- まえがき
- T 改訂のねらいと基本方針
- U 新学習指導要領 美術の新しい課題
- V 中学校美術科の改訂事項の解説
- 1 教科の目標(全学年)
- 2 各学年の目標
- 3 スケッチや絵の表現
- 4 彫刻などの表現
- 5 デザインや工芸などの表現
- 6 鑑賞
- 7 選択教科としての「美術」
- 8 指導計画の作成と内容の取扱い
- W 中学校美術の実践課題と具体例
- 1 総合的な学習の時間との関連
- ・ホームページのデザインに挑戦
- ・幼児に贈る「絵本」づくり
- ・環境を考える表現
- ・遊具をつくろう
- ・郷土探訪「伝統工芸」
- ・映像メディアで紹介する僕の町・私の町
- 2 一体的な学習(立体構成・絵画)
- ・BFOが舞い降りて
- 3 漫画,イラストレーション
- 4 写真・ビデオ・コンピュータの表現
- ・はりこ面の制作
- ・名画の中の富士を見つめる
- ・身近なフォルムからイメージしよう
- 5 学校教育と美術館教育
- ・美術館から望む
- ・美術館での鑑賞
- ・地域の美術館を活用した鑑賞の学習
- ・「学校美術館」設立への取り組み
- 6 夢や心の世界の表現
- ・夢を描く 夢をつくる
- 7 日本の美術の表現
- ・日本美・発見
- ・日本の美術を学ぼう
- 8 伝統文化の継承と創造
- ・文化のタイムカプセルとしての文化遺産
- ・総合的な学習の視点から
- 付録
- 学校教育法施行規則(抄)
- 中学校学習指導要領
- 第1章 総則
- 第2章 第6節 美術
まえがき
本書は平成10年12月に改訂された中学校学習指導要領「美術」の目標・内容やこれからの美術の取り組むべき課題について,具体的な実践事例を交えてわかりやすく解説したものである。
今回の改訂では,完全学校週5日制の下に,各学校が[ゆとり]の中で,特色ある教育課程を編成し,創意工夫した教育の実践に当たることを促すことを重視している。
美術においては,一人一人の生徒が個性を生かして生涯にわたり美術を愛好し,心豊かな生活を創造していくことができるよう,その基礎となる感性や表現・鑑賞の創造活動の能力を伸ばし,喜びと自信をもって生きていく意欲や夢を培う確かな指導を展開していくことが求められる。
今回の学習指導要領においては,これまで不明確であった美術の教科性や表現・鑑賞の基礎的能力の明確化,生徒の多様な個性に応じられる表現形式や方法の多様化,柔軟化,3か年にわたるスケッチの学習,21世紀の情報社会に積極的に寄与していくことのできる映像メディアなどによるビジュアルな表現・交流能力の育成,日本の美術の表現や鑑賞の体験の重視,選択幅の拡大や総合的な学習の新設など,美術の内容は全面的に改訂されたと言ってよい。
絵を描いたり工芸に親しんだりその他いろいろな生涯学習に大人になってから親しんでいる人たちに,「いつ頃から,これらのことをしていきたいと思ったか。」という調査によると,「15歳頃に思った。」と回答した人が最も多かったという結果が出されている。このことは,生涯学習の直接のきっかけや意欲付けとなるのは,中学生・高校生の年代の自信やあこがれをもてるような経験があったかどうかが最も大きい要因であるということが言える。この結果からしても,中学校美術の授業における基礎・基本の獲得と,それを基にしたさらに創造的な表現・鑑賞の授業の工夫の大切さが見えてくる。
先生方が本書の解説を逐一読み,新たな課題を十分に読み取り,創意工夫をこらして,基礎・基本の確実な定着と創造的な表現・鑑賞の追求を促し,生徒一人一人が自分なりの確かな手応えと自信をもって自己実現を果たしていくことができ,もって,生涯にわたり美術を愛好していくことができるようにする美術の授業を構築していくために役立つことを願っている。
21世紀においても美術教育が人間にとって欠かすことのできない大切な教科,価値ある学習として存在していくために,全国の先生方の深い理解と情熱,創意ある実践の展開と研修を期待してやまない。
執筆に当たり,たいへんな仕事を快く引き受け執筆してくださった全国の各執筆者の先生方,並びに,難しい編集をがまん強くまとめてくださった編集部の仁井田,相田両氏に厚く感謝申し上げる次第である。
平成11年11月 編著者 /遠藤 友麗
-
- 明治図書