21世紀型授業づくり83
<学習用語のカテゴリー化>で<国語学力>を育てる

21世紀型授業づくり83<学習用語のカテゴリー化>で<国語学力>を育てる

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抽象的な学力から「見える学力、使える技術」へ。

野口芳宏氏は今回の柳谷著の問題提起を高く評価され「国語科で形成される学力の正体ははっきりしない。これに対して国語学力の中核を言語技術ととらえ教えるべき言語知識を学習用語としてカテゴリー化した力作」としている。国語教育界に若き逸材が登場した。


復刊時予価: 2,585円(税込)

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電子書籍版: なし

ISBN:
4-18-519915-5
ジャンル:
国語
刊行:
対象:
小学校
仕様:
A5判 164頁
状態:
絶版
出荷:
復刊次第

目次

もくじの詳細表示

序文 北海道教育大学岩見沢校教授 /清野 隆
序論
小学生は「言語活動」を適正に運用していない/ 学習者にとって必要な「国語学力」を決めることから始まる/ 日本人の「国語学力」が適正に育っていないのは、国語科教師に責任がある/ 教師が指導しないから、国語科が一番「嫌いな教科」になっている/ 教師も「国語学力」が分からない/ 「国語学力」を具体的に明らかにする必要がある/ 〈言語教育カリキュラム〉の基底となる小学校「国語科カリキュラム」を開発し、二つの課題を解決する
T 〈学習用語のカテゴリー化〉で〈国語学力〉を提案する
一 国語科「学力」論
〜小学校六年間で育てる〈国語学力〉を〈学習用語〉として体系化する〜
1 「言語活動」の主な手続き(「定型」と「技術」)を〈国語学力〉として扱う
小学校国語科の罪である/ 「言語活動」を扱うだけでは「国語学力」は育たない/ 「言語活動」を適正に運用させるために、その主な手続きを指導する/ 学校生活全体で「国語学力」を育てる/ 国語科では「国語学力」を認知させ、行為させる/ 「国語学力」を〈学習用語〉のカテゴリーとして提案する
2 「言語活動」の主な手続きを〈学習用語〉とすることで第一の課題を解決する
これまで国語科で扱われてきた「学習用語」/ 本書の〈学習用語〉の定義/ 「言語活動」と〈国語学力〉を区別する/ 「言語事項」と〈学習用語〉の関係
3 〈学習用語のカテゴリー化〉で効果的・効率的な指導が可能になる
〈学習用語〉は言語を適正に操作するためのメタ言語である/ 言語を関連する階層性、近接性、類似性などでカテゴリー化する/ 本書の術語カテゴリー図
4 「言語活動」での〈学習用語のカテゴリー化〉例
「話し言葉」での〈学習用語のカテゴリー化〉例…インタビュー/ 「書き言葉」での〈学習用語のカテゴリー化〉
例…表記・日常的文章―随筆・日常的文章―課題作文
5 〈学習用語〉を体系化する四つの前提
「思考」、「話し言葉」、「書き言葉」という三つの系統/ 『小学校国語科〈学習用語〉体系案』の構造/ 「準備、実行、評価」の三段階に分けた〈学習用語〉/ 学習者の実態で厳選する〈学習用語〉
6 小学校国語科〈学習用語〉体系案
二 国語科「方法」論
〜小学校六年間で扱うことが可能な「言語活動」を三三六例示する〜
1 少ない「言語活動」の例示では「言語活動を通して指導する」ことができない国語科は
「言語活動」の系統性に欠けていた/ 「言語活動」の例示が少ないことが問題だった/ 「言語活動」をどこから選ぶのか
2 「言語活動」を十分に例示し、第二の課題を解決する
「物語」という言語も「言語活動」である/ 「言語活動」を教材として配列する方法/ 他者と「伝え合う」関係性での三つの系統
3 小学校国語科「言語活動」系統案(学年別、領域別「言語活動」三三六例)
第一学年及び第二学年/ 第三学年及び第四学年/ 第五学年及び第六学年
U 〈学習用語のカテゴリー化〉で〈国語学力〉を育てる
一 小学五年生「国語科カリキュラム」を開発する
1 小学校国語科領域別「年間指導計画」作成のための三段階
教科書教材に依存しない教材が「言語活動」である/ 「言語活動」を領域ごとに配列する/ 一時間に一つ程度の「指導事項」としての〈学習用語〉を決める/ 「言語活動」の話題(又は題材、テクスト)、資料、準備物を決める/ 教材目標に到達させる評価規準と授業目標に到達させる評価基準を決める
2 「カリキュラム」の方法面となる授業方法
授業方法にも系統がある/ 「創造」を可能にする「対話」の教育/ 小学校国語科では「訓練」が必要である/ 授業方法例/ 例一「伝達」型授業/ 例二 「対話」型授業
3 「カリキュラム」の修正方法にもなる評価対象と評価方法
(1) 評価対象/ (2) 評価方法…観察評価/ テスト評価/ レポート評価/ 作品評価/ 自己評価
4 学習者の実態
『学習者実態評価シート』領域A「話すこと・聞くこと」―「スピーチ」/ 領域B「書くこと」―「随筆」、「漢字」/ 領域C「読むこと」―「読解」
5 小学校国語科領域別「年間指導計画」(抄)〜小学五年生、
領域A「話すこと・聞くこと」〜〈国語学力〉を育てるために「領域別」に作成する
二 「インタビュー」を通して〈国語学力〉を育てる
1 小学校国語科「言語活動」指導計画案
二つの授業技術を用いる/ 小学校国語科学習指導案…一 授業データ/ 二 授業の価値/ 三 指導計画/ 四 本時の位置/ 五 本時の計画/ 六 評価/ 七 資料「インタビュー」の「定型」用「マルチ・プラン・シート」
2 授業記録(抄)
学習者の実態評価/ 準備段階1 手続きの「伝達」/ 準備段階2 手続きの「訓練」/ 実行段階1 「定型」を用いた「対話」/ 学習者Tの発話/ 実行段階2 〈国語学力〉の定着化/ 評価段階1 自己評価/ 学習者の感想
3 学習者の評価から学習者と授業を評価する
(1) 学習者評価…自己評価1―学習意欲/ 自己評価2―達成感/ 観察評価1―活動定義/ 観察評価2―活動目的/ 観察評価3―活動話題/ テスト評価―活動定型/ 作品評価―活動技術/ 2 授業評価/ 3 カリキュラム評価
4 学習者の作品
インタビュー・レポート/ インタビュー・テスト/ 〈学習用語のカテゴリー化〉の成果
V 〈学習用語のカテゴリー化〉で〈言語教育カリキュラム〉を開発する
一 「語ることを教える」言語教育へ
〈言語教育カリキュラム〉の基底として、小学校「国語科カリキュラム」を開発する/ 〈言語教育カリキュラム〉とは何か
二 実態評価から各学級で「カリキュラム」を開発しよう
今年度の「カリキュラム」は、次年度以降の学習者の実態評価に役立つ/ 〈言語教育カリキュラム〉を簡単に開発するための実態評価の四段階とその方法/ (1) 「『言語活動』を決め、目標設定を行うための実態評価」段階(作成資料1、2)/ (2) 「『言語活動』ごとの〈学習用語〉と話題(又は題材、テクスト)を決めるための実態評価」段階(作成資料『学習者実態評価シート』、3)/ (3) 「国語科の各領域や全体で『言語活動』を系統化するための実態評価」段階(作成資料4、5、6、7)/ (4) 「『小学校国語科〈学習用語〉マトリックス』を作成するための実態評価」段階(作成資料8)/ 「指導事項の厳選化」授業モデル
三 〈言語教育カリキュラム〉開発のための全資料
(1) 『運用予定「言語活動」一覧表』/ (2) 『国語科授業での自己評価表』/ (3) 『小学校国語科「言語活動」授業方法カード』作成例/ (4) 『小学校国語科領域別「言語活動」年間系統表』作成例4― 一 小学五年領域A/ 4―二 小学五年領域B/ 4―三 小学五年領域C/ 5 『小学校国語科領域別「言語活動」年間計画』作成例/ 6 『小学校国語科「言語活動」年間計画一覧』作成例―第五学年/ 7 『小学校国語科「言語活動」指導計画案』作成例/ 8 『小学校国語科〈学習用語〉マトリックス』(抄)
結論
〈学習用語のカテゴリー化〉は効果的・効率的な方法である/ 拙い授業にもかかわらず〈国語学力〉を伸ばしてくれた学習者に感謝する/ 小学校全体で〈言語教育カリキュラム〉を開発したい/ 小学校国語科の授業は、補助輪が必要である
跋/ 日本教育技術学会名誉会長・「鍛える国語教室」研究会主宰 /野口 芳宏
終わりに――宇佐美寛先生の御批判に応えて

序文

 学習する目標及び内容等を明示した学習指導要領は、到達しなければならない「最低基準」を示したことが名言されている。また、学習した過程や結果を明らかにする評価は絶対評価を導入することとなった。このことは一人ひとりの児童にどのような学力を保障していくのかが教師に求められているといえる。国語の学力保障は何をどのような方法で行うことが、それに応えることになるのか。それを追究したのが本著『〈学習用語のカテゴリー化〉で〈国語学力〉を育てる』である。

 著者の柳谷直明さんは平成一三年四月、期するところあって、北海道教育大学大学院修士課程の国語科教育を専攻した。小学校教師で、これまで特に国語科教育の実践を中心に積み重ね、その上で何が課題であるかの問題意識を明確に抱いて研究を出発させた。自己の実践してきたことを理論的な側面から検討し、見直そうと教育哲学をはじめ、認知心理学、言語哲学などを幅広く意欲的に取り組むことを通して基盤を形成した。特に、学習用語のカテゴリー化をするにあたり、語用論を基に言語認識をメタ認知することによって、言語を自らに構造化していく理論を基底としながら考えられたものである。本書の刊行に当たっては修士論文の中からカテゴリー化提案と系統化及び授業提案が中心になって編まれている。言い換えると、研究したことの具体的な部分に限定しての刊行である。それはまさに、氷山の一角を現したものである。

 国語科教育では「学習用語」の中の主題という語句一つとっても一義的な確定性をもってはいない状況にある。それぞれが自己の理解の範疇で使用し、共通コードとして使われてはいない。その意味では本著の「学習用語のカテゴリー化」は一つの提案であり、まして「言語の系統化」は、いくつかの先行研究はあるが、国語学の分野においてさえ、まだまだ課題が多く成熟したものになっていないのが実態である。それゆえに本著の提案を多くの教師が試み、その上でよりよいものに修正されて、再提案されていくことこそが著者の最も喜びとするところではないかと推察する。それが国語科教育の今日的な課題に応えることに結びついていくからである。

 大学では、二年間という短い研究の期間であった。たとえ一年次から焦点化して研究をすすめたとはいえ、二年次は現場に戻っての研究と実践の相互作用を繰り返す苦闘の日々の歩みであった。それが結果的に理論を具体的に深めることになった。二年間の研究がよりよき結果を生んでいったのは、周囲の温かい理解と著者の真摯な人柄である。

 大学院を修了後、転勤し、岩見沢市の小学校で研修の中心的な役割を果たしている。なお、本研究の一端は平成一五年五月二四・二五日に早稲田大学で開催された第一〇四回の全国大学国語教育学会の分科会で発表がなされたことを付記しておく。

 現在、小学校の教師として教育にきわめて誠実かつ積極的に携わり、研究したことを日々に生かしながら研鑚を積み、雑誌などに発信し続けている。今後さらに残された課題への展開と拡充を心から期待する。


  平成一五年七月吉日   北海道教育大学岩見沢校教授 /清野 隆

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      明治図書
    •  著者の柳谷直明です。本日(2月6日)刊行になりました。明治図書の皆様,江部満編集長,友人社の皆様,そしてお世話になっている多くの皆様に感謝します。「小学生の国語学力向上に貢献したい。」そういう思いで書かせて頂きました。まだまだ拙い提案です。今後,更に修正して参ります。まずはお礼を書かせて頂きました。有り難うございます。御批正をお待ちしております。
      2004/2/6柳谷直明

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