- まえがき
- T プレゼンテーションとは何か
- 一 プレゼンの定義
- 二 プレゼンの要素
- 三 説得する技術
- 四 全体像を示す技術(ロードマップ・ラベリング・ナンバリング)
- 五 演繹法と帰納法
- U 国語科教師の授業開きでのプレゼン
- 一 授業開きでのプレゼン
- 二 国語科通信によるプレゼン
- 三 『ちょっと立ち止まって』によるプレゼン
- V 類義語によるプレゼン
- 一 『なつかしいと恋しい』によるプレゼン
- 二 『準備と用意』によるプレゼン
- 三 他の類義語によるプレゼン
- W 作文教育におけるプレゼン
- 一 予告文によるプレゼン
- 二 独創性によるプレゼン
- X ビジュアルプレゼンテーションとは何か
- 一 ビジュアルプレゼンテーションの良さ
- 二 ある社会科の授業の紹介
- Y プレゼンの主体は人間
- 一 自分らしさを演出する具体的方法
- 二 プレゼンのスタイル
- 三 書き出しに全力を
- 四 説得力を高めるために
- 五 授業の構成
- 六 質問の受け方
- あとがき
まえがき
現在、大学で教職課程(教育原論・国語科教育法等)を担当している。
三年前まで、公立中学校の国語の教員であった。
この書では、公立中学校での私の実践をプレゼンテーション(略して「プレゼン」)という観点で、もう一度見直してみるということをした。中学校の教員をしている時には「プレゼン」ということを意識しなかったのだが、中学校でのプレゼンの実践について、私なりにまとめていきたいと考えている。
中学校の生活指導において、先生方のよく使われる言葉に、「ほうれんそう」というものがある。
これは、報告・連絡・相談の三つの言葉の頭を取ってできたといわれている。
この言葉は、もともと教育の世界で作られた言葉ではないが、中学校の実践でよく使われるプレゼンの一つと考えていいと思う。
例えば、ある生徒が問題を起こしたとする。
その事件を知った学級担任の先生は、すぐに校長に事件の経緯を「報告」する。問題を起こした生徒の保護者にも当然、事実を「報告」する必要がある。
それから、生活指導主任や、学年主任の先生や、事件が他校の生徒と関連する場合には、他校の生活指導の主任の先生などとも「連絡」を取って、事件を起こした生徒をどのように指導していくかを「相談」することになる。
事件がさらに大きくなった場合には、警察にも「連絡」を取らなければならない。
生活指導の場合、生徒が起こした問題が大きな事件になればなるほど、担任の先生が、決して一人で解決しようとしてはならないということである。
これらの例からわかるように、プレゼンには、基本的に三つの変数がある。
それは、「あなた自身」「話す内容」「聞き手」という三つである。
ところで「あなた自身」は、プレゼンをする自分自身のことをどのくらい知っているであろうか。
次に、自分が「話す内容」について、どのくらいの準備をしたであろうか。
「聞き手」の多くは、自分が教えている子どもたちとその保護者である。どのくらい「聞き手」の要望に応えられるであろうか。
そして、最後にこの三つが相互に関わってくる。
「聞き手」は「あなた」のことをどのように感じているのであろうか。「聞き手」が「あなた」に、最初に好印象を感じると、後々まであなたの「話す内容」は「聞き手」にスムーズに入っていくことになる。
小著が、これからの「プレゼンテーションの教育技術」の発展のたたき台の一つになれば幸いである。読者諸氏のご批判をお願いしたい。
二〇〇二年三月 /喜岡 淳治
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- 明治図書