- まえがき
- 1 ある校長との出会い
- ――これがわたしの運命を決めた
- 一 一年間毎日教育実習
- 「誤字が多いね」 「内容がおもしろくないね」
- 「そんな教え方じゃわからんよ」
- 「時間切れだ。やってみなさい!」 みごとな失敗
- 「もっとゆっくりやりなさい」
- 二 石の上にも三年
- 正月にも勉強 テストづくりで鍛える
- カリキュラムづくり 社会科との出会い
- 2 ゆとりの時代
- ――時間が自由になった時代
- 一 自動車運転免許
- 自動車運転免許がほしい 大型免許
- 自動車がほしい
- 二 ゆとりを生かす
- つりにこる 危険物取扱主任者免状
- 忙中閑あり
- 3 忘れられない授業
- 一 「発問」との出会い
- プロの発問 発問は教材研究から
- 二 本物の「授業」との出会い
- 初めての県外出張 これが授業だ!
- ポストの授業から学んだこと
- ひとりの先人を追い続ける 教育実習やり直し
- 三 授業の目標を動かす
- 忘れられない目標論 長島選手の目標のたて方
- 長嶋選手の準備
- 四 授業の背景を求めて
- 形ばかりまねていた 「一冊の本」との出会い
- まねることは学ぶこと 目習いから手習いへ
- 4 研究授業で自己改造
- 一 「進んできた交通」(四年)から出発
- 研究授業の出発 研究のねらい
- どんな資料が必要か 授業展開の大すじ
- 二 「もうける農業」(五年)の実践
- 研究の発展 単元「もうける農業」
- 反響
- 三 「オンドル」の授業
- 何の授業をするか 強引な授業
- 附属小倉小へ転出
- 四 一年に一一回の研究授業
- 第一回の研究授業 酒が飲めるか
- 猛勉強 第二回目の研究授業
- 今までの「自分」を捨てる 寝ごと
- 三回目の研究授業 実力とは何か
- 五 「海外旅行」で目を開く
- 五五〇円で九州一周
- まぼろしに終わった日本一周 夢心地
- 世界一周旅行 目を開かれたこと
- 5 「わたしの授業」を求めて
- 一 わたしが目ざめた「ごみの授業」
- 自分の授業を創る必要感 ごみの授業を考える
- ごみの授業を始める ごみの授業を文に書く
- ごみの授業が本になる
- 二 育ってきた「みみずく学級」
- 書くこと 気づく力の開発
- 三 東京へ転出
- 樋口方次先生と出会う 再度の自己改造の必要性
- 谷川彰英先生との出会い
- 四 「一寸法師」の授業でネタに気づく
- 便器の数 「一寸法師」で戦国時代の授業
- 「手で見る」ことの発見
- 五 ポストづくりの授業
- 一枚の紙でポストづくり 飛び込み授業で大あわて
- ポストづくりの授業
- 「バスの運転手」の授業づくり
- 六 よりよい授業を求めて
- 「わたしらしさ」を求めて
- 書いて「らしさ」を創り出す
- 子どもにくい込む授業をしたい
- 6 仕事が好きになる
- 一 努力は人に見せるものではない
- 努力を人に見せたがる人
- 「そういうことはいうべきではない」
- 二 仕事に惚れる
- 三惚れ 自分に暗示をかける
- 自分の生きる道はこれしかない
- 7 ネタ開発をたのしむ
- 一 ネタ開発と社会科指導
- 常識をくつがえす ネタで勝負
- 材料七分に腕三分
- 二 クイズ面白ゼミナールと教材開発
- 問題作成委員 問題づくりをたのしむ
- 見る目の変化
- 三 定点観測法を生み出す
- これだけは必ず見る――七定点 ポストを見る
- 市全体を見る 気になったところを歩く
- 店や市場を見る 大衆料理と高級料理を食べる
- その土地の観光地へいく 特産物をたずねる
- 8 出会いを生かす心
- 一 「社会科」との出会い
- 中学一年生での出会い 教育実習での出会い
- 本当の社会科との出会い
- 社会科と出会ってよかった
- 二 「ネタ」との出会い
- 子どもが「ネタ」と出会わせた ネタを発展させる
- 三 「はてな?」との出会い
- 「お話の文」の誕生まで 「はてな?」帳へたどりつく
- 教材開発も「はてな?」から
- 四 ひたむきな修業の道を
- あくなき向上心 実践の事実から理論化をはかる
- 誰かがどこかで見ている
- 9 実践的研究の歩み
- 一 大学に入って考えたこと
- 二 愛知教育大学に入った幸運
- 三 実践の理論化をめざす
- 研究は現実の子どもから出発
- 書いて理論を創り出す
- 飛び込み授業で腕をみがく
- 四 わたしのささやかな願い
- あとがき
- 有田和正略年譜
- 有田和正主用著書一覧
まえがき
今に限らず、いつの時代でも教育界に向けられる目は厳しい。それは、社会の人々が日本の将来のために有為な人材を育ててほしいと願っているからである。教育のあり方が、国の将来にかかっているからである。この社会の要請に、今の日本の教育界は応えているといえるだろうか。ちょっと心もとない感じがしている。
学力低下、学級崩壊、マナー不足の子どもの続出。それに何よりも授業の質の低下が指摘され、教師の研修も、初任研からとうとう十年研までしなくてはならなくなった。社会はどんどん変化しているのに、教育界は旧態依然としてなかなか変わらない。
子どもたちは、面白くもおかしくもない授業に耐えかねて、小・中学生まで新聞に投稿するまでになっている。ある高校生は、「教師の質の悪化はすさまじい。もっと生徒本位の授業を考えてほしい」と、悲鳴とも思えるような投稿をしている。これは、子どもたちの「声の代表」とわたしは受け止めた。これとの関係か、大阪では学力不足と認定された教師が分限免職になった。
こうした社会的状況を「社会からの要請」と、受け止め、「指導力アップ術シリーズ18巻」を、この機に出すことにした。今ほど教師の指導力が注目されている時代はないからである。
まず、「授業とは何か」ということを明らかにしながら、今求められている「真のプロ教師像」を究明してみた。それはただの指導技術ではダメである。プロ教師は、深く確かな内容と、子どもに対する深い愛情の裏づけのある人でなくてはならない。
保護者たちは、担任教師の実力を、いろいろな面から常に観察している。昔ながらの授業をしていたのでは、たちまち「指導力不足」のレッテルをはられる時代である。こうならないよう、教師は常に研修にはげまなくてはならない。そのお手伝いを本シリーズでしてみたいと考えたのである。
授業を面白くし、子どもに実力をつけるには、教材の把握はもちろんであるが、学級の質が大きくものをいう。学級づくり、それも楽しい学級づくりそしながら、子どもが「はてな?」を発見し、それを追究することに熱中し、ひいては「追究の鬼」といわれる子どもを育てたいのである。
長年の経験を生かして、学級づくり、授業づくり、授業がうまくなるレシピを書いた。教材開発のしかた、子どもに調べる力のつけ方なども明らかにした。平成一四年度から総合的学習が本格的に実施に移された。これについても今までいろんな提案をしてきたが、今回のシリーズの中でも、「こうすれば必ずうまくいく」という内容と方法を明らかに、それを提案している。やり方によっては、総合は実に面白い。力もつく。
今の教師たちに足りないのは、実力だけではなくユーモアも足りない。ゆとりがない。もちろん、保護者にも足りない。このギスギスした社会をユーモアで乗りきってほしいと願い、この面の提案もした。
要するに、本シリーズは、授業論、学級経営論、教材開発論、総合的学習論、指導技術論、そして、ユーモア教育論等々、現時点での私の総力をあげて総合的に取り組んだものを提案したものである。一読されて御指導いただければ幸いである。
二〇〇四年一月吉日 /有田 和正
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- 明治図書