことになる。皆さんの自信の程はいかがだろうか。
しかも,この模擬授業は,個人的に審査員の前だけで行なってはならない。
必ず,教師集団の前で検定を行なうという,緊張場面を潜らせることが条件なのである。20人でも50人でもいいわけだが,経験したことがある人はわかると思うが,平素の授業にはない緊張感があるのだ。
中には,喉が渇き,声が上ずり,体が震える人もいる。頭の中が真っ白になって,シドロモドロになる教師もいる。
認定基準
30級―22点
29級―25点
28級―28点
27級―31点
26級―33点
25級―35点
24級―37点
23級―39点
22級―41点
21級―43点
(20級格―45点)
(19級格―48点)
「何だ,こんなの簡単だ。」と言われる方は,是非,D表検定に立候補してみていただきたい。
見るのと,実際にするのとでは,大違いなのだ。
箱根駅伝を見るのと,実際に走るのとでは,大違いであることと同じだ。
現在誰が,何段か何級かをお知りになりたい方は,TOSSランドナンバー8000012にアクセスしていただきたい。
本書第2章では,私が,TOSS授業技量検定A表に挑戦した実践をまるごとご紹介した。指導案と検定でのようすである。
本書の私の実践報告をヒントに是非,A表検定に挑戦していただきたい。検定項目は,左の通りとなっている。
私は,先日行なわれた,TOSSサマーセミナーに参加した。
今までなら,ただ漫然と模擬授業を見ていた。
この授業は面白いなとか,帰って教室でやっていみたいな,この先生は授業がうまそうだなあとか,その程度の見方だった。
TOSS授業ライセンスA表評価項目
1 授業の基本 10
2 教材の選択(意味ある教材を) 10
3 教材のポイント(その教材の本当のポイントを示しているか) 10
4 授業にのめり込むリズムとテンポ 10
5 授業中熱中して思考しているか 10
6 授業のあざやかな組み立て 20
7 教育界への新鮮で骨太な問題提起 30
しかし,今回は,違った。
自分が受検する時に,どのように授業を組み立てるべきなのかをまず考えた。そして,自分が検定を行なう時に,その授業者に何点をつけるだろうかを考えた。また,向山氏をはじめとする審査員と私の評価は同じか違うかなどを常に考えながら,模擬授業を拝見した。
こうなると,私自身,俄然,参加する姿勢が変化していることを自覚できた。
私は,ライセンスA表の指標に照らして見ることにした。
ちなみに,合計55点以上が初段であり,90点が最高位の八段と認定される。
私は,それぞれの授業に対して,良い点をノートに列挙していった。
○授業のコンテンツが良い。
○褒め言葉が具体的だ。
○変化のあるくり返しをした。
○指導評価があった。
○ノートを持ってこさせて,板書させた。
○ライブで実験をした。
○説明が端的で,無駄がない。
○主張が明確だ。
○対応の技能が見事。
○思考場面での学習活動が十分。
○導入の説明が少ない。
○情報に極めて厚みがある。
○骨太な問題提起が十分ある。
○テンポ良く巻き込んだ。
○授業の組み立てが絶妙。
○具体物を提示した。
○提示した資料に貴重な情報がある。
また,気になる点は,次のようだった。
・根拠のない当てずっぽうの発問。
・学習活動が少ない。
・説明が多すぎて,眠い。
・研究の厚みがない。
・何を主張したいのか,不明瞭。
・1つのことに焦点化していない。
・コンテンツの画面での誤魔化し。
・子どもを巻き込んでいない。
・骨太な問題提起がない。
・リズムが鈍い。
・組み立てが子どもの思考からかけ離れている。
そして,検定の結果発表となった。向山師匠はじめ審査の先生方の検定結果を聞き,「なるほど。納得できる。」とつくづく実感できた。TOSS授業技量検定が,今後,日本の教育界を席巻することは,間違いないだろう。
本書では,その他に,豊かな学級経営を創造する秘訣や教材開発の原理原則,道徳や総合的な学習の授業記録,運動会指導などについて,自分の実践を潜らせて,有効なもののみを厳選してご紹介した。
全国の教室でお役に立てれば幸いである。
/岡田 健治
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- 明治図書