教師と子どもの読解力を高める

教師と子どもの読解力を高める

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「読解の授業スタイル」が確立する20の授業実践を紹介!

岩下氏は読解力を次のように定義する。@言葉・文・文章を読み、新たなイメージを喚起・形成しながら、書かれている意味を発見的に認識する力、A言葉・文・文章の表現を分析、批評する力。いま必要なのは教師が自分自身の読解力を向上させることだ、と訴える。


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ISBN:
978-4-18-305419-7
ジャンル:
国語
刊行:
2刷
対象:
小学校
仕様:
A5判 192頁
状態:
絶版
出荷:
復刊次第

もくじ

もくじの詳細表示

はじめに
実践1 文学的文章読解のための二〇の視点
実践2 発問で読解の授業を構成する
─「ごんぎつね」六の場面の授業─
一 六の場面で一〇〇の発問作り
二 六の場面だけ違うところ
三 兵十の心情の検討
四 「かけよってきました」の検討
五 「青」の検討
実践3 南吉版「権狐」を読解する
─作品を分析・批評する─
一 南吉の草稿「権狐」を正式版にすべし
二 南吉版「権狐」を使って授業する
実践4 読解の授業にドラマ性を
─「ごんぎつね」二の場面の授業─
一 気になることがあります
二 なぜうちの前を通ったか
三 ごんのことでわかること
四 ごんが見たもの・聞いたこと
五 ごんの心に残った色は
実践5 読解とは何か
一 二つの読解
二 イメージ喚起・形成によって発見的に認識する力
三 言葉、文、文章による表現を分析、批評する力
実践6 登場人物の心情を読解する
一 構成を検討する
二 心情を検討する
実践7 物語を要約する
一 要約の方法を教える
二 トルトリか村人か
三 見えてきた主題
実践8 物語の主題を把握する
一 主題=作者の意図・思想であるという考え
二 主題=作品の思想・価値であるという考え
三 主題の復権に向けて
四 「モチモチの木」で主題を教える
実践9 詩の主題を把握する
一 高見順の詩との出会い
二 授業化する
三 授業の実際
実践10 短詩で想像力を引き出す
一 まど・みちお「しまうま」の教材力
二 四年生の想像力
実践11 漢詩を読解する
一 「胡隠君を尋ぬ」を授業する
二 「静夜思」を授業する
実践12 音読は「読解」である
一 音読教材について
二 文語文の力
三 拍に乗せて読める詩
四 読み方を工夫する
五 音読も読解である
実践13 説明的文章読解のための二〇の視点
実践14 教科書の説明文を書き直してしまう
一 教科書教材の「まとめ」に疑問
二 「まとめ」を書き直してしまう
実践15 説明文教材の問題点を読解する
一 問題点があるから授業できる
二 教師がやってみせる
三 必要のない接続詞
四 どちらが「まとめ」か
五 文章構造図で見えてきたもの
実践16 読解指導と作文指導の一体化を図る
一 書くことで読解力も高まる
二 書き方の型を示す
三 「友だちの前進」を書く
四 読解と作文の指導の一体化で技法を身につける
実践17 子どもの作文を読解する
一 読解力をつけるために
二 擬人法と比喩を教える
三 心は書かない
実践18 新聞記事を読解する
一 新聞を教材にする
二 読みやすさの工夫を見つける
三 記事の文章構成を読解する
四 見出しを考える
実践19 読解力の充実策を考える
一 高学年国語「週に五時間」の非常識
二 どこに重点を置くか
実践20 宮沢賢治を一三分間に凝縮する
一 言葉の力を劇的に高める場
二 台本・言葉が創り出す世界
「宮沢賢治─世界全体の真の幸福を求めて─」
おわりに

はじめに

 読解力を向上させようと、さまざまな実践が行われ、方法が試されている。

 にもかかわらず、読解力は低下し続けている。二〇〇六年のOECDの調査では、ついに一五位まで下がった(五三カ国中)。

 PISA型読解力ばかりか、いわゆる、旧来の読解力も低下していることは間違いない。

 私は、読解力を、次のように定義する(くわしくは、本書実践5参照)。


 読解力1 言葉・文・文章を読み、新たなイメージを喚起・形成しながら、書かれている意味を発見的に認識する力

 読解力2 言葉・文・文章の表現を分析、批評する力

 テレビ視聴の日常化、活字離れ等、子どもたちを取り巻く言語環境の問題もあろう。しかし、現場の教師が、そんなことを嘆いていても仕方がない。何とかしなければならないのである。いや、まだ、何とかなるのである。

 まず、必要なのは、教師が、自分自身の読解力を向上させることだ。

 教師に読解力があれば、素材は、教材になる。

 読解力があれば、教材の問題が見えてくる。それを発問化すればいい。

 発問を作る際は、次のいずれかを念頭に置くとよい(くわしくは本書実践2参照)。


 発問A 子どもが、「おかしい、不思議」と思うだろう問い 〔教師は、答えを持っている〕

 発問B 教師自身が、本当に「おかしい、不思議」と思っている問い 〔教師も、解決できていない〕

 たくさんの発問を作り、中心になる発問を軸にして、構造的な授業を組み立てていく。

 指示をはじめとした、さまざまな技法を使えば、知的な読解の授業を創ることも可能となる。

 技法については、前著『国語の授業力を劇的に高めるとっておきの技法』で、私なりの技法を紹介した。

 前著が、国語の授業技法の基礎編とすれば、本著は、活用編・実践編と言える。

 なお、国語の表現活動を核として、すばらしい学級文化を創り出せること、その活動を通して学ぶからだを生み出すことができることを、先に、『学ぶからだを育てる─表現で学級・授業をひらく─』にまとめた。

 今回の著を加えて、岩下の国語実践の三部作が生まれたことになる。

 私は、最近、読解の授業ほど面白いものはないと思う。

 子どもたちも、読解の授業が大好きである。

 なぜか?

 読解の授業には、話し合いの場があるからである。自分を表現する場があり、発見的な学びが生まれるからである。

 一つの教材の読解授業を終えると、子どもたちが、一回り成長したように見える。


 読解の授業は、知情意を総合的に発揮させる

 残念なのは、教科書に、読解の教材が少ないことである。そこで、詩や短文を教材にして、読解の授業を試みている。これも子どもたちには好評である。

 本書で紹介した実践は、主に、三年生、四年生を対象にしたものである。が、読解の視点、具体的な発問・指示、指導の技法は、低学年、高学年でも、十分に応用、活用できると考える。この二年間に、私の持っているものを出しつくしながら、立命館小学校の子どもたちとの出会いによって、新たな方法も生み出し、実践を行うことができた。

 「読解の授業の面白さ」を、一人でも多くの先生方に味わってほしい。

 子どもはもちろん、先生ご自身も「読解力」を身につけてほしい。私自身も、本著の出版をターニングポイントとして、さらに精進していきたい。

 読者の皆様から忌憚のないご意見がいただければと思う。

 本書が、混迷する教育の場に、ささやかな光を投じるものとなれば幸いである。


   /岩下 修

著者紹介

岩下 修(いわした おさむ)著書を検索»

1973年3月 愛知教育大学社会科卒業

現在,立命館小学校教諭

※この情報は、本書が刊行された当時の奥付の記載内容に基づいて作成されています。
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    • 岩下修先生の本をもっと読んでみたいと思った。
      2024/2/2640代・小学校教員

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