- はじめに
- 第1章 デジタルテクノロジーで広がる数学科学習環境
- 1 Web型e-Learningの可能性
- 2 Web活用型e-Learning
- 3 数学教育におけるWeb活用の意義
- 4 数学教育におけるWeb活用法
- 5 数学教育における数学史の活用
- 6 Webによる数学史コンテンツを活用した学習環境とは
- 第2章 機構に関するWebサイトを活用したレゴによる直線運動と円運動の変換の再現
- 1 はじめに
- 2 指導の概要
- 3 授業展開例
- 4 授業の考察
- 5 おわりに
- 第3章 魔方陣の作成と黄金比の世界の探究
- 1 はじめに
- 2 中学校での数学における学習目標とインターネットの使用状況
- 3 実践における学習環境の概要
- 4 生徒の学習の過程・結果
- 5 まとめ
- 第4章 和算に関するWebサイトを活用した算額の現代的解法と問題作り
- 1 はじめに
- 2 総合的な学習の時間と教科数学
- 3 数学史を取り上げた授業実践例
- 4 まとめ
- 第5章 Webを活用したπの歴史とその近似値の探究
- 1 はじめに
- 2 授業の概要
- 3 授業1:πの歴史を調べよう(3時間)
- 4 授業2:πの値を求めてみよう(2時間)
- 5 まとめ
- 第6章 Web検索を活用したデカルトとディオファントスの業績の探究
- 1 はじめに
- 2 課題学習についての進め方
- 3 数学史を授業に取り入れる意義について
- 4 インターネットを用いた数学史の学習
- 第7章 Webを活用した確率の歴史の探究
- 1 はじめに
- 2 学習環境の概要
- 3 生徒の学習過程と結果
- 4 議 論
- 第8章 Web型数学史科学館のデザインコンセプト(付録CD-ROM)
- 1 Web型数学史科学館の制作意図
- 2 Web型数学史科学館のシステムデザイン
- 3 Web型数学史科学館のコンテンツデザイン
- 4 Web型数学史科学館の仕様
- 付録CD-ROM Web型数学史科学館
はじめに
教育においても情報通信技術が様々な場面で活用されている。本書の目的は,数学科において,インターネットを通して数学文化の創造性を強調した数学史コンテンツを活用しながら,生徒が数学学習を進めることができるような,これまでにない新しい学習環境の可能性を提案することにある。つまり数学科におけるITを活用したe-Learningを展開する。
これまで,生徒の数学への関心・意欲を高める手段として,数学史が注目されてきている。例えば,教師が授業案作成段階で数学史を参照したり,生徒は,教師が用意した数学史コンテンツを通して学習したりする。しかし,書物や雑誌など印刷物のメディアだけでは限界がある。例えば,印刷物のメディアだけでは,選択学習や課題学習のような調査型の学習において,生徒が主体的に数学史に関する探究主題をきめて学習を進めることは難しい。
また一方,教育場面において,Webコンテンツの活用はこれまでに行われてきたところである。しかしWebコンテンツの活用の中でも,特に数学史コンテンツに着目した活用は十分になされているとは言えない。インターネットというメディアを活用することによって,生徒は多くの数学史コンテンツを参照することが可能になる。
本書の意義として以下のようなことがあげられる。
(1) ITの活用,すなわちWeb数学史コンテンツの活用によって,生徒は,数学の本質への理解を深めるだけでなく,数学への興味・関心も高める可能性がある。
(2) 数学を学習する生徒の創造性を涵養する1つの手法を開発しようとしている。
(3) 数学教育における多様な学習活動の1つとしてe-Learningを展開している。
本書の構成は,第1章が理論編,第2章から第7章までが実践編,第8章が「Web型数学史科学館(付録CD-ROM)」のデザインコンセプトの説明である。
なお本書は『17・18年度科学研究費補助金特定領域研究(課題番号17011025)高校数学におけるWeb型数学史博物館によるe-Learningの展開(研究代表者・岸本忠之)』による研究の一部をまとめたものである。最後に本書の出版をお引き受けいただいた明治図書出版の仁井田康義氏と相田芳子氏にお礼申し上げます。
平成19年2月 /岸本 忠之
-
- 明治図書