- はじめに
- 実践1 文学的文章読解のための二〇の視点
- 実践2 発問で読解の授業を構成する
- ─「ごんぎつね」六の場面の授業─
- 一 六の場面で一〇〇の発問作り
- 二 六の場面だけ違うところ
- 三 兵十の心情の検討
- 四 「かけよってきました」の検討
- 五 「青」の検討
- 実践3 南吉版「権狐」を読解する
- ─作品を分析・批評する─
- 一 南吉の草稿「権狐」を正式版にすべし
- 二 南吉版「権狐」を使って授業する
- 実践4 読解の授業にドラマ性を
- ─「ごんぎつね」二の場面の授業─
- 一 気になることがあります
- 二 なぜうちの前を通ったか
- 三 ごんのことでわかること
- 四 ごんが見たもの・聞いたこと
- 五 ごんの心に残った色は
- 実践5 読解とは何か
- 一 二つの読解
- 二 イメージ喚起・形成によって発見的に認識する力
- 三 言葉、文、文章による表現を分析、批評する力
- 実践6 登場人物の心情を読解する
- 一 構成を検討する
- 二 心情を検討する
- 実践7 物語を要約する
- 一 要約の方法を教える
- 二 トルトリか村人か
- 三 見えてきた主題
- 実践8 物語の主題を把握する
- 一 主題=作者の意図・思想であるという考え
- 二 主題=作品の思想・価値であるという考え
- 三 主題の復権に向けて
- 四 「モチモチの木」で主題を教える
- 実践9 詩の主題を把握する
- 一 高見順の詩との出会い
- 二 授業化する
- 三 授業の実際
- 実践10 短詩で想像力を引き出す
- 一 まど・みちお「しまうま」の教材力
- 二 四年生の想像力
- 実践11 漢詩を読解する
- 一 「胡隠君を尋ぬ」を授業する
- 二 「静夜思」を授業する
- 実践12 音読は「読解」である
- 一 音読教材について
- 二 文語文の力
- 三 拍に乗せて読める詩
- 四 読み方を工夫する
- 五 音読も読解である
- 実践13 説明的文章読解のための二〇の視点
- 実践14 教科書の説明文を書き直してしまう
- 一 教科書教材の「まとめ」に疑問
- 二 「まとめ」を書き直してしまう
- 実践15 説明文教材の問題点を読解する
- 一 問題点があるから授業できる
- 二 教師がやってみせる
- 三 必要のない接続詞
- 四 どちらが「まとめ」か
- 五 文章構造図で見えてきたもの
- 実践16 読解指導と作文指導の一体化を図る
- 一 書くことで読解力も高まる
- 二 書き方の型を示す
- 三 「友だちの前進」を書く
- 四 読解と作文の指導の一体化で技法を身につける
- 実践17 子どもの作文を読解する
- 一 読解力をつけるために
- 二 擬人法と比喩を教える
- 三 心は書かない
- 実践18 新聞記事を読解する
- 一 新聞を教材にする
- 二 読みやすさの工夫を見つける
- 三 記事の文章構成を読解する
- 四 見出しを考える
- 実践19 読解力の充実策を考える
- 一 高学年国語「週に五時間」の非常識
- 二 どこに重点を置くか
- 実践20 宮沢賢治を一三分間に凝縮する
- 一 言葉の力を劇的に高める場
- 二 台本・言葉が創り出す世界
- 「宮沢賢治─世界全体の真の幸福を求めて─」
- おわりに
はじめに
読解力を向上させようと、さまざまな実践が行われ、方法が試されている。
にもかかわらず、読解力は低下し続けている。二〇〇六年のOECDの調査では、ついに一五位まで下がった(五三カ国中)。
PISA型読解力ばかりか、いわゆる、旧来の読解力も低下していることは間違いない。
私は、読解力を、次のように定義する(くわしくは、本書実践5参照)。
読解力1 言葉・文・文章を読み、新たなイメージを喚起・形成しながら、書かれている意味を発見的に認識する力
読解力2 言葉・文・文章の表現を分析、批評する力
テレビ視聴の日常化、活字離れ等、子どもたちを取り巻く言語環境の問題もあろう。しかし、現場の教師が、そんなことを嘆いていても仕方がない。何とかしなければならないのである。いや、まだ、何とかなるのである。
まず、必要なのは、教師が、自分自身の読解力を向上させることだ。
教師に読解力があれば、素材は、教材になる。
読解力があれば、教材の問題が見えてくる。それを発問化すればいい。
発問を作る際は、次のいずれかを念頭に置くとよい(くわしくは本書実践2参照)。
発問A 子どもが、「おかしい、不思議」と思うだろう問い 〔教師は、答えを持っている〕
発問B 教師自身が、本当に「おかしい、不思議」と思っている問い 〔教師も、解決できていない〕
たくさんの発問を作り、中心になる発問を軸にして、構造的な授業を組み立てていく。
指示をはじめとした、さまざまな技法を使えば、知的な読解の授業を創ることも可能となる。
技法については、前著『国語の授業力を劇的に高めるとっておきの技法』で、私なりの技法を紹介した。
前著が、国語の授業技法の基礎編とすれば、本著は、活用編・実践編と言える。
なお、国語の表現活動を核として、すばらしい学級文化を創り出せること、その活動を通して学ぶからだを生み出すことができることを、先に、『学ぶからだを育てる─表現で学級・授業をひらく─』にまとめた。
今回の著を加えて、岩下の国語実践の三部作が生まれたことになる。
私は、最近、読解の授業ほど面白いものはないと思う。
子どもたちも、読解の授業が大好きである。
なぜか?
読解の授業には、話し合いの場があるからである。自分を表現する場があり、発見的な学びが生まれるからである。
一つの教材の読解授業を終えると、子どもたちが、一回り成長したように見える。
読解の授業は、知情意を総合的に発揮させる
残念なのは、教科書に、読解の教材が少ないことである。そこで、詩や短文を教材にして、読解の授業を試みている。これも子どもたちには好評である。
本書で紹介した実践は、主に、三年生、四年生を対象にしたものである。が、読解の視点、具体的な発問・指示、指導の技法は、低学年、高学年でも、十分に応用、活用できると考える。この二年間に、私の持っているものを出しつくしながら、立命館小学校の子どもたちとの出会いによって、新たな方法も生み出し、実践を行うことができた。
「読解の授業の面白さ」を、一人でも多くの先生方に味わってほしい。
子どもはもちろん、先生ご自身も「読解力」を身につけてほしい。私自身も、本著の出版をターニングポイントとして、さらに精進していきたい。
読者の皆様から忌憚のないご意見がいただければと思う。
本書が、混迷する教育の場に、ささやかな光を投じるものとなれば幸いである。
/岩下 修
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- 明治図書
- 岩下修先生の本をもっと読んでみたいと思った。2024/2/2640代・小学校教員