- まえがき
- 第1章 学級経営成功の秘訣! 黄金の三日間 岡田学級の全シナリオ
- 第1節 学級びらき,成功の秘訣は,前日にあり!
- 第2節 新しい出発は,これで完璧! 〈1日目 始業式〉
- 第3節 朝の学習は,席に座って静かにやらせる! 〈2日目 退任式〉
- 第4節 1年間の学級のシステムを創る! 〈3日目 学級を組織する〉
- 第2章 指名なし討論のシステムを創る!
- 第1節 向山学級「雪国」の授業
- 第2節 まず「指名なし朗読」から始める
- 第3節 「指名なし発表」に挑戦
- 第4節 「指名なし討論」の授業の条件
- 第5節 「指名なし討論」の授業を組み立てる
- 第3章 「内部情報の蓄積」こそ子どもが熱中する授業の極意である!
- 第1節 内部情報の蓄積・再構成とは
- 第2節 向山実践に見る「内部情報の蓄積・再構成」 EMの授業(新潟・中条小で)
- 第3節 内部情報の蓄積・再構成の原理原則を活用した「豊臣秀吉の授業」
- 第4節 内部情報の蓄積・再構成の原理原則で「奈良の大仏」を授業する
- 第5節 内部情報の蓄積・再構成の原理原則で「源頼朝」を授業する
- 第4章 「逆転現象」を起こす発問の特質を分析する
- 第1節 逆転現象を起こす発問とは
- 第2節 一般常識を覆して「逆転現象」を起こす
- 第5章 子どもの力を引き出すには局面を限定せよ!
- 第1節 「局面の限定」とは
- 第2節 できない子ができるようになる平泳ぎ指導法
- 第3節 それぞれの学習グループでの指導のポイント
- 第6章 変化のあるくり返しを使いこなす
- 第1節 変化のあるくり返しとは
- 第2節 向山実践を忠実に再現する
- 第3節 「変化のあるくり返し」を分析する
- 第4節 「変化のあるくり返し」を活用する
- 第7章 徹底したノート指導で基礎学力を保障する
- 第1節 向山型算数は,持ち物指導とノート指導から始まる!
- 第2節 社会科ノート指導の方法
- 第3節 うっとりする理科ノートの書き方の原則と基礎技術はここだ!
- あとがき
まえがき
4月,教師なら,誰でも,今年こそすばらしい学級経営をしたいと思う。しっとりと落ち着いたクラスで,基礎学力がきちんと定着する授業をしたいと思う。当たり前のことだが,学校は,勉強をするところだ。学校は,基礎学力を保障すべきだ。
基礎学力が低下するクラスか,基礎学力が向上するクラスかは,一目瞭然だ。
現在のクラスは,どうだろうか。昨年度のクラスは,いかがだっただろうか。まず,次のチェックをしていただきたい。
□机の配置がガチャガチャしている。
□子ども達の姿勢が悪い。
□学級目標が,抽象的である。
□男女の仲が悪い。
□席替えの回数が少ない。
□子ども達のノートが乱雑である。
□忘れ物が多い。
□授業中の私語が多い。
□教師の声が大きく,説明が長い。
□漢字習得システムが稼動していない。
□音読する声が極めて小さい子が,クラスの半数以上。
□黒板にカード類が貼り付けてある。
このうち,3つ以上該当していたら,学力が低下するクラスと言ってよい。5つ以上該当していたら,学級崩壊寸前である。
教室に入ったとたんに驚かされるクラスがある。教卓の近くに子ども達の机がビッシビシに詰まっていて,机の間の通路が狭く,机間巡視ができないのだ。高学年では,70センチメートル程度は空けたい。これが狭すぎると,きちんと起立して発表することもできない。安全面でも重要なことだ。
私は,学級びらきの前日,机の配置をまず行う。
机の配置が滅茶苦茶だと,当然,姿勢も悪くなる。私は,授業中に,
机を真っ直ぐにします。手に持っている物を置きます。背筋を伸ばして,椅子を引きなさい。この列,いいです。〇〇君,よくなった。
という指示をする。この指示は,定着まで,何度も行うとよい。姿勢がグニャグニャで,机に突っ伏した子がいるのに,教師は,話をしてはならない。
私は,学級目標を常に,
「続けること」 「ていねいさ」 「人を幸福にしよう」
にしている。
「一人はクラスのために,クラスは一人のために」というような,抽象的な学級目標にはないよさがあるからだ。
この学級目標は,極めて具体的なので常に意識づけさせることができる。
しかも,目標に向けて努力したら,具体的な成果が現れるのだ。1学期の半ばにはクラスのテスト平均点が,90点を超えたり,「先生,昨年まで,こんないい点とったことないよ。」という声が出始めたりする。
男女の仲が悪いクラスを作っておいて,「そういう時期だよね。」などと,図太いことを言っていてはいけない。こんなクラスでは,基礎学力の保障どころか,日常がストレスの連続である。学級崩壊の危険性も高い。
新学期が始まったら,男女の仲が良い,いじめのないクラス創りを目指したいと誰でも思う。しかし,現実は,理想とかけ離れたものとなる場合がある。それを,「今年の子は,駄目ねえ。」などと子どものせいにしてはならない。教師の指導技術が未熟で,我流からいつまでたっても抜け出せていないことを自覚すべきだ。男女の仲が悪いクラスは,人権が保障できていないクラスなのである。他にも,教師が知らない所で,いじめやトラブルがたくさん起きているはずである。こうしたトラブルの仲裁に,貴重な授業時間が使われるので,当然,学力が低下する。人権が保障できないクラスは,基礎学力の保障など夢のまた夢だ。
子どものノートを見れば,そのクラスの学力はすぐに分かる。算数のノートなら,
・定規で直線を引いているか。
・問題と問題の間に空間があるか。
・補助計算を書いているか。
・赤鉛筆で丸付けをしているか。
・日付や問題番号があるか。
・文字が常にていねいか。
などを見ればよい。
ダメなクラスは,これらのすべてができていない。詳しくは,『向山型算数教え方教室』(明治図書)をご参照いただきたい。落書きがあるノートなど,もってのほかだ。授業が退屈な証拠だ。
忘れ物が多いクラスは,言うまでもなく学力保障どころではなくなる。
授業が楽しければ,忘れ物は少なくなるはずである。遠足で弁当を忘れる子が少ないのと同じだ。
授業中の私語は,教師の準備不足による空白や脱線,テンポの悪さ,作業指示の不明瞭などからくることが多い。また,教師が,子どもの私語を止めさせることを怠ったまま,それを上回る声で説明や指示をすることから,徐々に進行する。
平板な授業,非知性的な授業,思考を促さない発問の授業,学習活動が保障できていない授業なども私語を生む。
黒板に常時,カード類が貼り付けられたり,忘れ物をした人の名前を書いてあったりするクラスも駄目だ。カードの分だけ,黒板が狭いので,黒板に出て書く子どもの数が少なくなるのだ。カードを貼り付けている教師は,子どもの学習権を奪っていることを自覚し,一刻も早く剥がしてほしい。
私は,教師生活二十数年間,常に,師匠である向山洋一氏(TOSS代表)の実践を追究している。教育技術法則化運動に参加し,TOSSに参加してきた。私は,1993年秋,友人の小林幸雄氏(TOSS作州教育サークル代表)と共に向山洋一教育実践原理原則研究会を設立した。
この研究会の目的は,向山洋一実践の中から,授業の原理原則を抽出し,それを活用することである。
賛同者は,半年で500名,3年で1000名と増え続け,発足11年目の現在で2000名に迫る勢いである。
本書では,その研究活動の中から,どのような学級経営をすべきか,また,どのような授業が,子どもの基礎学力を保障するのかを示した。
子どもに知的好奇心を与え,子どもが熱中する授業には,原理原則が厳然と存在する。学級経営成功の秘訣,指名なし討論,内部情報の蓄積・再構成,逆転現象,局面の限定,変化のあるくり返し,ノート指導法などについて,具体的に詳述した。
これらは,向山洋一氏や多くの諸先輩方からいただいた指導の中から抽出したエキスなのである。これらの原理原則で,一人でも多くの子どもの可能性を引き出していただきたいと心から願っている。
/岡田 健治
-
- 明治図書