- 推薦の言葉 /杉山 吉茂 先生
- T章 算数的活動で21世紀型の授業をつくる
- 1 21世紀型の授業づくりとは
- 1 21世紀をたくましく生きる子どもを育てよう
- 2 20世紀型の授業を乗り越えよう
- 3 21世紀型の授業をつくろう
- 4 算数的活動を取り入れよう
- 5 なぜ,算数的活動か
- 6 こんな算数的活動を
- 2 算数的活動をこうしてつくる
- 1 つくる活動
- 2 身近なものを調べる活動
- 3 オリジナル教具で調べる活動
- 4 ゲームで探る活動
- 5 情報を集める活動
- 6 表し伝える活動
- コラム1 「算数教師へのメッセージ」
- U章 算数的活動で学び合う喜びを感じる授業づくりの実際
- 1 1年「かたち」
- かたちと友だちになろう――身近なものを調べる活動――
- 2 1年「ひきざん(2)」
- パッと計算 ひき算バトルを楽しもう――ゲームで探る活動・オリジナル教具で調べる活動――
- 3 1年「大きな数」
- 調べて教えよう,学校にあるものの数――情報を集める活動・表し伝える活動――
- コラム2 「算数授業の仕立て直し」
- 4 2年「いろいろな形」
- パズルづくりで形の変身――つくる活動――
- 5 2年「かけ算」
- ドットカードでかけ算をつくろう――オリジナル教具で調べる活動・ゲームで探る活動――
- 6 3年「重さ」
- 手紙の重さはどれくらい?――身近なものを調べる活動――
- 7 3年「はこの形」
- ロボット夢工場――つくる活動――
- コラム3 「学びを子どものものに」
- 8 4年「三角形」
- 「仲間だドン」を楽しもう――ゲームで探る活動――
- 9 4年「面積」
- テレビ画面の秘密を調べよう――身近なものを調べる活動――
- 10 4年「分数」
- 分数ワールドの探検――オリジナル教具で調べる活動――
- 11 5年「三角形と平行四辺形の面積の発展」
- 面積の変わり方を調べよう――オリジナル教具で調べる活動――
- 12 5年「割合とグラフ」
- 森林はどれくらい減っているの――身近なものを調べる活動・表し伝える活動――
- コラム4 「Time-Freeの視点を取り入れて」
- 13 6年「倍数・約数」
- 倍数ワンでめちゃいけカードを探せ――ゲームで探る活動――
- 14 6年「分数」
- 分数の研究をしよう――オリジナル教具で調べる活動――
- 15 6年「比例」
- カセットテ−プの長さの秘密――身近なものを調べる活動――
- コラム5 「『算数的活動』を,子どもの算数物語に」
- あとがき
推薦の言葉
楽しい算数の授業がたくさん生み出されることを期待して /杉山 吉茂
わが国では,成績は優秀であるのに算数・数学が好きな子どもの割合が世界的に見て低い,といわれて久しい。特に,現代化の反省に立って作られた昭和53年の学習指導要領のもとでは,基礎・基本が強調され,その内容だけはと子どもに押しつけられる傾向にあったために,子どもは算数の学習に興味を抱かなくなったし,教師も算数指導の研究や工夫に興味を示さない状況を生んでいた。
平成元年の改訂では,その反省から,算数科の目標に「数理的な処理のよさ」つまり「算数のよさ」が盛り込まれた。それは,算数のよさを知り,価値あることを学習していることを自覚させて,算数の学習への意欲を高めたいと考えられたからである。学習指導要領の改訂にともなって改められた指導要録の観点別評価の観点の一つ,算数への「関心・態度」も「関心・意欲・態度」と改められたが,これも算数の学習への意欲を評価することを通して,算数の学習への意欲を高めてほしいという願いからであった。
平成10年の改訂では,算数科の目標に「活動の楽しさ」が加えられた。これは,算数の学習への意欲を高めるためには,算数のよさを知るだけでは十分でなく,算数の学習に楽しさが感じられるようにすることも必要だと考えられたからにほかならない。これまでは,学習指導要領に指導法にかかわることは含まないことが原則とされていたのであるが,新しい学習指導要領では「算数的活動を通して」と,指導法にかかわることも含められた。これは,これまでの算数の指導が,教師に教えられたことを覚え,技能に習熟することに重点をおかれがちであったことを改め,児童が主体的に学習できるものにしてほしいという願いから出ているものと考えられる。
算数的活動については,小学校学習指導要領解説算数編に「児童が目的意識をもって取り組む活動など…」と説明があり,算数的活動の例がいくつかあげられているが,それよりも,その意義として述べられている「教師の説明が中心であるものから,児童の主体的な活動が中心になるものへ」「分かりやすい学習となったり,実生活での活動と算数との関連があきらかになったりする」「算数の楽しさやよさが感じられ,感動のある学習ともなっていく」ような学習活動と考えたい。そのような学習活動をたくさん経験できる算数の授業に参加できた子どもなら,きっと算数の学習を楽しみ,算数の学習への高い意欲をもつにちがいないからである。
「長岡算数教育を語る会」の方々がまとめられたこの本の内容は,まさしくそのねらいにそったものである。語る会の方々が,算数は教師の説明で分かるのではなく,自ら活動することによって分かる。学ぶのは子どもであり,それを扶け,望ましい活動をプロデュースする役割を担うのが教師という立場に立たれていることが分かる。「子どもが主体的に活動する」ためには,「少なく教えて上手に生かす」という教師の姿勢は大切である。
算数の学習の楽しさは,子ども一人一人が主体的に活動し,努力して算数を見つけ,作り出すところからも生まれるが,仲間とともに算数を作る活動は,さらに楽しさを増す。ここに集められている事例から受ける算数の学習の楽しさは,そのほとんどが,仲間とともに活動しているところからくるものであろう。
この本の全体を見て分かるように,取り上げられている題材は身の回りにあるものが多い。これは,語る会の人たちが,身近に数理的な世界があるものと考える姿勢から出ているのであるが,子どもたちは,それらの学習を通して,事象を数理的にとらえる姿勢を身につけるであろうし,算数を活用しようという態度も育つにちがいない。
国際的な調査で,わが国の子どもは「算数・数学が役立つ」と考える子どもが少ないと言われているが,それは,これまで算数の学習が「算数のための算数の学習」におちいりがちであったからだと考えられる。これまでの算数でも,具体的な問題場面から算数が作られたり,文章題など生活に結びつけられていたようではあるが,子どもたちは,それは算数のための架空の世界,自分たちの生活とは違った世界の話と感じていたのかもしれない。この本に取り上げられている,ホットケーキ,新幹線,テレビ画面,カセットテープなどの題材は,これまであまり取り上げられてこなかった題材のように思うが,みな子どもの身近にあるものである。語る会の人たちが日頃から数理的に身の回りを見,それを算数の中に取り入れようと努力されている姿勢が表れている。
算数の楽しさは,ものを作り,調べ,見つけるところから生まれてくるが,算数ではゲームやパズルの楽しさも学習の中に取り込むことを考えてよい。ゲームが取り入れられる場合,計算練習を楽しくするために,練習の仕方にゲームを取り入れられることが多いが,この本では,ゲームから算数の学習が生まれてくるものになっている。身近なものに算数を見出すことにも,ゲームの中に算数を取り入れることにも,語る会の人たちの頭の柔らかさと工夫の才が表れているように思う。それは,オリジナル教具の開発にも表れている。これらの実践に触発されて,このような事例がたくさん生まれてくることを期待したい。
算数のよさ,楽しさを感じさせることの中に,情報を集めたり,表し伝える学習が入れられているのも特徴的である。アメリカの全米数学教師協議会(National Council of Teachers of Mathematics,略称NCTM)が,アメリカの数学教育の改革のための指針として,2000年4月に公刊した「Principles and Standards for School Mathematics」は,10個の項目に整理されて改革の方針が述べられているが,その一つにコミュニケーションが上げられている。日本でも「数学的コミュニケーション」という言葉が聞かれることがあるが,それらの多くは算数の教室の中での話合いを取り上げている。大切なのは,話合いをすることではなくて,情報の中に数学を見つけたり,数学の情報を集めたり,情報を数学を用いて伝えたりすることにある。算数で,図やグラフや式を学習したり,いろいろな事象を数値化することを学習するのはそのためであるが,ここでは日常の生活に結びつけられた事例が紹介されている。
このように,内容に学ぶべきところがたくさんあるが,内容の紹介の仕方にもいくつかの工夫がある。一つ一つの項目,事例が簡潔にまとめられていて,内容がすぐ理解できる内容になっているのも,その一つである。事例には,解説だけでなく,レシピや指針があり,お料理を作ると同じようにして活動を作ることができるようになっている。これによりこの本は,単なる実践報告,研究報告ではなく,実践を誘うものとなっている。
それだけではなく,たとえば,情報を集めるときに,相手への連絡をすることやプライバシーに気をつけることなど,実践で留意すべきことまで細かく述べられている。この他にも,いろいろな配慮とアイディアがたくさん盛り込まれている。
このようなことができているのは,型にはまらない自由な発想で,楽しい活動を通して,生活に結びついた算数を作ろうとする熱意と努力があるからだと思う。
「長岡算数教育を語る会」は,この15年程の間に『算数をつくりだす子ども』『算数用具の指導』『算数教室経営の基礎・基本』『算数を自立的に学ぶ一人学習と共同学習』など興味ある事例を盛り込んだ本を発表されてきているが,この本も,読んだ人に,新しい実践を試みさせ,楽しい算数の授業が実践できるようにしてくれるだけでなく,さらに新しい実践の開発を促し励ましてくれるように思う。
この本が多くの先生方に読まれ,実践され,算数の学習への意欲をもった子どもがたくさん育つようになること,そして,さらに新しい実践研究がたくさん生まれてくることを期待し,本書を推薦する次第である。
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明治図書
















