- はしがき
- T 算数科・PISA型学力の考察
- §1 いろいろな学力観
- §2 算数科・PISA型学力のとらえ方
- §3 算数科・PISA型学力の育成方法
- U 算数科・PISA型学力の教材開発
- §1 OECD・PISAの調査問題の考察
- §2 全国学力・学習状況調査の算数「活用」問題の考察
- §3 算数科・PISA型学力の教材開発のポイント
- V 算数科・PISA型学力の授業づくり
- §1 評価の視点からPISA型学力の授業づくりを考える
- §2 PISA型学力を育成する活用型授業と探究型授業
- §3 PISA型学力の育成に向けた授業改革
- W 算数科・PISA型学力の教材開発事例
- §1 第3学年の教材開発
- 1.カレンダーの仕組みをさぐろう (あまりのあるわり算の活用)
- 2.山登りの計画を立てよう (時間・時刻の活用)
- 3.30を言わないゲームの必勝法は? (変わり方・わり算の活用)
- §2 第4学年の教材開発
- 1.いくつ分で表そう (面積・概数の活用)
- 2.よくまわるコマをつくろう (円の活用)
- 3.ペンキぬりの計画を立てよう (面積・かさの活用)
- §3 第5学年の教材開発
- 1.どちらが安いかな? (単位量あたりの大きさ・割合の活用)
- 2.川を安全に渡れるかな? (平均の活用)
- 3.広告を作ろう (割合の活用)
- §4 第6学年の教材開発
- 1.ハンバーガーの価格を比べよう (概数の活用)
- 2.46pの無念 (速さの活用)
- 3.バランスのいいお弁当を作ろう (比の活用)
- X 算数科・PISA型学力の授業実践
- §1 第3学年の授業実践
- 1.最短ルートや最長ルートで進むには? (長さと図形の見方の活用)
- 2.算数を使って生活を見直そう (表・グラフの活用)
- §2 第4学年の授業実践
- 1.買い物をしよう (( )のある式の活用)
- 2.青葉市の人口の変化を紹介しよう (概数・グラフの活用)
- §3 第5学年の授業実践
- 1.トラックコースを設計しよう (円の活用)
- 2.しきつめられるかな? (多角形の内角の和の活用)
- §4 第6学年の授業実践
- 1.海氷の面積 (概形の面積の活用)
- 2.私たちの町は? (拡大・縮小の活用)
はしがき
本書は,PISA調査における数学的リテラシー問題や文部科学省の学力調査における算数B型問題の解決で求められている学力を,算数科で培うことをねらいとして編集したものである。ここで,その意図や内容について,少し説明をしておきたい。
いわゆる,ゆとり教育推進の方向で平成10年度版の学習指導要領が改訂された。その前後から,算数・数学の学力が低下したという指摘がなされてきた。文部科学省の「教育課程実施状況調査」やIEAの「国際数学・理科教育動向調査」などの結果をみると,それ以前と比較して確かに低下傾向が見られた。しかし,平成15年の「教育課程実施状況調査」によれば,その低下傾向に歯止めがかかったと見られる結果が出ている。他方で,PISA調査における数学的リテラシーの結果は1位,6位,10位と低下してきている。
2つの調査結果になぜそのように違いが生じるのか,その大きな理由は調査問題の質の違いにあると考えられる。教育課程実施状況調査は,学習指導要領の内容がきちんと身についているかどうかを見るもので,いわば「基礎・基本」の学力調査である。これに対して,PISAは「数学的リテラシー」であり,それは「数学活用能力」と訳されているように,「活用力」を見るものである。基礎・基本の学力低下には歯止めがかかったとしても,「活用力」はなお低下状況にあるのである。これを何とかしたいというのが筆者らの強い思いである。それは,算数・数学科において,「活用力」を育成できる場面は非常に多いし,それを育成する意義が大いにあると考えるからである。
算数・数学科で学習する内容の起源は身の回りにある。また,それは身の回りで数多く活用されている。図形を例にとると,身の回りはいろいろな形で満ちている。それらには圧倒的に長方形の形をしたものが多い。本の形,窓の形,机の形などほとんどが長方形である。それらはなぜ長方形か,簡単に言えば作りやすく,使いやすいからである。しかし,長方形でない形も見られる。鉛筆は6角形をしている。マンホールのふたは円の形をしている,蚊取り線香は渦巻き形をしている。それはなぜか。このように,身の回りで図形がどのように活用されているか,それはなぜか,等々を考える算数の学習がもっとあってもよいのではなかろうか。
本書は,こうした,「活用」という視点から教材開発を考え,授業づくり・授業実践を試みたものである。これらにより,算数科において「生きて働く学力」を育成したいし,それにより子どもたちに算数を学ぶ意義や楽しさも感じさせることができると考えたからである。
本書のT章からV章まではいわば理論編である。そこにおいては,算数科・PISA型学力のとらえ方やそれに基づく教材開発の方法や授業づくり・授業改革の視点を述べている。それを受けて,W章およびX章は実際編となっている。そこでは,開発した教材の事例を紹介し,さらには授業づくりとその実際について記している。
なお,これらは読者の便宜を考え,新学習指導要領を踏えて学年配置をしている。しかし,活用ということなので指導する学年については柔軟に対応することも十分に可能である。
本書編集の主旨は上記のとおりである。編者・執筆者ともに鋭意努力したつもりであるけれども,不備・不足の点も多々あるかと思われる。読者諸賢の忌憚のないご批判・ご意見をお寄せいただければ幸いである。
本書が有効に活用され,算数科においてPISA型学力が培われていくこと,そしてそうした成果としてPISA調査において再び日本がナンバーワンとなる日が来ることを楽しみにしている。
最後に本書の出版に際して,明治図書の樋口雅子編集部長に企画・編集において大変お世話になり,終始温かい励ましをいただいた。この場をお借りして深甚なる感謝の意を表したい。
2008年3月 環太平洋大学教授 /中原 忠男
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明治図書
















