- はじめに
- 目 次
- プロローグ 特別支援教育への第一歩は授業づくり
- 1 授業づくりということ
- 2 授業づくりで大切なこと
- 3 授業づくりの要素
- 第1章 あいさつは人間関係づくり(日常生活学習)
- 1 朝のあいさつ
- 2 あいさつの実態と教師の働きかけ
- 3 あいさつと人間関係
- 4 あいさつはコミュニケーション
- 5 教師の意図的な働きかけと子どもの変容
- 6 朝のあいさつを授業にする
- 第2章 好きな遊びの中で環境設定する(自由遊び)
- 1 遊びの中でことばを育てる
- 2 一番好きな遊びを見つける
- 3 自発できるとよいことばを見つける
- 4 環境を設定し一緒に遊ぶ
- 5 「あそぼう」「とって」を引き出す
- 6 他の場面でも自発されているかを観察する
- 7 その後遊びが広がる
- 8 好きな遊びの中で環境設定する
- 第3章 1対1で認知課題に取り組む
- 1 認知課題を中心とした学習の必要性
- 2 認知課題を中心とした学習
- 3 自閉的な傾向のあるTさん
- 4 認知課題を設定する
- 5 「絵の完成」
- 6 「名詞の指示で物を指さす」
- 7 給食のこんだて絵カードを選んで貼る係活動
- 8 他の生活場面で見られた変容
- 第4章 集団でダイナミックに繰り返す(朝会・運動)
- 1 中学部合同「朝会・運動」
- 2 生徒の実態と年間の指導計画
- 3 具体的な展開例
- 4 教材・教具を工夫しダイナミックに繰り返す
- 第5章 評価して展開し評価する(グループ学習)
- 1 発達段階別グループによる課題遊び
- 2 「なぞなぞ探検ゲーム」
- 3 「なぞなぞカルタ」
- 4 評価して展開し評価する
- 第6章 やってみせてやってみる(学習発表会)
- 1 授業は導入が決め手!―子どもがその気になる
- 2 学習発表会の全校導入
- 3 中学部での導入
- 第7章 課題を設定し手立てを講じる(生活単元学習)
- 1 生活単元学習で活動を広げる
- 2 生活単元学習の単元構想
- 3 生活単元学習で取り上げる単元
- 4 生活単元学習の指導計画
- 5 「修学旅行へ行こう」
- 6 「劇『エルマーとりゅう』を発表しよう」
- 7 「お店の仕事をしてみよう」
- 第8章 できそうでいてちょっとむずかしい活動を設定する(作業学習)
- 1 作業学習を考える
- 2 できそうでいてちょっとむずかしい活動の設定
- 3 「おでんをつくろう」
- 4 「わたりみちのかんばんをつくろう」
- 5 「電車をつくろう」
- 6 「イスとテーブルをつくろう」
- 7 「平板コンクリートの生産」
- 8 「おぼんの製作」
- 9 作業学習と進路指導
- 第9章 教材・教具を自作する
- 1 教材研究がどうしても必要
- 2 教科書はないのか
- 3 養護学校用の音楽の教科書
- 4 教材・教具を自作しよう
- エピローグ 授業づくりと授業研究のすすめ
- 1 授業づくりの流れ
- 2 子どもの実態把握と課題設定の工夫
- 3 指導計画と授業の展開の工夫
- 4 環境設定の工夫
- 5 教材・教具の工夫
- 6 教師の働きかけの工夫
- 7 授業の記録及び評価の工夫
- 8 授業研究のすすめ
- 引用・参考文献
はじめに
私の初めての授業は,2時間続きの作業学習(花壇の球根掘)であった。
附属養護学校における教育実習の授業で,当時大学の4年生だった。
この授業で,私が最もうれしく思ったことは,Sさんが笑顔で参加してくれたことだった。
Sさんは,校庭のバックネットの頂上を歩いたり,虫集めに熱中したり,「泣いてるの? 怒ってるの?」と気にしたりすることが多く,授業にいつも参加するとは限らなかった。その彼が,笑顔で参加し,よく働いたのだから,こんなにうれしいことはなかった。
また,教師になってすぐ,中学部2年生の担任として,生活単元学習の研究授業を行うことになった。
1年間通して花壇作りに取り組む計画を立てた。当日の授業は,花壇の柵を作る場面であった。その日は雨が降っていて,外での作業ができず,教室で行った。45cmの長さを測り,柵の柱になる角材に印を付け,のこぎりで切る活動を設定した。
この学級に,Hさんという野球などの球技がうまい生徒がいた。
その彼に,ものさしを使って45cmを測り,印を付けるという課題を与え,何回も課題に取り組むことによって,ものさしの使い方や測定の仕方を学んでほしいと考えたのである。そうしたところ,彼は,見本として提示した45cmの角材を使って,ものさしなしで全部印を付けてしまった。
「なるほど!」と感心してしまった。
この2つの授業から,デューイの「なすことによって学ぶ」という思想と子どもたちから学ぶことの大切さをあらためて知った。
私が養護学校の教員になったのは,1973(昭和48)年のことである。
その頃は,小・中学校の特殊学級がたくさんでき,さらに,養護学校の義務制施行に向けて,知的障害養護学校がしだいにできつつあった頃である。現在では,養護学校も各地にたくさんでき,子どもたちの状態も重度化,多様化した状況が見られる。
そして,21世紀の今後の特殊教育は,特殊学級や盲・聾・養護学校などの場による教育ではなく,子どもたちの教育的ニーズに応じた特別支援教育へ移行していく方向が示される。
このように歴史が大きく流れを変えようとしているときに,あらためて,障害児のための授業づくりとか,子どもから学ぶ授業づくりというようなあたりまえなことを,また,紹介した授業や実践そのものは,ほんの一握りのものであるかもしれないが,今だからこそ生かせるものがあるのではないかと考える。
本書を『特別支援教育への第一歩』としたのは,授業づくりこそ,これからの特別支援教育を具体的に進める第一歩ではないかと考えたからである。もう一つには,これから特別支援教育に携わる先生方に,授業づくりからまずは始めてみませんかという意味で第一歩としたのである。
特別な教育的ニーズのある子どもたちのために何をどうするのか,教師の問題解決の力を高め,授業の材料や道具を丹念に探し,教師自身のものの見方,考え方,判断力を養い,子どもたちの成就感,満足感,自信,意欲を引き出す授業を考えることができたら幸いに思う。
この本の執筆に際し,数々の貴重な資料やご助言をいただきました同僚の先生方,子どもたち,保護者の皆様に衷心より感謝の意を表します。
また,出版にあたりましては,明治図書の三橋由美子氏と百川美穂子氏にご尽力いただいたことをここに厚く御礼申し上げます。
2004年8月 著者 /齋藤 一雄
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明治図書
















