- まえがき
- 1章 障害のある幼児の保育・教育とは
- 1 障害のある幼児の保育・教育の理念と制度
- 2 インクルージョンと保育・教育
- [コラム1] 保育・教育と記録
- 2章 幼児の発達と障害
- 1 発達とは
- (1) 保育・教育における発達の考え方
- (2) 発達の原則
- (3) 発達過程と発達課題
- (4) 個人差ということ
- (5) 発達に合わせて援助する
- (6) 保育所保育指針の発達観
- (7) 発達検査
- (8) 医学的・生理学的検査
- (9) 発達を総合的にとらえる
- 2 障害とは
- (1) 障害という言葉
- (2) 障害の国際分類
- (3) DSM
- 3 障害の種別・特質とその理解
- (1) 視覚障害
- (2) 聴覚障害
- (3) 肢体不自由
- (4) 知的障害
- (5) 情緒障害
- (6) 自閉症
- (7) 言語障害
- (8) 学習能力障害
- (9) ADD/ADHD
- (10) てんかん
- (11) 重度・重複障害
- (12) 病弱及び身体虚弱
- [コラム2] 発達検査
- 3章 保育・教育のカリキュラム編成
- 1 保育・教育とカリキュラム
- 2 子どもの発達・障害とカリキュラム
- (1) 教育課程・保育計画への出発
- (2) 子どもの発達と保育・教育実践の組織
- (3) 子どもの障害と保育・教育実践の組織
- 3 カリキュラムの編成
- (1) 指導計画の編成にあたって
- (2) 子どもの実態を把握し,理解する
- (3) 目標を決め,計画を立てる
- (4) 実践し,評価する
- [コラム3] 重度・重複障害と医療的ケア
- 4章 保育・教育の内容と方法
- 1 健康
- 2 遊びと表現
- (1) 視覚に障害がある子どもの遊び
- (2) 聴覚に障害のある子どもの遊び
- (3) 言葉の障害のある子どもの遊び
- (4) 運動機能に障害のある子どもの遊び
- (5) 知的な障害のある子どもの遊び
- 3 人間関係
- 4 認識力
- [コラム4] 「困った行動」にどう取り組むか
- 5章 子育てのネットワークと保育・教育
- 1 保育所・幼稚園と専門機関の連携
- (1) ニーズの多様化と保育所・幼稚園
- (2) 子育てと家庭生活への支援
- (3) 社会的支援と保育者の役割
- 2 専門機関との連携の実際
- (1) 障害児通園施設等との並行通園,外来相談
- (2) 保育所・幼稚園への巡回相談
- (3) 医療機関との連携
- (4) その他の機関との連携
- 3 母子保健と保育・教育へのリレーション
- (1) 母子保健と保育・教育
- (2) 就学に向けて
- [コラム5] 行事と保育・教育
- 6章 家庭とともにつくる保育・教育
- 1 家庭とともにつくる保育・教育
- (1) 現代社会の子育て家庭
- (2) 保育所からみえる親子の実態と保育
- (3) 保育ソーシャルワーカーとして
- (4) 差別と偏見
- (5) なぜ統合保育が進まないのか
- 2 家庭への支援
- (1) 出会い
- (2) この子らを世の光に
- (3) 家族の願い
- (4) 交流保育から複合施設へ
- (5) インクルージョン保育は「いのちの教育」
- (6) 一時保育でのレスパイト・サービス
- 3 保育・教育の創造と地域
- (1) 沈黙の共犯者
- (2) 保育者の教養とは
- (3) 「空飛ぶ三輪車」の保育目標
- (4) 21世紀の保育者へ
- [コラム6] 保育所に子どもを預ける“親の思い”
- 補章 障害のある幼児の保育・教育者に求められるもの
- 1 幼稚園教育要領・保育所保育指針における保育・教育者の役割
- 2 障害がある子どもの理解と保育者の援助
- 3 保育者としての専門的役割
- 4 親とともに歩む
- 5 保育者間の連携
まえがき
70年代中頃から開始された障害のある幼児の保育・教育の保障は,今日,万全とはいえないまでもかなり進展してきています。保育・教育の形態,内容・方法などの側面からは,集団的な保育・教育が量的な拡がりを経て質的な深まりの段階へ入っています。しかし,他方で障害のある幼児個々の医療的ケアを含めて,その保育・教育を個別と集団の関係においてどのように組織し,展開していくのかが課題になっています。
このような課題は,障害のある幼児の保育・教育課題に,どのように応えるかという問題であり,カリキュラムや実践の質の問題に深く関わっています。それは換言すれば日常的な保育・教育において,個々の障害のある幼児の発達の可能性を確実に実現し,人間形成の基礎を豊かに培うための計画,実践,評価が問われているということです。まさに今,障害のある幼児の保育・教育に直接的に責任を負っている,保育士や教師の力量がより一層求められているのです。
本書はこうした障害のある幼児の保育・教育に対する社会的期待を受け,保育士や教師をめざす学生の皆さんが,基礎的,専門的な知識が得られるように,実践的かつ体系的に編集しました。また,現職の保育士や教師の皆さんが,保育・教育に関する専門的力量を高められるように配慮し,保育・教育内容・方法に関することのほか,子育て支援に関することや保育士,教師の在り方に関することなどについても取り上げました。
本書の構成と内容は,次のようになっています。
先ず1章ですが,本書の導入にあたって障害のある幼児の保育・教育の基本的な理念や機関について述べ,発展の歴史的経緯やインクルージョンについても述べました。次いで2章においては,障害のある幼児を正しく認識するための基本的視点について,発達や障害を中心に述べました。そして3章ではカリキュラムの問題を取り上げ,基本的な考え方を踏まえながら,発達や障害との関係においてどのように編成し,日常の保育・教育実践をどのように創り出していくかについて述べました。
4章においては具体的な保育・教育を想定し,各領域における実践の内容・方法について,事例に基づきながら具体的に述べました。5章では障害のある幼児の保育・教育にあたり,子育てのネットワークとどう連携するかについて述べました。障害のある幼児の発達の可能性を実現するためには,保育所,幼稚園という限定された機関だけでなく,種々の子育てネットワークとのつながりが重要だからです。
6章においては家庭とともに障害のある幼児を育んでいくという立場から,家庭との連携はもちろん家族支援や地域との連携の在り方にまで触れました。今日,保育所や幼稚園においては,子育て支援の一環として障害のある幼児に関する相談が求められることもあり,現職の保育士,教師にとっても参考になるのではないかと思います。そして,最終の補章では保育士や教師に求められる資質や専門性について,具体的に述べました。
終わりに臨んで,本書はまだまだ不十分な内容になっていることと思いますので,先輩諸兄姉の厳しいご批判とご指導を賜りたく,よろしくお願いいたします。また,編集に際しまして一方ならぬお世話をいただいた三橋由美子氏に,改めて厚くお礼を申し上げたいと存じます。
2003年3月 著者一同
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- 明治図書