- はじめに
- T部 日常生活における情緒の役割
- 1 情緒とはなにか
- 行為を触発する情緒
- 恐れの恒常化と拡張
- 主観性としての情緒
- 学習される感情
- 人格と問題状況の関係
- 2 情緒が形成される時期
- 出発点は愛情
- 基本としての母子関係
- 3 情緒の発達
- ほほえみの社会化
- 人見知りの発生
- 自分意識の形成
- 恐怖という心性
- コントロールされる感情
- 学校害と挫折感
- 異なる感情の重複化
- まとめ
- U部 情緒を形成する上での家庭の役割
- 1 家庭のタイプ
- はじめに
- 家庭の内部構造
- A/1) 閉鎖的な家庭
- A/2) 閉鎖的な家庭のバリアント
- B) 開かれた家庭
- 措藤解決のタイプ
- A) 消極的な一致をこととする家庭
- B) 措藤、衝突を避けない家庭
- 各時期ごとの家庭の変化
- A) 若い両親、子ども1人の時代
- B) 2人目、ばあいによっては3人目の小さな子どもがいる時期
- C) 学童がいる家庭
- D) 思春期の子どもがいる家庭
- E) 巣立ちを迎える家庭
- 2 情緒発達の条件
- 発達を左右する要因
- 情緒発達の阻害要因
- A) 生活様式、生活秩序
- B) 母子関係
- 外向的と内向的
- 4つの節目と努力目標
- V部 情緒教育における教育者の役割
- 1 親と教育者の違い
- 偏愛する権利
- 将来への予測
- 2 意識的な教育
- 最も人間的な情緒とは
- 内的賞与への期待
- 3 情緒形成のつまずき
- 問題が生じる原因
- 目標のない許容
- 4 家庭状況と教育者
- 親の経済力と教育程度
- 片親や関係障害のある家庭
- 情緒的発達の遅れ
- 5 教育者の課題とは
- ふるまいの原因を探る
- 子どもの反応を探る
- 改善のための計画
- 6 家庭の雰囲気への対応
- 温かくて許容的な家庭
- 温かくて制限的な家庭
- 冷たくて制限的な家庭
- 冷たくて許容的な家庭
- 7 家庭との協力
- 望ましい教育者の性質
- “子ども”を考える2つの詩
- 注1
- 注2
はじめに
トルダ・イロナさんは『ハンガリー教育原理の基礎』の著者です。一度目に来日されたとき、この本の中から第4章と第5章について講演していただきましたが、昨年2度目の来日の際には、「情緒教育」について講演して下さいました。この小冊子は,東京での講演をもとに、トルダさんご自身が、より詳しい実例などを追加されてまとめられたものを、あらためて訳出したものです。
子ども、ないしは人間の情緒のあり方や発達について、理論的背景を明らかにしながら、年齢にそってこれほど具体的に説明している論文は、まだ世界でもごく僅かの文献しかないと思われます。
ことに今、家庭教育の大切さがあちこちで強調されているとき、この本を少しでも多くの保母さん、学校の先生方、そして父兄に読んでいただきたいと思います。家庭と、保育園、幼稚園、学校の連けいが必要だといっても、私たち現場の者には、今までひとつも、具体的で、真に教育的なすじ道や方法が示されたことはありませんでした。
また、コダーイ・システムを実践している音楽家や音楽の先生方にも、ぜひ一読をおすすめしたいと思います。コダーイの考えた、うたを中心とした音楽教育の背景にある、人格形成の中での情緒、感情の役割がきわめて系統的に説明されているからです。
この小冊子の内容を理解するためには、『ハンガリー教育原理の基礎』の第3章――人格の発達の課題――のU「人格発達の情緒的関連」を合わせてお読み下さるようお願いいたします。
1989年5月 /羽仁 協子
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- 明治図書